NEW2021年03月03日

全固体電池って、なに?

脱炭素社会の実現に向けて、自動車業界ではガソリン車から電気で走る電動車への移行の機運が高まっています。こうした中、日本が開発に力を入れているのが電動車の性能などを左右する次世代の蓄電池、「全固体電池」です。いったいどんなもの?教えて!!

全固体電池ってなんですか。

現在、一般的に使われている電池に比べ、高性能な次世代の電池です。

私たちの身の回りには、スマートフォンやパソコン、ゲーム機からEV=電気自動車まで、電池で動くものがたくさんあります。これらに使われる電池の現在の主流は「リチウムイオン電池」です。

この「リチウムイオン電池」に代わる次世代の電池として期待されているのが「全固体電池」です。電池の中に含まれる、電気をためたり放出したりするための「電解質」が「リチウムイオン電池」は液体なのに対して、「全固体電池」は固体であることからそのように呼ばれています。

全固体電池の能力はどのくらいあるのでしょうか?

全固体電池は、現在のリチウムイオン電池に比べ、エネルギーの密度を3倍に増やせる見込みです。

その一方で、充電にかかる時間は3分の1に短縮でき、コストも抑えられると期待されています。

例えばEV=電気自動車では、10分程度の急速充電で数百キロ走行できる可能性があります。

脱炭素の加速につながるのでしょうか。

国内で排出される二酸化炭素のうち2割近くは自動車を中心とする運輸関係が占めています。脱炭素社会の実現にはガソリン車から電気で走る電動車への移行が欠かせず、日本政府も2035年までに乗用車の新車販売のすべてをハイブリッド車や電気自動車などのいわゆる「電動車」にするとしています。

ただ、今の電動車に使われている「リチウムイオン電池」は走行距離に限界があり、価格も高くなる要因となっています。こうした弱点を克服した全固体電池が実用化できれば、電動車の普及に弾みがつくと見込まれています。

また、低価格化が進むことで家庭用の太陽光発電の蓄電池などとしても普及が進み、再生可能エネルギーの活用も進むと期待されています。

実用化・量産化のめどはたっているのでしょうか。

日本では自動車メーカー各社が開発に取り組んでいて、例えば、トヨタ自動車はパナソニックと組んで2020年代前半の実用化を目指しています。

また、国の委託を受けて進められているプロジェクトでは、大手自動車メーカーのほか電池や素材などでトップクラスの技術を持つ23の企業と15の大学や研究機関が協力して全固体電池の基礎研究を進めています。

世界が開発競争にしのぎを削るなか、トップレベルの技術を結集することで、できるだけ早く実用化し、この分野で主導権を握ろうというねらいがあります。

今後、世界的に蓄電池の需要が高まる中で、日本の新たな成長産業になる可能性もあり、「全固体電池」のこれからに注目です。