NEW2020年12月07日

種苗法の改正で何が変わる?

ブランドの果物などが海外に無断で持ち出される事例が後を絶たない中、これを規制する改正種苗法が成立しました。なぜ今、改正が必要なのか、そして何が変わるのでしょうか。

そもそも種苗法ってどういう法律なんですか?

種苗法は、新しく開発され、国に登録された品種を保護するための法律です。農業版の特許法のような存在です。

何のために改正されたのですか?

最大の狙いは、開発された品種が海外に流出するのを防ぐことです。

例えばぶどうの「シャインマスカット」は、国の研究機関が33年の歳月をかけて開発した日本が誇るブランドです。

海外で栽培されたシャインマスカット

しかし、無断で栽培された中国産や韓国産のシャインマスカットがタイや香港に輸出され、日本のシャインマスカットの脅威になっています。

こうした品種の流出はいちごやさくらんぼなど他の果物でも起こっています。

なぜそんな事態になっているのですか。

「シャインマスカット」の苗木はホームセンターなどで手に入りますが、今の種苗法ではこうした正規のルートで買った苗木を海外に持ち出すことに対する規制はないんです。

流出した種や苗を使って海外で産地ができあがり、安い値段で出回れば日本から輸出したものが売れなくなってしまいます。

高い品質を武器に輸出を拡大しようとしている日本の政府にとっても大きな問題です。

今回の法改正でそれが防げるのですか?

今回の改正では開発者が種や苗を輸出する国や栽培する地域を指定できるようにして、それ以外の国に故意に持ち出すなどした場合は、罰則の対象になります。

また、農家から流出するのを防ぐために収穫物から種や苗を採って次の作付けに使う「自家増殖」を行う場合も開発者の許諾が必要になります。

根本的な問題の解決には海外での品種登録を行うことも重要ですが、農林水産省は、国内での流通も厳格に管理することで流出のリスクを減らせるとしています。

種苗法の改正には賛否両論があるようですね。

新品種の開発を手がける農家からは、今回の改正で開発者の権利が守られ、種や苗が流出するリスクが減るとともに、産地やブランドの向上にもつながるとして期待の声が聞かれました。

また、日弁連=日本弁護士連合会も「長い年月をかけ、また多額の開発投資を行ってようやく開発した品種は、我が国の知的財産とも言えるものであり、これが侵奪されることに対しては、適正に法的対処ができるように法整備をしなればならない」として早期に法改正を求める意見書をことし10月に公表しています。

その一方で、「自家増殖」に許諾が必要になることに不安の声があがっています。

許諾の際に開発者に支払う許諾料が高額になったり、手続きが複雑になったりして負担が増えることへの懸念が主な理由です。

これについて農林水産省は、▽許諾が必要になるのは、国に登録された新品種だけで自家増殖が行われている多くの品種に影響はないことや、▽国の研究機関や都道府県が開発した品種が多く、許諾料が高額になることは考えにくいと説明しています。

また、手続きについても国がひな形を示したり、団体での登録を可能にしたりして簡素化したいとしています。

議論した衆参両院の農林水産委員会も付帯決議に農家の負担が増えないように考慮することや制度の見直しの内容について農家に丁寧に説明することなどを盛り込んでいます。

地球温暖化が進む中、暑さや病気に強いといった品種開発の重要性は高まっています。

一方で品種を守るためには、それを育てていく農家の存在も欠かせません。

新しい種苗法は一部の規定を除いて来年4月に施行されますが、農家にとっても品種を開発する人たちにとっても利益となるような制度になるといいですね。