NEW2020年01月24日

ラグビー選手はサラリーマン?

去年のワールドカップで空前の人気になったラグビー。でも、中心となって活躍した選手の1人は、ふだんウイスキーの営業をしているサラリーマンだとか。日本代表の選手って、「プロ」じゃないの?学生時代、ラグビーに熱中していたというニュース制作部の中山俊之デスク、教えてください!

ラグビーワールドカップで初めてベスト8に進んだ日本代表。年が明けた今もその熱気が残っているようですが、日本代表の中に「プロ」でない選手もいると聞いて驚いたのですが?

中山デスク

そうなんです。選手の国籍だけでなく、所属も「多様性」があるんです。

そもそも、日本のラグビー界には今のところ、サッカーの「Jリーグ」のようなプロリーグはありません。日本代表の選手の母体となっているのは、「トップリーグ」などの社会人チーム。今月、開幕したトップリーグは、社会人ラグビーの最高峰のリーグで16チームが参加しています。また、2部にあたる「トップチャレンジリーグ」のほか、さらにその下部組織として、関東・関西・九州のそれぞれ地域リーグがあります。

現状、ラグビー日本代表の選手は、外国人も含めて全員が社会人リーグのいずれかのチームに所属しているんです。社会人チームはいずれも企業の福利厚生の一環として運営されていて、いわば企業や事業所の「ラグビー部」のような存在です。

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例えば、トップリーグの「東芝ブレイブルーパス」の正式な名前は「東芝ラグビー部」です。ラグビー部に所属する選手の多くは、その会社の社員。

その一方で多くのチームに、ラグビーをするために契約した「プロ」の選手も存在します。日本ラグビーフットボール協会では、正確な人数は把握していないものの、プロ契約の選手は、全体の2割程度ではないかとしています。また、トップリーグのチームに所属する外国籍の選手のほとんどがプロ契約だということです。

同じチームでも、「正社員」と「プロ契約」が混在するんですね。ワールドカップで活躍した選手の中にも普段、サラリーマンとして仕事をしている人がいるということですね。

中山デスク

力強いタックルが印象的だった中村亮土選手は、トップリーグ「サントリーサンゴリアス」の所属で、サントリーの営業マンです。酒の販売店を担当し、飲食店にメニューの提案などもしているそうです。

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中村亮土選手

一方で、同じサントリーでも、トライを量産した松島幸太朗選手や、流大選手は「プロ契約」。特に流選手は、大学卒業後にサントリーの社員となりチームに入りましたが、ワールドカップイヤーである去年4月からプロ契約に切り替えたそうです。プロ契約を結ぶ際には、「プロとしてきちんと食べていけるか」が大事になります。

サントリーのチーム広報の担当者は、「営業マンの中村選手も、去年はほとんど日本代表の活動に帯同したので、フルで仕事をしていたかというとそうでもありません。ただ、周囲が中村選手を支え、中村選手も支えられていることを実感することで、会社の成長につながると考えています。また、所属選手の活躍がラグビー部以外の一般社員のモチベーションの向上にもつながっています」と話していました。

世界の舞台で活躍した選手にサラリーマンがいるとは不思議な感じもしますが、これからもこうした状態が続きそうなんですか?

中山デスク

ワールドカップの盛り上がりを受けて、ラグビー界では「プロリーグ化」を目指す動きもあるようです。ただ、長らく「企業スポーツ」の歴史がある日本のラグビーをどう発展させるかは、まだまだ議論があると思います。

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とはいえ、「ONE TEAM」をスローガンにした多様性を受け入れるチーム運営や、真剣勝負が終われば敵味方なく互いをたたえる「ノーサイドの精神」などは、閉塞感が漂う今の日本社会を切り開く1つのヒントを示してくれたようにも思います。

私自身、ラグビーを愛する1人として、今回の盛り上がりを一過性のものにしないよう、今後の取り組みに注目していきたいと思います。