NEW2018年05月16日

なぜ今?ウイスキーの原酒不足

いま世界的に人気が高まっている日本のウイスキー。その国産ウイスキーで、サントリーが「白州12年」と「響17年」の2つの商品の販売を休止することを決めました。ストレートやロックなどに加えて、炭酸水で割ったハイボールなどいろいろな楽しみ方が広がり需要も伸びてきた中で、ウイスキーファンには残念なニュース。しかも、その理由が「原酒不足」ともなれば、ファンの心配も深まります。国産ウイスキーづくりの現場で、何が起きているのでしょうか?

原酒が足りないって、どういうこと?需要があるんだから、生産を増やせばいいのに。

ウイスキーの原酒って、そんなにすぐに生産を増やせないのよ。それには、長い時間をかけてつくるウイスキーならではの理由があるの。

ウイスキーって、原料の大麦と水を発酵・蒸留させて原酒をつくって、たるの中で熟成させる。たるの種類や熟成の期間によって香りや味わいも変化するので、商品にする際には、熟成期間の違ういくつもの原酒を混ぜているの。

たとえば、「白州12年」の場合だと、使っている原酒の熟成期間が少なくとも12年という意味で、「響17年」だと原酒の熟成期間が少なくとも17年ということ。つまり、現在売り出している商品でも、その原酒は12年とか17年より前に仕込み始めたものなので、今の時点で生産量を増やしたくても、できない仕組みになっているの。

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ウイスキーブームって何年も前から続いていたはず。メーカーは手を打ってなかったの?

このところのブームは、10年前にサントリーがハイボールの販売に力を入れたことをきっかけに、国産の銘柄が世界的な賞を受賞したことも追い風になって広がってきたんだけど、実はそれ以前の20年余りは需要の低迷が続き、各メーカーとも原酒の生産量を減らしていたの。だから、そもそも10年以上前の原酒は少ないの。需要が大きく伸びた今だからこそ、その原酒不足が表面化したとも言えるわね。

もちろん、ウイスキー人気の高まりを受けて、原酒をつくるための蒸留釜や、たるを寝かせておくための貯蔵庫などを増設して生産能力を高める対策を講じてはきたんだけど、実際にそうした増産の効果が出るには、さらに年単位の時間が必要になるわけ。この10年で、国内のウイスキー出荷量は2倍以上に増えていて、ブームの仕掛け人ともいえるメーカー自身も、ここまで人気が高まるとは考えていなかったのかもね。

長期間熟成した原酒が特に足りないとすると、販売の再開はできるのかな?それに、ほかの銘柄の原酒も足りなくなってきたりするのでは?

販売を再開するには、需要に見合った原酒の量を確保することが欠かせないわけだけど、サントリーによるとまだ見通しが立っていないそうよ。熟成期間が10年以上の原酒の生産量が少ないのは他のメーカーも同じだから、すでに一部の銘柄では販売量を抑えるなどの対応に乗り出してる。熟成期間の短い、いわゆる若い原酒をつかった商品もあるから、各社とも何とかやりくりしながら商品の供給を続けているという状況のようね。

昔のようにバーだけじゃなくて、居酒屋でもウイスキーやハイボールを楽しんでいる人をよく見かけるよね。それに、外国人観光客でも国産ウイスキーをたくさん買っている姿も目立つようになってきただけに、そうした需要に応えられなくなるのは残念だよね。

国産ウイスキーは海外での評価も高まっていて、輸出量も5年間で倍増している。ただ、原酒不足の影響で、いまでも一部の銘柄では海外からの注文に応じられない状況。各社とも生産増強に動いているとはいえ、原酒不足が解消されるには、まだまだ長い時間がかかりそう。そういうことに思いをはせると、今度ウイスキーのグラスを傾ける時には、また違った味わいになるかも。