3年前、横浜市の交差点で小学生の女の子が車にはねられて死亡した事故がありました。
●バス停に止まった路線バスが横断歩道をふさいだ
●児童がそれを避けて交差点を渡り事故に
●バス停の設置位置が問題に
この事故をきっかけに、横断歩道や交差点の近くにあり、交通事故の危険性があるバス停を国土交通省がまとめたところ、”危険なバス停”が全国で1万か所以上もあることが分かったのです。
2021年4月2日事故
3年前、横浜市の交差点で小学生の女の子が車にはねられて死亡した事故がありました。
●バス停に止まった路線バスが横断歩道をふさいだ
●児童がそれを避けて交差点を渡り事故に
●バス停の設置位置が問題に
この事故をきっかけに、横断歩道や交差点の近くにあり、交通事故の危険性があるバス停を国土交通省がまとめたところ、”危険なバス停”が全国で1万か所以上もあることが分かったのです。
国土交通省が、おととしから各地のバス会社などを通じて全国のバス停およそ40万か所について結果をまとめ、先月(3月)、危険度に応じて3段階に分類し公表しました。
最も危険性が高いAランクのバス停 全国に1615か所
停車したときに車体が横断歩道にかかるか、過去3年以内に人身事故が発生した
Bランクのバス停 5660か所
停車したときに車体が交差点にかかるか、横断歩道から5メートル以内
Cランクのバス停 2920か所
交差点から5メートル以内など
具体的にどのような危険があるのか、三重県のケースを見てみます。
「はっきり言って危ない。こんなところにあるのがおかしいんやわ」
「もうちょっと手前で止まってほしい」
近くの住民たちが、口々に危険だと語るバス停が、三重県津市にあります。
「一身田東バス停」です。
バスが客を乗せたり降ろしたりするために停車すると、車体が横断歩道にかかってしまい、国の調査でも「Aランクのバス停」と判断されました。
実際に、バス停で取材をしている間にも、バスが止まったところで、後ろからやってきたバイクがバスの横をすっと通り過ぎ、もし横断歩道を渡ろうとしている人がいたら、「危ない!」と思うことが何度もありました。
そもそも、停車している車の前に出る際に一時停止しないのは、道路交通法違反にあたります。
また、停車したとき車体の後ろ部分が横断歩道にかかるバス停では、対向車から横断歩道を渡る人が死角になって見えない形になり、重大な事故につながる可能性もあります。
こうした”危険なバス停”について、バス事業を管轄する三重運輸支局などが調査した結果、三重県内に合わせて125か所あることがわかりました。
このうち53か所あるAランクのバス停の中には、横断歩道が完全にふさがれてしまう場所もあります。
津市の「五百野バス停」ではバスが停車すると、横断歩道が見えないためか、後続の車は停車せずに次々と横から追い抜いていきます。
こうした場所で車やバイクが止まらない理由について、専門家はドライバーにも歩行者にも「車が優先」という意識が根付いてしまっているからだと指摘します。
山梨大学 伊藤安海教授
「無謀な運転をしているというイメージよりは、後ろから来る車に迷惑をかけてはいけないという意識が根底にあるのだと思います。法律では『歩行者優先』となっていますが、実態は『車優先』なんです」
「車のためにどう運転するかを第一に考えていて、歩行者のために、念のため減速しておこうなどと意識できていないんですね」
では、なぜそもそもこのようなバス停が存在しているのでしょうか。
取材を進めると、横断歩道よりも先にバス停ができていたケースがあることがわかってきました。
横断歩道が完全に塞がれてしまうという「五百野バス停」。
ここにバス停が初めて設置されたのは今から60年以上前。
そして横断歩道が設置されたのはその30年後だったといいます。
かつてマイカーが少なかった時代に各地にバス網が整備され、その後、マイカーを持つ人が増えた中で、交通事故を防ぐために横断歩道も一気に増えたのではないか…。
交通政策に詳しい専門家は、”危険なバス停”が生まれた背景について、そのように分析しています。
関西大学 安部誠治教授
「バスが横断歩道の一部を遮ることで起こる事故よりも、まず横断歩道を作ることが優先されたということです」
「ただ、その時点ではバス停の近くに作るということのリスクの評価が十分されてなかったのではないでしょうか」
とはいえ、仮に横断歩道がなかったり、離れた場所にあったりすれば、道路を横切って渡る歩行者が増えることが予想されます。「横断歩道を後から設置したことが悪い」とは一概に言えず、難しい問題です。
では、どのような対策をとったらよいのでしょうか。
真っ先に思いつくのは、バス停を動かすことです。
三重県内で、ことし3月31日までに移動させる対応が取られたバス停は、合わせて44か所。
ただ、バス会社によると、簡単にはいかない場所もあるといいます。
たとえば冒頭紹介した「一身田東バス停」は、すぐ近くに病院があり、日頃から多くの通院する人が利用しています。
バス停を動かすことは、そうした人たちの利便性を損なうことにつながり、簡単には動かせません。
また、地権者との調整の難しさもあります。移設先が家や事業所の前になる場合、人だかりやゴミの問題を懸念する人もいて、地域住民との合意が進まないこともあるというのです。
そこで県内のバス会社では、応急的な措置として、すぐには移設できないバス停すべてに歩行者に危険を知らせる看板を設置しました。
また、運輸支局などでは、バスの死角の危険性についてポスターを掲示して車内に張り出したり、アナウンスも始めたりしたということです。
ただ、本来であれば歩行者側だけが気をつけるのではなく、車を運転する側こそがもっと注意をはらって運転する必要があります。
自宅の近くやふだん利用している道路に、”危険なバス停”があるかもしれません。事故を防ぐためにも、改めてチェックしてみることをお薦めします。
下の表は、安全上問題のあるバス停留所の運輸支局別の件数です。
「危険なバス停」の場所や危険度は、それぞれの運輸局や運輸支局のホームページで公開されています。
交通政策に詳しい名古屋大学大学院 加藤博和教授は路線バスのバス停の新設や移設などにバス会社や自治体とともに取り組んだ経験から、次のように指摘します。
「バス停は利便性の観点から横断歩道や交差点の近くにあることが多いですが、バス停の移転は移転先の住民にしてみれば家の前に人が集まり騒音やゴミの問題などが出ることから調整が難しいことが多々あります。関係機関だけでなく住民も交えてしっかりと協議しなければならない問題です」
「一方で、バスは高齢者など地域住民にとっては生活に不可欠な存在なので、特に危険なバス停については、スピード感をもって対応することが必要です」
「またバス停の移設をしたから安全ということではありません。運転手は、歩行者が飛び出す危険性に注意するとともに、歩行者もバスの前後での横断が危険ということを認識することがなにより大切です」
津放送局記者 周防則志 2020年入局 “地域の課題を解決する”報道を目指している。
社会部記者 渡辺謙 2010年入局 山口局で岩国基地などの取材を経て現在国交省を担当
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