新型コロナ 世界からの報告
WHO コロナ「緊急事態」解除できるか検討
【各国の状況詳しく】

2023年1月27日

WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて出している「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言について、1月27日、専門家による委員会を開き、解除できるかどうか検討することにしています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年1月30日にWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから、まもなく3年となります。

WHOは、宣言を解除できるかどうか、定期的に検討することにしていて、1月27日、およそ3か月ぶりに各国の専門家や保健当局の担当者による委員会を開き、宣言の解除について、議論することになっています。

前回、2022年10月に開かれた委員会では変異ウイルスへの懸念が残っていたことなどから宣言の継続を決めています。

委員会の検討結果を受けてWHOが宣言を解除した場合、各国の感染対策の緩和などを後押しすることになるとみられていることから、委員会の議論の行方が注目されます。

宣言をめぐってはWHOのテドロス事務局長が、1月24日、本部のジュネーブで開いた定例会見で、「委員会の助言を先取りするつもりはないが、多くの国での状況に非常に懸念を抱いている」と述べ、世界全体ではなお死者数の増加が見られることやワクチンの追加接種が遅れていることなど、課題を指摘しています。

WHO「緊急事態」宣言とは

新型コロナウイルスについて、WHO=世界保健機関は「国際保健規則」に基づいて2020年1月「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

「緊急事態」の宣言には各国で対策の強化を促す意義があり、WHOはその後、各国に対し、感染拡大を防ぐための対策をとることやワクチンや治療法の開発を促進し、ワクチン接種を進めること、それに、変異ウイルスの監視体制を強めることなどを求め、国際的な枠組みで途上国に対するワクチンや治療薬の供給などを進めてきました。

WHOは新型コロナウイルスへの対応や「緊急事態」にあたるかどうかについて3か月に1回、専門家の委員会を開いて協議しており、協議の結果をもとにテドロス事務局長が「緊急事態」を継続するか、解除するか判断します。

新型コロナのデータをまとめているジョンズ・ホプキンス大学によりますと、1月26日時点で世界の累計感染者数はおよそ6億6900万人、およそ680万人が亡くなっている一方でワクチンの接種回数は132億回以上に上ります。

新型コロナは根絶できず、今後も繰り返し感染拡大が起きるとみられますが治療が進歩し重症化を防ぐ飲み薬も出てきていることから、感染した場合に重症化したり、亡くなったりする人の割合は下がっています。

日本国内での対策について専門家は、感染力の強い変異ウイルスが拡大しないか監視体制を維持し、医療体制を強化するとともに、場面に応じた正しい不織布マスクの着用や換気を行うこと、飲食はできるだけ少人数で飲食時以外はマスクを着用すること、症状があるときは外出を控えることといった基本的な感染対策を続ける必要があると指摘しています。

変異ウイルスとワクチン

新型コロナウイルスは3年間、変異を繰り返していて、対応するワクチンも導入されましたが、現在も感染力が強い新たな変異ウイルスの出現や拡大が懸念されています。

日本国内で初めて感染が確認されたのは中国の武漢で見つかったのと同じタイプのウイルスでしたが、2020年の春以降は変異が加わってヨーロッパで広がったウイルスが国内でも拡大しました。

その後、感染力が強まった変異ウイルスが出現して日本国内にも流入し、2021年春以降はイギリスで見つかった「アルファ株」、その後、2021年夏以降はインドで見つかった「デルタ株」が広がり、重症化する患者が相次いで医療体制がひっ迫しました。

新型コロナウイルスのワクチンは日本国内でも2021年2月に医療従事者から接種が始まり、高齢者や基礎疾患のある人、そして、基礎疾患のない12歳以上に拡大され、8月下旬には人口の4割程度、年末には7割以上が2回の接種を完了しました。

2022年の初めからは、南アフリカで最初に報告された感染力の強いオミクロン株が国内でも主流の状態が続いています。

オミクロン株は「BA.1」というタイプが広がったあと、2022年春以降は「BA.2」、そして夏以降は「BA.5」が主流になりました。

オミクロン株は免疫をすりぬけやすく従来型のワクチンでは効果が下がるとされ、「BA.1」や「BA.5」に対応する成分を含んだワクチンも開発され、接種が進められています。

しかし、現在の「第8波」ではさらに変異が加わったオミクロン株の「BQ.1」の割合が多くなってきているほか、より感染力が高いおそれがあるオミクロン株の「XBB.1.5」がアメリカで広がっていて、日本国内でも検出されています。

アメリカのFDA=食品医薬品局は新型コロナのワクチンについて今後は季節性インフルエンザのワクチンのように、新たな変異に対応したワクチンを毎年接種するという考え方を示しています。

日本国内の感染拡大と対応

WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した2021年1月30日の時点で、日本国内で感染が確認された人の数は厚生労働省のまとめでは12人でした。

それ以降、国内ではこれまでに合わせて8回、感染拡大の波を経験し、1月26日までに感染した人の累計は3200万人余り、亡くなった人は6万7000人近くに上っています。

日本国内で最初に感染が確認されたのは2020年1月15日で、4月7日には、政府は東京など7都府県に法律に基づく初めての「緊急事態宣言」を出して、人と人との接触機会を「最低7割、極力8割」減らすよう求めるなど、厳しい行動制限が行われました。

感染拡大の第1波では、2020年5月末までに感染者数はおよそ1万7000人、亡くなった人は892人で、感染者のうち亡くなった人の割合、致死率は5.34%とこれまでの感染拡大の波の中で最も高くなっています。

感染拡大の波はこれまでにあわせて8回起きましたが、致死率は徐々に下がる傾向で、感染対策と社会経済活動を両立させるため、緊急事態宣言は変異ウイルスのデルタ株が拡大した2021年夏の「第5波」のあと、まん延防止等重点措置はオミクロン株が拡大した2022年初めからの「第6波」のあとは出されなくなりました。

一方で、感染力が強いオミクロン株の拡大以降、感染者数は桁違いに多くなり、医療体制がひっ迫してコロナだけでなく救急など一般の医療にも大きな影響が出たほか、亡くなる人の数は多くなってきています。

第8波では致死率は0.20%ですが、亡くなった人の数は2023年1月には一日で500人を超える日もあるなど過去最多となり、2022年12月以降、1月26日までの2か月足らずでおよそ1万7000人で、これまでの3年余りで亡くなった人のおよそ4人に1人となっています。

当初は新型コロナウイルスへの感染で重い肺炎となって亡くなる人が多かったのが、現在ではもともと重い持病のある高齢者などが感染をきっかけに状態が悪化して亡くなるケースが多くなっている可能性があると専門家は指摘しています。

中国の状況「ゼロコロナ」政策は終了

中国では、徹底したPCR検査と厳しい行動制限などで新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ」政策を続けてきました。

「ゼロコロナ」政策のもと、感染者が確認されるとその地区や建物などが封鎖され、最大の経済都市・上海では2022年3月末から2か月余りにわたって厳しい外出制限が続きました。

また、感染が拡大していない場合でも北京など多くの都市で商業施設や公共交通機関などを利用する際にPCR検査の陰性証明の提示が義務づけられ、人々は毎日のようにPCR検査を受けなければなりませんでした。

このほか、海外からの入国者に加え、濃厚接触者にも施設などでの隔離が義務づけられていました。

こうした中、経済が低迷するとともに、2022年11月下旬には各地で「ゼロコロナ」政策に反発する抗議活動が相次いだこともあり、中国政府は感染対策の緩和に踏み切り、1月8日からは感染対策として続けてきた入国後の隔離や患者の強制的な隔離などの措置を撤廃しました。

これによって「ゼロコロナ」政策は終了し、今後はワクチン接種の推進や医療体制の充実などを通じてこれまでの「予防」から「治療」に重点を置くとしています。

中国政府が2022年12月、感染対策を大幅に緩和したあと、各地で感染が急拡大しましたが、1月8日のデータを最後にそれまで毎日行われていた感染者数の発表は取りやめていて、感染の詳しい実態はわかっていません。

中国政府は、12月8日から1月19日までの1か月余りの間にあわせて7万2596人が死亡したと発表していますが、自宅などで死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘が出ています。

また、一日当たりの感染者数は12月22日に694万人とピークを迎え、その後、1月23日には1万5000人まで減少したと1月25日に発表しましたが、感染者数の合計や省ごとの内訳など詳しいデータは明らかにしていません。

中国側の発表について、WHO=世界保健機関はさらなる情報の開示を求めています。

一方、水際対策では、入国時の隔離が撤廃されたものの中国に渡航する前の48時間以内にPCR検査を受けて陰性を証明する必要があります。

ただ、中国当局は1月10日、中国を訪れる日本人と韓国人に対し、ビザの発給を一時的に停止したと発表し、日本と韓国が中国本土からの入国者を対象に水際対策などを強化したことへの対抗措置だとしています。

中国では、1月21日から27日まで旧正月の「春節」にあわせた大型連休で、農村部などへの感染拡大や新たな変異ウイルスの出現への懸念が一層強まっています。

アメリカの状況「XBB.1.5」急速に拡大

アメリカCDC=疾病対策センターによりますと、1月18日現在、これまでに報告された感染者数は累計1億180万人余り、死者数は累計109万人余りで、いずれも世界で最も多くなっています。

感染者数のピークは2022年1月ごろで一日平均80万人余り、死者数のピークは2021年1月ごろで一日平均3000人余りでした。

ただ、感染者数については、最近は簡単に入手できる検査キットで自分で調べたケースは含まれていないため、正確な数はわかっていません。

アメリカではオミクロン株の一つ「XBB.1.5」が12月から急速な拡大を続けていて、1月21日までの1週間に新たに感染した人のうち、49.1%が感染していると推計されています。

感染対策として、ワクチンの接種が積極的に呼びかけられていて、オミクロン株の「BA.5」に対応する2価ワクチンが生後6か月以上を対象に無料で接種できます。

1月18日の時点で、少なくとも1回はワクチンを接種した人は81%、2価ワクチンの追加接種を終えた人の割合は15.3%となっています。

マスクの着用に関しては、一時、屋内での着用を義務づけていた州もありましたが、2022年3月、屋内での着用義務はすべての州でなくなりました。

水際対策としては、アメリカ政府は以前は、航空便で入国する外国人に対し、新型コロナの検査の陰性証明を求めていましたが、2022年6月に緩和し、現在は、ワクチンの接種証明を求めています。

一方で、中国での感染の急拡大を受け、中国からの航空便の乗客に対しては、1月から出発の際に陰性証明の提示を義務づけています。

イギリスの状況

イギリスでこれまでに新型コロナウイルスに感染して亡くなった人は、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめでは21万7000人を超え、ロシアを除くとヨーロッパで最も多くなっています。

イギリス政府によりますとイギリスの人口の大半を占めるイングランドでは1月9日前後の1週間平均で、一日当たりの死者数は131人とこれまでで最も多かった時期と比べておよそ9分の1となっています。

また、ワクチンを3回以上接種した人は12歳以上の人口の70.2%に上っています。

政府は、感染の波はこれまでに2回、あったとしています。

このうち2つめの波となった2020年の冬には、ロンドンを含むイングランドの全域で市民に外出を控えるよう求めるとともに、スーパーなどを除く小売店や飲食店は、原則として営業を禁止するなど厳しい規制を導入しました。

その後、公共交通機関でのマスクの着用義務や人との距離の確保を含めた規制を段階的に緩和し、2022年2月には、当時のジョンソン首相が感染者に義務づけられていた最短で5日間の隔離など、すべての法的な規制の撤廃を盛り込んだ、ウイルスとの共生に向けた出口戦略を発表しました。

この中では新型コロナへの対応について、インフルエンザのようにみずからの責任で判断することを求めています。

出入国の規制も2022年3月に撤廃され、例えば、日本から入国する際には特に条件や制限はありませんが、中国での感染の急拡大を受け、1月5日以降、中国からの直行便で到着した人は出発前の2日以内に受けた検査で陰性証明の提示を義務づけています。

韓国の状況

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、韓国の累計の感染者数は3000万人余りに上る一方、死亡した人は3万3000人余りで、感染者に占める死者の割合は各国と比べると比較的低くなっています。

韓国では、オミクロン株の流行で、2022年3月に最大の感染の波が起き、一日の新規感染者数が60万人を超える日もありました。

韓国政府は一時、飲食店の時短営業や、百貨店・大型スーパー来店時のワクチン接種証明書の提示などを義務づけましたが、その後は死者や重症者を減らす対策に重点を置くとして、規制を段階的に解除しました。

2022年9月には屋外でのマスク着用の義務が全面的に解除され、1月30日からは、公共交通機関や医療機関など一部を除き、室内のマスク着用も「義務」から「勧告」に緩和されます。

国外からの水際措置をめぐっては、
▽2022年6月には入国後の隔離が、
▽9月には陰性証明書の提出が、
▽10月には入国後のPCR検査がそれぞれ不要になりました。

日本からの観光客については、2020年3月からビザなしでの渡航を認めていませんでしたが、2022年8月からは、ビザがなくても入国できるようになり、これを受けて日本人の入国が急増しました。

一方、感染が急拡大した中国本土からの入国者については、2月末まで入国の前後にPCR検査を義務づけるほか、短期ビザの発給も制限するなどの水際措置をとり、中国は対抗措置として韓国人への短期ビザの発給を停止することを発表しました。