衆議院補欠選挙 立民 3選挙区すべて勝利 自民は議席失う

岸田総理大臣の今後の政権運営に影響を与えることも予想される衆議院東京15区、島根1区、長崎3区の3つの補欠選挙は、いずれも立憲民主党の候補者が勝利し、自民党は、候補者擁立を見送った選挙区を含め、議席を失いました。

今回の3つの補欠選挙は、去年秋に自民党の派閥の政治資金問題が明らかになって以降初めての国政選挙で、自民党は、東京15区と長崎3区で候補者の擁立を見送りました。

唯一、与野党対決となった島根1区では、選挙戦最終日のおとといも岸田総理大臣と立憲民主党の泉代表が応援に入るなど、総力戦が展開されました。

島根1区は、立憲民主党の元議員、亀井亜紀子氏(58)が2回目の当選を果たしました。

また、過去最多の9人による争いとなった東京15区は、立憲民主党の新人、酒井菜摘氏(37)が初めての当選を果たしました。

さらに、野党候補2人の争いとなった長崎3区では、立憲民主党の前議員、山田勝彦氏(44)が2回目の当選を果たしました。

一方、今回の投票率は島根1区が54.62%、東京15区が40.70%、長崎3区が35.45%で、いずれもこれまでで最も低くなりました。

《各党反応》

自民

茂木幹事長「非常に逆風が強かった」

茂木幹事長は記者団に対し「大変厳しい選挙結果だったと受け止めている。選挙戦を通じて逆風の中、島根1区では圧倒的な運動量だったが、非常に逆風が強かった。候補者の人柄や政策を浸透させられなかった。厳しい結果を重く受け止め、不断の改革努力を重ね、課題を解決することで、国民の信頼を回復できるよう努めていきたい」と述べました。

小渕選対委員長「この責任の重さを痛感している」

小渕選挙対策委員長は記者団に対し「私自身も現地に入り、一生懸命、応援活動したが、こういう結果になった。批判もたくさん頂いた。この責任の重さを痛感している。今回の結果は国民の信頼を頂けなかったと思うので、しっかりと今回の選挙を分析して信頼回復に努め、分析して、次の選挙に備えていきたい」と述べました。

立民

泉代表「早期の解散を求めていきたい」

立憲民主党の泉代表は記者会見し「自民党の裏金問題発覚以降、真相究明はおぼつかず、処分は中途半端、自民党の政治改革案もまったくの期待外れで、むしろマイナスに働いた。3つの選挙区で勝利したが、全国でも意思表示したい人はたくさんいる。自民党の政治改革法案が進まないようであれば、早期の解散を求めていきたい。後半国会でみんなが納得する政治改革案にするため最大限の努力をしていきたい」と述べました。また、内閣不信任決議案の提出について、「会期で1回きりと言われているので、適時適切に判断していきたい」と述べました。一方、今後の野党連携について「自民党の政治を変えるために、多くの人たちが協力や連携をすれば、大きな保守地盤を覆すことができると今回の選挙で証明された。今の自民党政治を許さないという思いで各党が考えれば、おのずとやることが見えてくる」と述べました。

維新

馬場代表「わが党の実力のままの結果」

馬場代表は、大阪市の党本部で「わが党の実力のままの結果で、まだまだ関西以外の地域の小選挙区で勝つことは非常に厳しい状況だ。維新の会は企業や団体、労働組合の後ろ盾がないので、自分で票を積み重ねる以外に勝つ方法はなく、近く行われるであろう衆議院選挙に向けて、一から活動を積み重ねていく」と述べました。その上で、自民党が候補者擁立を見送った選挙区を含め議席を失ったことについて「国民の怒りは頂点に達しており空気を見誤ると大変なことになる。国会の政治改革を議論する特別委員会で、国民が『そうなのか』と思えるような結論を出す必要がある。自民党のお茶を濁そうという考えは許さない。国会議員に毎月支給されている調査研究広報滞在費の問題の結論を出すよう、一致団結して臨む」と述べました。一方、次の衆議院選挙に向けたほかの野党との連携について「立憲民主党の方々が野党第一党をやっていても日本の国はよくならない。政治は選挙に勝って数を集めればいいものではなく他党との選挙協力は一切考えていない」と述べました。

公明

西田選対委員長“国民の政治に対する信頼回復に全力注ぐ”

西田選挙対策委員長は「今回の結果を真摯(しんし)に受け止め、国会で議論が始まった政治資金規正法の改正などの政治改革を必ずやり遂げ、国民の政治に対する信頼回復に全力を注いでいく」というコメントを出しました。

共産

小池書記局長“有権者は首相に明確な不信任突きつけた”

小池書記局長は記者団に「大変うれしい結果だ。自公政権に対する有権者の厳しい審判が下され、自民党の補完勢力である日本維新の会にも厳しい審判が下った。市民と野党の共闘に力を尽くしたすべての人に心から敬意を表したい。有権者は岸田総理大臣に明確な不信任を突きつけたので大型連休後の国会でも、裏金問題や、暮らしと経済の問題など、岸田政権の政治責任を徹底的に追及して、解散・総選挙に追い込んでいく」と述べました。

国民

浜野選対委員長“政権運営に国民から厳しい評価が下された結果”

国民民主党の浜野選挙対策委員長は「東京15区で乙武氏を推薦して戦ったが、政権に対する批判票の充分な受け皿になれなかったことは真摯に反省しなければならない。自民党が1議席も得られなかったことは、現在の岸田内閣の政権運営、とりわけ、裏金問題に対する改革が全く不十分だと国民から厳しい評価が下された結果であり、岸田内閣は、調査研究広報滞在費や政策活動費の使途の公開など、野党案も取り入れた、実効性のあるより厳しい法改正に速やかに取り組むべきだ」というコメントを出しました。

《記者解説》「政治資金問題への強い批判があらわれた」

Q.自民議席を失い立民は3勝。全体の結果をどうみるか。
A.自民党の派閥の政治資金の問題に対する強い批判があらわれた。自民党は、2つの選挙区で候補者を擁立できず、残る島根1区に総力戦で臨んだ。連日幹部が入ったほか、岸田総理も27日に急きょ現地に入って逆転を呼びかけたが、厳しい情勢は変わらなかった。選挙戦のさなか、ある与党議員が「政治不信のマグマがたまっている状況だ」と話していたのが印象的だった。一方の立憲民主党、泉さんが代表に就任してから国政選挙で初めての勝利。しかも3つ全てで勝ち、自民党への逆風をしっかりと支持につなげた。

Q.島根1区の勝因と敗因。どうみるか。
A.自民党への批判が直撃した。NHKの出口調査、投票する際に政治とカネについて考慮したか尋ねた。「考慮した」人は76%。このうち、およそ70%が亀井さんに投票したと回答した。亀井さんは今回、ほかの野党の支援も得た、いわば、野党統一候補。自民党への批判票の受け皿づくりに成功した形だ。一方の錦織さん。自民支持層はおよそ70%にとどまった。公明支持層も50%台後半どまり。いずれも前回より低くなり、亀井さんに一部を切り崩されたということになる。実際、自民支持層のおよそ30%が亀井さんに投票したと答えている。

Q.東京15区の勝因と敗因。どうみるか。
A.酒井さんは、立憲民主党支持層の80%あまり、共産党支持層の70%台半ばから支持を得た。さらに、無党派層は最も多い30%あまりを固めた。候補者の擁立を見送った自民党支持層の票は特定の候補に集中せず、維新の会の金澤さん、無所属の須藤さん、諸派の飯山さん、無所属の乙武さんらに分散。酒井さんが抜け出す結果となった。

Q.与野党の受け止めや反応は。
A.自民党内はある程度覚悟はできていたかもしれないが島根1区の結果は衝撃。島根は保守王国。小選挙区制の導入以降、島根県は全国で唯一、自民党が選挙区の議席を独占してきた。それだけに、自民党内では、次の衆議院選挙がいつあってもいい時期に入っているので厳しく受け止めざるを得ないと思う。立憲民主党の泉代表は「政治改革を前に進めるために極めて大事な戦いだ」と強調してきただけに、これを追い風に国会でさらに攻勢を強める構えだ。

Q.政局への影響は。
A.政権にとってダメージなのは間違いないところか。取材をしていると、選挙基盤が不安定な中堅・若手を中心に「岸田総理で次の衆院選は戦えないのではないか」という声も。一方で、ある政権幹部は「岸田総理の責任論にはならず、政治資金規正法の改正を実現しなければならない」と話していて、当面、政策課題を優先するものとみられる。岸田総理の総裁としての任期は9月に満了し、衆議院議員の残りの任期が1年半。岸田総理は党内の状況を慎重に見極めながら、総裁選挙と衆議院の解散への対応を検討していくことになる。