【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(4月22日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる22日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

テロ事件1か月 ロシア政府 ウクライナ関与との主張強める

ロシアの首都モスクワ郊外で140人以上の市民が死亡したテロ事件から、きょう22日で1か月となります。

ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで3月22日に起きたテロ事件では、140人以上の市民が死亡し、ロシアで過去20年で起きたテロ事件で最悪の被害となりました。

事件は過激派組織IS=イスラミックステートの戦闘員による犯行とみられ、これまでに実行犯4人が起訴されています。

ただ、ロシア側は、事件発生直後から繰り返しているウクライナが関与したとの主張をいっそう強めていて、プーチン大統領の側近、パトルシェフ安全保障会議書記は16日、「捜査の過程で、実行犯とウクライナの民族主義者との直接的なつながりが確認された」と主張しました。

また、ロシア最高検察庁のクラスノフ検事総長も18日、テロ行為に関与したすべての人物の特定を急いでいるとした上で、「ウクライナが関与したことは明らかだ」と述べています。

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は関与を全面的に否定しているほか、アメリカやフランスの政府もISによる犯行だったと指摘しています。

ロシアがウクライナ関与説を主張し続ける背景には、事前にアメリカからテロ計画に関する情報が伝えられていたにもかかわらず、十分な対応をとれなかったことから国民の目をそらせたり、ウクライナへの攻撃を強める口実にしたりするねらいがあるとみられています。

「ISIS-K」戦闘員 テロについて語る映像 ウクライナとの連携否定

3月にモスクワ郊外で発生したテロへの関与が指摘される過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織の戦闘員が、ロシアを敵視する一方で、ウクライナとの連携は否定する映像を、NHKは入手しました。

NHKが入手したのは、アフガニスタン東部を拠点とする過激派組織ISの地域組織「ISIS-K」の戦闘員が、モスクワ郊外で発生したテロについて語る映像です。

戦闘員は、自分自身は関わっておらず、実行犯として拘束された人物も知らないとしながらも、今回のテロを「賢明で良い攻撃だ」と述べたうえで、「ロシアはイスラム教の国々をひどく抑圧しており、ISとは戦争状態にある」と話し、シリアでISを攻撃するなどしたロシアを、組織として敵視していることを明らかにしました。

また、プーチン政権がテロ事件の背景にウクライナがいると主張していることについて、「われわれの唯一の目的はイスラムの教えに基づいた統治を広げ、イスラム教を強くすることだ。そのために攻撃を行うのであって、どんな国や政府とも連携しない」としてウクライナとの連携はあり得ないと指摘しました。

この戦闘員によりますと、「ISISーK」が拠点にしてきたアフガニスタンでは、現地で実権を握るイスラム主義勢力タリバンによる厳しい取り締まりで活動が抑え込まれているということですが、ISに加わろうという人たちは国内外でいまも後を絶たないとしています。

戦闘員は、「多くの人は信仰が理由だが自国の政府に不満を持っていたり、生活が苦しかったりしてISに加わる人もいる。攻撃したい場所はどこであろうと簡単に攻撃できる」と話し、今後も攻撃は続くと警告しました。

治安対策に神経とがらせるプーチン政権

この事件では、中央アジアの出身者が実行犯として起訴され、プーチン政権は、こうした国々からの不法移民の大規模な取り締まりを行うなど、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。

過激派組織ISの戦闘員による犯行とみられ、ロシアの治安当局は、実行犯として中央アジアのタジキスタン国籍の4人を起訴しました。

ロシアでは、テロへの脅威を感じる人が増えているという調査結果も出ていて、NHKがモスクワの中心部で市民に話を聞いたところ、「警察は常に目を光らせてほしい」と訴える女性など、中央アジアからの移民への対策を強化すべきだという声が相次ぎました。

内務省は4月10日、モスクワにある建設現場などあわせて1万か所以上を対象に、不法移民の取締りを行ったと発表しました。

3月の大統領選挙で圧勝したプーチン大統領にとって、5月7日から通算5期目となる新たな任期が始まりますが、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。

モスクワ市民からは 移民取締り強化を求める声

ロシアの首都モスクワ郊外で起きたテロ事件の実行犯が中央アジア出身のイスラム過激派とされることから、モスクワの市民からは、当局は移民への取締りを強化すべきだという声が聞かれました。

男性は、「国境警備隊は警備を続けているが、それでもイスラム過激派との戦いは起きているし、これからも続くのだろう」と述べ、テロの脅威が続いていると懸念を示しました。

そして、治安当局の対応は十分ではなかったとした上で、「少なくともウクライナへの特別軍事作戦が始まってからは、移民は退去させるべきだった」と述べ、移民対策を強化すべきだと訴えました。

また、テロが起きた当時、現場に友人がいたという男性は、「友人は幸いにも生き延びたが負傷した。移民政策のルールはより厳しくするべきだ」と話していたほか、女性は「警察は秩序を保ち何かが起きた時だけでなく常に目を光らせてほしい」と話すなど、移民への取締りを強化すべきだと訴えました。

一方、別の女性は、「なぜ普通の人々がこんな虐殺に巻き込まれたのか本当に理解できない」と涙ぐみながら話す一方、当局が移民対策を強化することについては、「ロシアは異なる多くの民族がいるので、取締りを厳しくすることは危険で恐ろしいことだと思う。われわれは多民族国家であり、いつも良好な関係を築いてきた」と述べ、国内の民族間であつれきが生じかねないと懸念を示していました。