石川 輪島 妻と娘亡くした男性 思い出の品“一生大事に”

能登半島地震で7階建てのビルが倒壊した石川県輪島市の現場では、妻と19歳の娘を亡くした男性が思い出の品を捜し続け、7日、妻が誕生日にサプライズでプレゼントしてくれた腕時計を見つけました。男性は「一生、大事にします」と話しました。

輪島市河井町の楠健二さん(55)は、先月1日、居酒屋を兼ねた3階建ての自宅で家族と過ごしていたところ、隣の7階建てのビルが倒壊して巻き込まれ、妻の由香利さん(48)と長女の珠蘭さん(19)を亡くしました。

地震のあと楠さんは県外に避難していましたが、先月27日から輪島市に戻り、毎日のように自宅を訪れて2人との思い出の品を捜し続けてきました。

楠さんがどうしても見つけたかったのが、去年の誕生日に由香利さんがサプライズでプレゼントしてくれた腕時計でした。

テレビ台の上に置いていて、これまでに時計の箱は見つかりましたが、肝心の腕時計は発見できていませんでした。

3日前からは広島県などのボランティアにも協力してもらって掘り起こしていたところ7日、楠さんは、重なった畳の下にきらりと光るものを見つけたということです。

手を伸ばして引っ張ると、捜していた腕時計でした。

時計の針は、地震の前と変わらず動いていました。

8日取材に応じた楠さんは腕時計を大切そうに触りながら「うれしかったです。妻の気持ちが込められているものなので一生、大事にします。この状況でよく見つかったと驚きました。手伝ってくれた人に感謝しています」と顔をほころばせて話していました。

ただ、楠さんは「時計の針を戻すことで、時間も地震の前に戻すことができたらいいのに」とも話し、2人を救えなかった悔しさをにじませていました。

そして、長女の珠蘭さんの写真がたくさん保存されているはずだとして、珠蘭さんの携帯電話もなんとか見つけ出してあげたいと話していました。

楠さんは、今後しばらく、神奈川県の親族の家に身を寄せる予定で、輪島に戻る機会は少なくなるということですが「輪島が好きなので、町が復興したらもう1度輪島に戻ってきて店を出したいです。妻だったらそうすると思うので」と話していました。