志賀原発 完全な復旧には半年以上かかる見通し トラブル続く

今月1日の能登半島地震から3週間。最大震度7を観測した石川県志賀町にある志賀原子力発電所では、地震の影響で今も外部から電気を受ける系統が一部使えなくなっています。

北陸電力は安全上重要な設備の電源は確保されているとしていますが、新たなトラブルも発生していて、完全な復旧には半年以上かかる見通しです。

北陸電力の志賀原発は、1号機、2号機ともに2011年から運転を停止していますが、今月1日の地震では1号機の原子炉建屋地下2階で震度5強相当の揺れを観測しました。

この影響で外部から電気を受けるための変圧器が壊れ、3系統5回線ある送電線のうち、1系統2回線が現在も使えなくなっています。

1号機変圧器

北陸電力は外部からの電気が受けられなくなった場合でも、非常用のディーゼル発電機や電源車も備えていることから、使用済み核燃料を保管するプールの冷却など安全上重要な設備の電源は確保されているとしています。

一方、この地震で観測した揺れを北陸電力が分析した結果、原発の基礎部分では、一部の周期で従来の想定を上回っていたことが分かりました。

想定を超えたのは0.47秒という比較的短い周期で、原子炉容器や建屋など安全上重要な設備に大きな影響を及ぼす周期ではないということです。

津波も観測されました。

高さおよそ1メートルから最大3メートルの津波が複数回到達し、引き波もマイナス1メートルに達したということです。

北陸電力は海抜11メートルの敷地に高さ4メートルの防潮堤が設置されているほか、冷却のための海水を引き込む取水口はマイナス6.5メートルに設置されていることから影響はなかったとしています。

ただ、今月17日に、非常用発電機の試験運転を行っていたところ、5台のうち1台が自動停止するなど、新たなトラブルも発生しています。

停止した非常用ディーゼル発電機

原子力規制委員会は、北陸電力に対し、壊れた変圧器や非常用発電機を早期に復旧させることや、故障の原因を調べるよう求めています。

北陸電力は、余震による新たなトラブルに警戒を続けるとともに、復旧や点検を進めていますが、すべての外部電源が使えるようになるなど完全な復旧には半年以上かかる見通しです。

電源の復旧に時間

原子力発電所では、運転を長期間停止している間も核燃料を貯蔵する使用済み燃料プールの冷却を維持するために電源が必要になります。

志賀原発は、▽50万ボルトの2回線、▽27万5000ボルトの2回線、▽6万6000ボルトの1回線、あわせて3系統5回線の送電線で電気を受けられるようになっています。

これらの送電線から電気を受けるには、変圧器を通して高い電圧を発電所内で使える電圧に下げる必要がありますが、今月1日の地震で50万ボルト送電線から電気を受けるための変圧器が壊れ、現在も使えなくなっています。

油漏れが確認された1号機の変圧器

また、50万ボルト送電線につながる変電所で、絶縁に使うセラミック製の部品が壊れたことから、2回線のうち1回線が使用できない状況で、北陸電力によりますと、部品の交換には半年程度かかるということです。

現在、志賀原発では、▽27万5000ボルトの2回線、▽6万6000ボルトの1回線のあわせて2系統3回線が使える状況で、1号機、2号機ともに27万5000ボルトの系統から電気を受けています。

また、外部からの電気が受けられなくなった場合に備え、非常用ディーゼル発電機が1号機と2号機に、それぞれ3台ずつ設置されていますが、このうち、1号機の1台は今月17日に行われていた試験運転中に自動停止し点検が行われているほか、2号機の1台は地震発生前から定期的な検査が行われていて、3月末まで使えなくなっています。

北陸電力は残り4台の非常用発電機は燃料が7日分確保されているほか、電源車もあわせて8台が使える状態だとして、安全上重要な機器を動かすのに必要な電源は確保されているということです。

変圧器の耐震性 見直し検討も

ただ、外部の送電線が使える状態なのにも関わらず、発電所内の変圧器が壊れて電気が受けられなくなっていることについては、原子力規制委員会から検証を求める声も出ています。

原発事故後につくられた新しい規制基準では、福島第一原発で地震と津波によってすべての電源を失った教訓から、発電所内に非常用発電機など複数の電源を備えることが求められています。

一方で、外部電源については送電線など発電所の外の設備に頼ることはできないため、所内の変圧器についても特別な耐震性は求めず、一般の産業用機械と同じ扱いになっています。

規制委員会では、発電所内の設備はもう少し強くしてもよいのではないかという声があり、地震対策の見直しが必要かどうか検討することにしています。