“情熱の男”姫野和樹 ラグビー日本代表キャプテン 素顔に迫る

「自分のパフォーマンスでリーダーシップを発揮したい」

ラグビー日本代表のキャプテン、姫野和樹選手。情熱でチームを引っ張る熱い男です。ワールドカップの初戦はけがの影響で欠場しましたが、1次リーグ最大の山場とされるイングランド戦に向けて先発メンバーに戻ってきました。大一番を前に、日本の命運を握るキャプテンの素顔に迫ります。
(スポーツニュース部 記者 小林達記)

イングランド戦へ“強い決意”

イングランドは、前回大会の準優勝チーム。日本が過去10回対戦して1度も勝ったことがない相手です。

決戦を2日後に控えた15日、姫野選手は記者会見で力強く決意を語りました。

姫野和樹 主将(15日の会見)

姫野和樹 主将
「自分たちができる準備は100%してきたので、あとは本当にやるだけ。この試合に向けて『ブレイブ』ということばでチームを引っ張ってきた。本当に勇気を持って恐れずに自分たちのプレーをし続ける。そのマインドがすごく重要になってくる。自分のパフォーマンスでリーダーシップを発揮したい」

前を見据える目は鋭く、すでに臨戦態勢に入っているかのように見えました。

姫野選手を支えるノートの存在

キャプテンとして日本の期待を一身に背負う姫野選手ですが、取材では意外にも自分の弱さをさらけ出すことがありました。

姫野和樹 主将
「正直、キャプテンなんでプレッシャーを感じない時はないです」

大会前、常にプレッシャーと闘っていることを明かした姫野選手。

ただ、自分の弱さをさらけ出すことは自身の強さにもつながっています。

“弱さを受け入れ、克服していく”

これまでもその繰り返しで成長してきました。

日々の思いや目標、不安や迷いなどを書きためた「姫野ノート」。

自分と向き合い続ける心の内が書かれています。

こちらはワールドカップまで3か月のタイミングで書かれたものです。

「姫野ノート」

「覚悟を持つこと。この残り3か月は正直かなりきつく、辛く、しんどい期間になるだろう。でもオレには夢がある。世界一のバックローになる。W杯で優勝する。ラグビーを国技にする。これを達成するには覚悟がいる」(姫野ノートより)

この先訪れる厳しい合宿を「覚悟」ということばで乗り越えようとする強い意志がにじみ出ています。

さらに、今シーズン初めてキャプテンを務めた7月の強化試合の前夜には。

All Blacks XVと強化試合に主将として(7月15日)

「明日は日本代表のキャプテンとしてグラウンドに立つ。こんなに光栄なことはない。歴史ある日本代表のキャプテン。必ず責任を果たさなければならない。Teamを勝利に導くのはオレだ!!」(姫野ノートより)

「姫野ノート」

「常に一流であれ!!失敗してもすぐ立ち上がれ!こんなに多くのものを持っているんだ。自信を持て。オレは“強い”導いていける。先頭に立ってずっと闘い続けよう!!」(姫野ノートより)

この中にある「常に一流であれ」

姫野選手が中学時代の恩師からもらったことばで、座右の銘にしています。

一流とは何か。

姫野選手は失敗してもすぐに起き上がり、そこから新たなチャレンジを続けられる人のことだと語りました。

そのことばを胸に、キャプテンとして戦い続けています。

姫野選手を支える流 副将

日本代表のリーダーを支えるのが、チームメートの流大選手です。

流大 副将(姫野主将の右)

副キャプテンの流選手は、姫野選手の帝京大時代の先輩で、プライベートでも食事をともにする間柄。

姫野選手のプレッシャーを和らげようと陰でサポートしてきました。

流大 副将
「姫野は責任感がめちゃくちゃ強いので考えすぎることがいっぱいある。そこをうまくリラックスさせたい」

ワールドカップ前の実戦で負けが続いたとき。

苦しみながらもリーダーとして前を向こうとする姫野選手をそばで見守ってきました。

そして、こう声をかけました。

「自信を持ってやれ」

「自分が思ったとおりにやればいい」

苦しい局面でもみんなが姫野選手を信用している、そして必ずついていく。

短いながらも、流選手の優しさが詰まったことばでした。

デスゾーンで試されるチームの絆

日本は、ワールドカップの戦いを世界最高峰のエベレスト登山に例えています。

標高8000メートル以上の高地は「デスゾーン」と言われるほど酸素濃度が低い状態。ラグビーに置き換えれば、ひとつの小さなミスが命取りになり、負けにつながります。

イングランド戦へ向けた練習(15日)

そんな「生きるか死ぬか」の戦いの中で、姫野選手が大切にしているのがチームの「絆」です。

1人1人が「絆」を胸に秘めてグラウンドに立つことで、防御網は崩れることがなく、全員が同じ“絵”を見てアタックできる。

ピンチに陥ったときも必ず立て直すことができる。

姫野選手は日本代表の根幹を貫く「絆」ということばを、練習や試合でチームメートに繰り返し訴えかけてきました。

姫野和樹 主将
「自分たちがデスゾーンに入って一歩踏み外したら死ぬような状況では、仲間と支え合って登っていくことが必要だ。やっぱり『絆』がすごく大事」

日本時間9月18日のイングランド戦。

少しの隙も見せられない1次リーグ最大の山場に、日本は姫野選手を中心とした強固な「絆」で挑みます。