建設業のプロが“高校の先生”に どんな授業で人手確保目指す?

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建設業の就業者数はピーク時から3割減少し、高齢化と慢性的な人手不足が課題となっています

神奈川県横須賀市では、建設会社の経営者たちが地元の高校で授業を行い、若い人材の確保を目指すという全国でも珍しい取り組みが始まっています。どんな授業を行っているのでしょうか。

建設現場を訪れた高校生

横須賀市の病院の建設現場。地元の県立横須賀工業高校の生徒たちが5月、この現場を訪れました。

多くの職人たちが関わって巨大な建造物が出来上がる様子を間近に見てもらおうと、地元の建設会社でつくる団体「横須賀建設業協会」が授業の一環として企画しました。

生徒の一人は次のように話しました。

仕事の意義・職場環境アピール

この授業の先生役を務めるのは、建設会社の社長たちです。県立横須賀工業高校の建設科の2年生30人余りを対象に、年間の実習の半分以上を受け持っています

これから進路を決める生徒たちに、授業を通じて、仕事の意義や働きやすさもアピールします。

ある“先生”は…

講師役の建設業者
災害で復旧をやっているのは自衛隊とか警察が大きく出ているけど、その裏では、うちらみたいな業者が道路を開いたり土をどかしたり、全部やっている

また別の“先生”は…

講師役の建設業者
女性もいま働きやすくなっている

授業を受けた生徒の一人は「“3K(きつい・汚い・危険)”というのがあるじゃないですか。そういうイメージで『ちょっと怖いな』というのがあったが、全然そういうのはなかった」と話していました。

高齢化に危機感

中心となってこの授業を進めている横須賀建設業協会の理事、下里晃雄さんは、地域の建設業の存続に危機感を抱いてきました。

建設業で働く人は、ほかの業界と比べて55歳以上の割合が年々高くなり、逆に29歳以下の割合は低くなっています(総務省統計局 労働力調査をもとに作成)。

 

横須賀建設業協会 理事 下里晃雄さん
若手の新規採用は課題になっている。高齢化していけば(業界は)確実に衰退していく

下里晃雄さん

工具使った本格的授業も

下里さんたちのオリジナル授業では、工具を使った実践的な授業も行われています。取材した日、学校の花壇を整備する授業が行われました。

生徒たちは、現場で長年働いてきた経営者たちから電動工具の使い方をその場で教わり、実際の工事現場さながらに地面のアスファルトなどを壊していきます。

また、測量にも挑戦しました。

授業を終えた生徒の一人は次のように話していました。

横須賀建設業協会 下里さん
現場に来たら(生徒たちが)生き生きしている。興味があるのかな、とすごく感じた。『この業界に入ってきてもらえれば』。その思いがあるので、熱く語っていきたい

この高校では、建設のプロによる授業を2023年に受けたいまの3年生からは「貴重な体験ができた」という声が多くあったということです。またほとんどの生徒が、将来建設業界で働くことを志望しているということで、実際に成果も出ているようです。
(横浜局 岩本直樹)
【2024年6月4日放送】