2024年02月28日
就職活動が本格化すると、面接の機会も増えてきます。
面接官が学生の何を知りたいと考えているのか、気になりますよね。
ほかにも、面接の盛り上がりは合否に関わる?NGな行動ってあるの?といった就活生が抱えるギモンを専門家にぶつけました。
(聞き手:鈴木優 堀祐理)
これから面接を受ける機会が多くなると思います。
面接官は学生の何を知りたいと思っているのでしょうか。
ひと言でいえば「個性」だと思います。
とはいえ、「あなたの個性は何ですか」と聞かれて明確に答えるのは難しいですよね。
なので、企業はあの手この手でいろんな質問を投げて、いろんな角度から学生と向き合い、その反応から個性を見極めている、というのが正しい理解だと思います。
厚地峻一さん
2023年にワンキャリアに入社。マーケティング事業部長として毎月50人以上の就活生にインタビューを行っている。
王道な質問もあれば、ちょっと特殊な質問もありますが、多様な質問を通して学生の考え方や性格を把握して、自分たちの企業に合っているのかどうかを見ようとしているんです。
そして、個性が分かりやすいのが「学生時代一番頑張ったこと」いわゆる「ガクチカ」だと思います。
必ずと言っていいほど聞かれますが、どうしてですか。
頑張ったエピソードって気持ちが乗るので、すらすら言葉も出てきやすいんですよね。
その中から、この人は前向きな人なんだなとか、ゆっくり考える人なんだなとか、チャレンジングな人なんだなとか、少しずつ中身が見えてくる。
そして、自分たちの企業やポジションに合う人材かどうかを見極めているんだと思います。
面接官はエントリーシート(以下ES)をもとに質問されていると思うのですが、面接官が質問しやすいESってどんなESですか。
結論から入るとか形式的な部分の読みやすさもあると思いますが、自分が何に苦労して何を頑張ってきたのかという、頑張ったことの内容が明確なことは大事ですよね。
そういう意味で言うと、感情の動きが表現されていると質問しやすいと思います。
なぜ感情の動きがあると質問しやすいんですか。
面接官が知りたいのは実績とかじゃないんですよね。
例えば、サッカーで全国優勝したのか、地区予選1回戦で負けたのかは面接で聞かなくても調べれば分かることですし、結果は過去のものなのでそこに興味があるわけではないんです。
極端な話ですが、何となく全国優勝しちゃった人と、地区予選1回戦敗退だったけどすごく一生懸命やってものすごく大きなものを得たと心の底から言える人。
この2人だと後者の方が頑張ってきたことが明確で魅力的に見えると思っていて。
1度挫折しかけたけど頑張りましたとか、苦しい思いをしたけどこういうふうに跳ねのけましたとか、そういう感情が動いた瞬間に個性が表れるので、企業も質問しやすいと思います。
感情が動く瞬間にその人らしさが表れるんですね。
個性というと、エッジの効いたものとか、他の人にはない特徴的な部分だと思ってしまう人もいるかもしれません。
ですが、優しいとか穏やかとか、広くいろんな人が持っているものも個性です。
とがらせようとしすぎなくても大丈夫で、むしろ自然体で書いたものからにじみ出る個性こそが大事だと思うので、飾りすぎないことも大事だと思います。
最近ChatGPTなどの生成AIが話題ですが、生成AIを使ってESを書いても良いのでしょうか。
少なくとも僕は良いと思っています。
どうしてですか?
ChatGPTを使っても使わなくても、同じような形式のものが出来上がる仕組み自体は世の中にもうあると思うんです。
例えば、先輩から教えてもらったり、本を読んだりしてESの書き方、作法を学んで、それをベースにESを書くことは今でもありますよね。
であれば、できるだけ形式を整える時間を短くして、出来上がったものについていかに自分の個性が伝わるものになっているか、推こうを重ねることに時間を使えば良いと思います。
人の時間は有限なので、100の時間があるとしたら、ESの書き方に80も70も時間を使うべきじゃないと思うんですよ。
ChatGPTなど使えるものがあるならば使って、形式を整える時間は10とか5にして。
残りの90近くの時間はESの内容に自分らしさが表れているか、言いたい事がちゃんと伝わるかを確かめることにかけてほしいなと思います。
書き方まで1から全部自分で考えなくても、文章の推こうを重ねて内容をしっかり届けたほうが良いということですか。
そう思います。
ESは選考全体の最初の合否の判断材料になることももちろんありますが、面接官からすると1歩目の、最初のご挨拶に近いんじゃないかなと。
僕も新卒採用の面接官の経験はありますが、ESだけで合否を決めるんじゃなくて、ESでこの人はこういう人なんじゃないかなって想像を膨らませるんです。
そして、実際の面接でESの内容を深掘りして、さらにその人の個性を確認していくのが面接の流れだと考えています。
気をつけないといけない点はありますか。
1番のリスクは、人から共有してもらったESやChatGPTといったものを使って出来上がったものをうのみにして、そのまま出してしまうことだと思います。
誰かが作ったものや何かを参考にして作ったものでは、自分を完全には表現できていない可能性もあるので、そこをちゃんと見極めるべきだと思うんです。
ただ、0から作り上げるのは時間のコストがかかるので、そこは「ツール」を活用して、自分がESに向き合ったり、自己分析や企業研究をすることに時間を振り分けることが大事だと思います。
実際に面接を受けると、面接官と話が盛り上がることもあれば、あまりささらなかったなと思うこともあるのですが、話の盛り上がりは合否に関係するのでしょうか。
その学生を落とすか、先の選考に進ませるかといったシビアなジャッジをする時に、その場の盛り上がりが点数になっているということはないです。
ですが、盛り上がった方がその人の個性が伝わっている可能性が高いということはあると思います。
友達と話す場合でも、ずっと真剣に話をしている時よりも、みんなで盛り上がって話している時の方が何となくその人の本音が見えるなと思う瞬間ってありませんか。
それと一緒で、話の中で相手と何かを共有できて盛り上がったということは、お互いの感情が出ているということだと思います。
相手にちゃんと自分という存在が伝わっていて、それが魅力的だからこそ話が盛り上がっているんだと思うんです。
なので、盛り上がった時は通過しやすいというのは、結果としてはあり得るかもしれませんが、盛り上がりを点数化するということはないです。
あまり話が弾まなかったから駄目だ、と落ちこむ必要はないですか。
盛り上がらなかったからといって落ち込む必要はないと思いますが、相手に自分が伝わってなかったんじゃないかな、と振り返りをすることは大事だとは思います。
面接官側が不慣れで一生懸命質問を考えていてコミュニケーションがうまくいかない場合もありますし。
就活生が自分らしさをうまくアピールできなくて、面接官が「この人どういう人なんだろうな」ってずっと悩んだまま終わってしまった可能性もあります。
後者の場合は、次に向けて改善する必要があるので、そこは自分の感覚で見極めていくことが大事だと思います。
直ちに一喜一憂する必要はないけど、しっかり振り返る必要があるんですね。
面接でやってはいけない行動はありますか。
面接は加点式と減点式と両方あります。
この人はいいなと思ったら加点しますし、ちょっと微妙だなって思う点があれば減点するので、減点される部分をいかに作らないかは意識したほうが良いと思います。
減点される部分って、具体的にはどんなことですか。
例えば、時間に遅れるとか、挨拶ができないとか。
心持ち1つで改善できるのに不用意にやってしまうようなミスはできるだけしないように臨むというのは、心得としては大事だと思います。
あとは、服装など、企業が提示している条件がありますよね。
「服装自由」って書いてあれば、スーツを着ていなくても減点にはなりません。
一方で、「スーツでお越しください」というひと言があるのに私服で行ってしまうと、この人は規則を守れない人だと減点になります。
そういった、誰もが「これは駄目だよね」って言う行動をとらないことが結構大事なことだと思います。
部屋に入室するときのノックの回数が、2回はトイレの回数で3回が正式、といったマナーも聞きますが、面接官の方はそういうことは気にされますか。
気にされる企業がある可能性は否定しませんが、少なくとも僕の経験上は気にしたことはありません。
知り合いの人事担当の方々の中からも、例えば、「この前の面接でノックが2回だったから、トイレか!って思いました」みたいな言葉は聞いたこともないです。
ただ、不安なのであれば、こうするべきというものに従っておけば良いと思いますが、気負う必要は全くないということはお伝えしたいです。
服装自由って言われて不安ならスーツで行けばいいし、ノックも不安なら3回すればいい。
そう思います。
減点を恐れてマナー本を読んだりする必要はないですか。
例えば、敬語を正しく使うとか、名刺交換とか、マナーの中にも社会人になった時に最低限押さえておくべきマナーもあるとは思っています。
学生でも就活の中でビジネスマナーに触れる瞬間はあると思いますが、そういう時に正しいとされている振る舞いができることは、加点要素にはなると思います。
いわゆるマナー本を読むことが必ずしも無意味とは思わないですが、過剰になりすぎる必要もないと思います。
面接では逆質問をする時もありますが、どういう質問をするべきなのでしょうか。
素直に気になっていることがあれば、それを聞く場だと思います。
逆面接の時間は、企業側があなたたちを選びますよというだけではなくて、皆さんからもその企業を選ぶかどうか見極めてもらう時間です。
だから、質問があるかないかということはそんなに問題ではなくて、ないならないで良いとは思います。
ただ、その企業に興味を持って、気になることがあればそれを素直に聞いていい時間なので。
企業研究で興味を持った内容とか、将来自分がやりたいことが本当にできるのかとか、そういう部分を企業に問う、確認する時間として使ってもらえるととても良いと思います。
逆質問で給与や残業時間などの入社後の福利厚生を聞くのはNGといううわさも聞くのですが…
NGではないと思いますよ。
ただ、企業ごとのスタンスによっても変わりますが、そういった情報をそもそも社外に開示している企業もたくさんあります。
例えば、平均年収や平均残業時間、有給取得率や育児休暇の取得率といったデータが開示されているのであれば、事前に確認しておく必要はあると思います。
開示されてなければ聞くことに全然問題はないと思いますし、むしろ就活生のみなさんには聞く権利はしっかりあると思います。
企業に確認したいことを整理して面接に臨みたいと思います。
ありがとうございました。
撮影:幕内琴海 編集:谷口碧
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