2023年02月24日
(聞き手:本間遥、幕内琴美)
「AIって使ってみたいけど何から始めればいいのかわからない」こう感じている人は少なくないかも知れません。どうやら知識ゼロからでも、AIが使えるようになる7つのスキルがあるんだそうです。ゼロから学んだ野口竜司さんに聞く「AIの学び方」です。
AIの知識って、今どのぐらい求められているんですか?
今の時代にAIを活用してない企業は、ひと昔前のインターネットを活用してない企業と一緒だと思います。
そこまでですか!
立命館大学 政策科学部 卒業。ZOZO NEXT 取締役CAIO(Chief AI Officer)などを経て、AIのスタートアップELYZAで取締役を務める。10年以上にわたって数々のAIプロジェクト推進に関わる一方で、ヤフーやZOZOなどを傘下に持つZホールディングスでAIを学ぶ塾を主催するなど、AI人材の育成にも力を入れている。
世界を見ると、金融や小売、すべての業界がAI活用を普通にやっています。
IT業界に限らず、AIは切っても切り離せないんですね。
私は文系でAIをあまり知らないんですが、具体的に何から始めればいいでしょうか。
これからの時代には、AIを作る人材だけではなく、活用するスキルをもった「文系AI人材」がとても重要になってくると考えています。
そこで「文系AI人材」になるために必要なスキルを7つに整理しました。
AI活用における「心・技・体・知」と呼んでいます。
この7つをバランスよく揃えていくと、AIの中身は分からずとも、AI活用できるようになります。
中身が分からなくてもですか?
一定の中身は理解する必要はあります。
でもプログラミングや統計は必須ではなく、技術的な詳細を知らないといけないわけでもないです。
え、プログラミングができなくてもいいんですか!
私は必要ない派ですね。こういうと怒る人もいますけど(笑)
むしろアレルギーになってAI活用から遠のくなら、やらない方がいいと思います。
なるほど。AIに抵抗がなくなってきました!
この7つのスキルを段階別で整理してみたいと思います。
例えば「①AI人材マインド」では、AIを使うの当たり前だよねというマインドになれるかが最初です。
「②基礎用語力」は英単語と同じように、「出る順」で覚えていけばいいんです。そんなに多くはありません。
次にAIの仕組みを知るとともに、社会で活用されている事例をたくさん知ることが大切です。
それが「③AI構造理解力」、「④AI事例収集力」になります。
事例ですか?
世の中にある課題が、どうAIで解決されるかを学んでいくことです。
これが「⑤企画力」につながっていきます。
周りにある事例を参考に、自分で企画を作ってみると基礎力が付くと思います。
AIを導入しようという時に、一気にリーダーシップを発揮できる人になれるかなと思います。
目利き力を鍛えるのってはなかなか難しいのでは・・・?
そうですね、「⑥目利き力」と「⑦マネジメント力」は実際にプロジェクト入らないと難しいですね。
なので、まずはそれ以外の基礎力を上げ、AIに関わる仕事に入るチャンスをちゃんと事前に作っておくことが欠かせません。
そうすると、学生のうちにできるのはAIへの基礎力を付けることですか?
はい、生活の中で、どんなAIが活用され、AIがあればどんな風に変わるかを想像するような基礎力ですかね。
それは学生のうちに学べるかなと思います。
そのためにも、AIに関するアンテナを高めておく必要があるということでしょうか。
そうですね、例えばAIには4つのタイプがあります。
AIの4つのタイプやなぜ文系AI人材が求められているかについては前編で詳しく聞いています。
AIのことがニュースに出ない日はないので、ニュースを見たときに、「これは識別系AIだな」というように自分の中での区分けのフォルダを作って把握していくと、よりキャッチアップできるようになりますね。
なるほど!
あと、最近のアプリは自分の行動によってAIが学習して、オススメの記事などを推薦してくれます。
なので、今回で言えば、意図的にAIのことばかりをたくさん調べると、AIが学習して、AIのニュースをどんどん出してくれるようにもなるので、そういう風にAIをうまく使うという方法もありますね。
AIというキーワードで、たくさん調べてみます!
野口さんがAIに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
インターネット関連のベンチャー企業に就職し、ビッグデータを活用した新規事業を立ち上げたことが、AIを使う直接的なきっかけとなりました。
インターネットが普及して世の中がどんどん変わっていく時代だったので、そんな技術に携わりたいと思っていました。
そのなかでAIの驚くべき進化を目の当たりにしてから、もうAIのことをやって生きていこうと思いましたね、強烈に。
新しいことに挑戦するのに、リスクは考えませんでしたか?
全然なかったですね。むしろ、やらないことの方がリスクだと思いました。
AIについては、もともと知識はあったんですか?
大学時代に「ゲーム理論」やマーケティングのゼミに入って、機械に大量のデータを入れてシミュレーションさせることはしていたので、なんとなく知識はありました。
でも当時はプログラミングもやっていなかったですし、ビジネスで使えるレベルでもなかったので、ほぼゼロの知識量から必要なものを整理して蓄積していきましたね。
どんな風に学んでいったんですか?
当時は勉強しようと思っても、プログラミングとかアルゴリズムとか・・・本当にAIの専門家しか読めないような難しい本しかなくて、学びようがなかったんですよ。
そこで私がやったのは、AIに詳しいエンジニアを見つけて、その人に焼き肉を何回もおごって、ビールを飲んでもらいながら、1から教えてもらうというやり方でした(笑)
具体的にどういうことを教えてもらったんですか?
例えば、どんなデータをAIに読み込ませるの?とか、そのデータってどんなカタチなの?とか。
分からない用語も専門書だと解説なしに出てくるので、例えば「教師あり学習」ってなにとか。
そういうのを聞きながら、自分なりに図にして、「こういうこと?」「いや違う違う」って書き直されたりして、っていうのを繰り返しながら進めました。
《教師あり学習》
AIにデータを学習させる方式の1つ。あらかじめ答えが分かるように整理したデータによって学習させるもの。例えば、犬や猫(答え)を覚えさせることで、画像に写っている動物が犬か猫かをAIが判別できるようになる。
焼肉を食べながらAIを学んでいったと思うと面白いですね。
もちろん、それだけじゃ分からなかった部分もあって、やっぱり自分で触りましたよね。
自分でデータを用意して、エクセルの表みたいなのから始めて、AIに読み込ませているとこんなふうに予測できるようになった、みたいな。
自分で触ってやっと何か分かった感じが出ましたよね。
それにはどのくらいかかりましたか?
やっぱり1年ぐらいは、しっかり意識して、いろんな情報を吸い上げるようにしました。
こうした経験をもとにまとめたのが、先ほどの7つのスキルです。
今だと教材も増えているので、極端に言えば3か月ぐらいで、こういうもんだよね、こう使えばいいよねっていうぐらいにはなれると思いますよ。
そのあとに、どうAIをビジネスで使っていったんですか?
前職がファッション通販サイトを運営するZOZOグループでAIを使ったサービス開発の責任者をしていたんです。
例えば、お気に入りの服が1着あったとして、それに形や色、素材感などが似た服をAIが自動的に相当な数のアイテムからを探し出してくれたり。
あとは、どのユーザーさんが、どんな服を次に買うかということを予測するAIも作ったりしました。
どんな課題にAIが使えるかという視点を大事にしていました。
最後に、野口さんにとって「仕事」とはなんでしょうか。
仕事とは「AIとのコラボ」です。
今後の仕事は「AIとコラボレーションしてなんぼ」になっていくと思いますので、こういう風に捉えていただければいいのかなと思っています。
ありがとうございました!
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