2023年02月17日
(聞き手:本間遥、幕内琴美)
最近、次々と登場するAIを活用した新たなサービス。そんなニュースを見ながら「自分は理系じゃないから関係ない…」なんて思っている人いませんか?
実は今、AIをビジネスにいかす“文系AI人材”こそが求められているんだそうです。“文系のAIスペシャリスト”野口竜司さんに詳しく聞きました。
AIという言葉はよく聞くのですが、どんなことができるのでしょうか。
1つ分かりやすい事例をお見せしますね。キーワードを入力するだけで文章を書くAIです。
例えば、「大学生」「人間は何を学ぶべきか」などのキーワードを入れて、AIに書かせてみると、
数秒で、このような新聞記事ができあがります。
ええ!すごい!
立命館大学 政策科学部 卒業。ZOZO NEXT 取締役CAIO(Chief AI Officer)などを経て、AIのスタートアップELYZAで取締役を務める。10年以上にわたって数々のAIプロジェクト推進に関わる一方で、ヤフーやZOZOなどを傘下に持つZホールディングスでAIを学ぶ塾を主催するなど、AI人材の育成にも力を入れている。
メールを書いてくれるAIもあります。
例えば「黒ヤギ様」「白ヤギ」「手紙」「読まずに食べてしまう」というキーワードでメール書かせましょう。
すると、黒ヤギ様宛に手紙を食べてしまったことを謝罪するメールができあがります。
へー!おもしろい!
まだまだ100%ではないですが、私たちが下書きとして使うものをAIが作りだせるようになってきていますね。
AIを使うってもっと難しいと思っていました。意外と簡単に使えるんですね。
そうです。もうAIは身近なところに入っています。
皆さんも使っているSNSでオススメの動画を出すのも、スマートフォンで顔認証をするのもAIですね。
AIが身近になっていくからこそ、これからは課題に対してどうAIを活用するかを考えていかないといけません。
世の中で必要だけど、まだサービスが存在していないというギャップを見つけて、そこにAIを活用できるかどうかを判断できる人材がとても重要になってきます。
これからはAIをどう使うか考えることが重要ということですか?
まさにそういうことです。
これまでAIは「作る」専門家が先行して増えてきましたが、AIを作る人材だけいても宝の持ち腐れで。
AIを使ってプロジェクトを企画・推進したり、どんなAIを使うか考えたりする人こそ、まさに今、足りない状況になってきています。
それは新しくできた職種ってことですか?
その通りです。
まだまだ少ないですが、「AIプロデューサー」「AIプランナー」などが出てきています。
どの業界でも、こうした人材は求められているんですか?
いま多くの企業でDX=デジタルトランスフォーメーションが課題になっていて、大企業のほとんどがDX推進に関わる部署を持っています。
その最重要技術がAIと言い切れますので、AIプランナーなどが必須になってきています。
私は文系なんですが、積極的に関わっていくべきですか?
一言でいえば、“文系こそ”AI人材になるべきです。
今後求められるのは、どの課題にどのAI技術を使うといいかというマッチングの仕事なんですね。
これからはビジネスについて学んできて、実務経験もある“文系人材”こそ必要なんです。
そうなんですね・・・!
エンジニアがビジネスのことを学ぼうとしても、全員はできませんよね。
過去にインターネットが登場したときに、この技術を使っていろんな事業を進めたのは、いわゆる理系の人たちだけではありませんでした。
AIをどう使い、どんなビジネスをするのかを分析する力を磨くことが大切です。
文系でもAIについて知っておくことは大切なんですね。
どんなAIがあるのか知っておくことが重要です。
例えば、AIも万能ではなく、個性によって得意分野が違っていて、大きく4つに分類できるんですね。
識別系は、皆さんのスマホの顔認証だったり、画像から文字を読み取って判別したりするAIですね。
そして、会話系は冒頭でお見せした文章を書くAIもそうですが、ここ最近、非常に伸びを見せている状況です。
こういったことを知っておくことが第一歩です。
とはいえ、AIと聞くと難しそうで、抵抗を感じてしまいます。
そう感じるかも知れませんね。
でもこの先、AIによってなくなる仕事がたくさんある、といのは避けられない事実だと感じていて。
危機感は持っておいた方がいいと思います。
え!?
ただAIに勝つ負けるという考え方ではなく、AIと一緒にどう働くかという視点が大事になってきます。
仕事のやり方が変わっていくのでしょうか。
これは、日本の中で職種をタイプ別に示した図です。
これまでは創造的な業務や分析的な業務、それから図の左側の込み入った手作業的な業務もAIにはできない感じがあったんです。
でもここ数年で急速にAIが進歩してきて、さきほどのように文章もかけるし、なんなら会話ができて、絵もかけるようになってきているんですね。
なので、厳密ではないですが、このマップの中でもAIによってカバーされる仕事がほとんどになると思っています。
そうなると人がする仕事は必要なくなるんでしょうか。
そういうわけではありません。
確かに多くの仕事でAIが代行する業務が増えていきますので、奪われる感覚になっても仕方がない状況なのかなと思います。
ただ反復的な作業はAIに任せて、工夫が必要な部分に時間を割く事ができるようになるという意味で、AIは味方なんです。
一緒に働く仲間という感じでしょうか。
自分1人に対してAI部下が100人くらい付いて、いろいろな仕事をしてくれるイメージですね。
AI部下と一緒に生産量を上げたり、新しいものを作り出したりすることこそ目指すべき1つの道筋だと思います。
一方で、AIに頼りすぎることもよくないと思っています。
「シンギュラリティ」って聞いたことはありますか?
アメリカのレイ・カーツワイル氏が考案した概念で、2045年に全ての人間を合わせた脳力をAIが超えると予想しているんですね。
えぇ!
2005年に発表されたんですが、
これまでに「家庭用ロボットが家を掃除している(2015年)」「10TBのストレージ(人間の脳の記憶容量に相当)が1000ドルで買える(2018年)」といった予測を次々と当ててきているんです。
そして、2020年代には、とても大事な予測をしていて、AIが教育を受けた1人の人間と同等の知性になるとしています。
もうすでに文章を書いたり、絵を描いたり、一部においては、人間並みの知性を持ったともいえるという状況で。
“プレ・シンギュラリティが来た”と言っている専門家もいます。
機械に支配されるSFの世界みたいになりそうですね…。
AIで危険なのが、人間が頑張ってできるようになったことを奪う存在にもなるという両側面あることです。
例えば、ネットショッピングのサービスでも、どの商品を、いくらで、何個仕入れるかということは、AIが基本的には考え、人間はそれを承認するボタンを押すだけという状況もすでにあります。
そう考えると“AIに使われてる”という感覚にもなりうるっていうことですよね。
そうならないように、AIのことを知って、みずからうまく活用する側になっていく人をどんどん増やさないと、主体性を持たない方向の仕事ばかりが人間の方に増えていってしまいます。
うまくつきあっていく必要があるということなんですね。
まさにその通りです。
後編では、社会人になってからAIに興味をもち、ゼロからスペシャリストになった野口さんに、どうすれば”文系AI人材”になれるのかについて聞きました。近日公開予定です。
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