2022年6月23日
災害 アフガニスタン

アフガニスタンで地震 死者多数 現地の情報は?

日本時間の22日午前6時前、アフガニスタン東部のホスト州を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生しました。これまでに多数の死傷者が出ています。

現地の情報や地震の専門家の見方などをまとめました。
(日本とアフガニスタンは4時間半の時差があります)

救助活動続くも依然難航

アフガニスタン東部で起きた地震は、発生から2日がたち、国連の機関なども加わって支援活動が続けられています。

現地では多くの家屋が倒壊していて、がれきの下に住民が取り残されているとみられています。また、現場に通じる道路も寸断されていて、大型の重機などを入れられないことから救助活動は依然として難航しています。

けが人受け入れる施設不足 十分な手当て受けられず

国連の機関やNGOが支援活動に乗り出していますが、被災地では、けがをした人を受け入れる施設が不足していて、多くの人が十分な手当てを受けられない状況です。

このため地元当局は、ヘリコプターなどを使ってけがをした人たちを都市部の病院に搬送して治療を進めています。

このうち、家族が首都カブールの病院に搬送され手当てを受けているというパクティカ州のムハンマド・グルさんは「地震で家族5人が死亡し、5人がケガをした。国連機関などには難局に直面している私たちを支援してほしい」と話していました。

被災地では、衛生状態が悪化する中、感染症の拡大も懸念されていて、医療支援の確保が大きな課題となっています。

被災地にヘリコプターで支援物資

地震で大きな被害が出ている東部パクティカ州では23日、支援物資を積んだヘリコプターが到着し、イスラム主義勢力タリバンの地元関係者らが物資の運搬にあたっていました。

地元の当局者は「NGOなどからの支援物資を必要な人に届けていきたい。亡くなった人の遺族、けがをした人、家を失った人たちを助けていかなければいけない」と話していました。

一方、ユニセフ=国連児童基金は23日、パクティカ州とホスト州の被災地に衛生用品や防寒具、テントや毛布などを提供したことを明らかにしました。

地震発生から2日 救助活動難航 タリバンとの連携課題に

アフガニスタン東部で起きた地震は発生から2日がたちました。ホスト州と隣のパクティカ州の当局者は、犠牲者はこれまでに合わせて1000人を超え、けが人は1600人以上になったと明らかにしています。

現地では救援隊による救助活動が続けられているものの、道路や通信網が損壊していることなどから救助活動は難航しています。

国連機関やNGOも加わり支援活動を始めていて、難民や移民の支援を行っている国際NGOのノルウェー難民評議会は、ホスト州にスタッフを派遣して救援活動に乗り出しました。

ノルウェー難民評議会の広報担当者は政権を掌握するタリバンが捜索活動を指揮しているとした上で「これまでのところタリバンと連携して活動を進めている。被災地で緊急の現金の支給とともに避難所の運営を行うことになるだろう」と話していました。

アフガニスタンでは去年8月にタリバンが権力を掌握して以降、国際的な支援団体が撤退したり活動を休止したりしていて、被災地での支援が求められる中、タリバンと連携し迅速な支援に結びつけられるかが課題となっています。

UNHCR「不発弾の情報も 慎重に支援進めることを余儀なくされている」

アフガニスタン東部での地震を受けてUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の担当者がNHKの取材に応じ、被災地は、
長年の紛争で大きな影響を受けた地域で不発弾が残っている恐れもあり、安全を確保しながら慎重に支援活動を続けていることを明らかにしました。

UNHCRのカブール事務所の広報責任者、ピーター・キャスラー氏は23日、オンラインでNHKのインタビューに応じました。
キャスラー氏は、UNHCRのスタッフがすでに現地入りして活動を始めていることを明らかにした上で、「被災地は長年の紛争で大きな影響を受けた地域で、不発弾が残っているという情報もあり、慎重に支援活動を進めることを余儀なくされている」と述べました。

また、現地では、ここ数日、大雨が降り続いていて、多くの人たちが地震で家を失うなか、テントや毛布などの支援物資が大量に必要となっているということです。

さらにキャスラー氏は、地震の被害は今後さらに拡大する恐れがあるとした上で、「人道支援が必要な人々は確実に増えるとみられ、支援を急がなければならない」として、各国に対し、緊急の資金援助を訴えました。

アフガニスタンでは、去年8月にイスラム主義勢力タリバンが再び権力を握って以降、経済の悪化や食料不足が深刻化していて、こうした中で人々がさらに厳しい生活に陥ることが懸念されています。

地震活動に詳しい専門家「震源浅い直下型地震で強い揺れか」

現地の地震活動に詳しい同志社大学の堤浩之教授は「プレートどうしの衝突の影響で世界的に見ても地震活動が活発な地域の1つで、揺れに弱いレンガ造りの建物が多く、被害が拡大したとみられる」と指摘しています。

堤教授によりますと、今回、地震が発生したアフガニスタンや隣国のパキスタンにかけては、北上する「インドプレート」が「ユーラシアプレート」に衝突して力がかかり、ひずみがたまっているため、地震が起きやすいということです。

今回の震源の西に百数十キロ離れた地域には過去にマグニチュード7クラスの地震が繰り返し発生している「チャマン断層」などがあります。

アフガニスタンからパキスタンにかけては世界的に見ても活動が活発な地域の1つで、これまで犠牲者が数万人にのぼる地震もたびたび起きています。

この地域ではプレートの動きにあわせて断層が左方向に動くタイプの地震が多く、今回も同じメカニズムと考えられるとしています。

その上で、今後の見通しについては「しばらくは同じ程度の規模の地震が起こる可能性があるため、現地では地震活動の推移に十分注意しながら救援活動などを進める必要がある」と話しています。

また、現地は乾燥地域で木材が手に入りにくく、日干しレンガをそのまま積み上げているような揺れに弱い構造の建物が多いことや、地震の発生時刻が現地時間の午前2時前と未明の時間帯だったことなどが被害を拡大させた要因とみられると分析しています。

堤教授は「地震の規模はそれほど大きくないが、震源が浅く直下型の地震だったため、震源周辺では強い揺れに見舞われたと思う。多くの人が寝ている時間だったため、逃げる間もなく耐震性の低い建物の下敷きになったのではないか」と話していました。

1991年の地震調査の専門家「土や石を材料にした家 倒壊で被害深刻化」

防災科学技術研究所の山崎文雄主幹研究員は、1991年にアフガニスタンでマグニチュード6.8の地震が発生した当時、大きな被害が出た隣国パキスタンの国境付近で現地調査を行いました。

山崎主幹研究員は「今回の現地の映像を見ると30年前とほとんど家の構造が変わっていないと感じた。土や石を材料にして建てた住宅が多く、特に「アドベ」と呼ばれる日干しレンガとモルタルを積み重ねた建物が特徴だ」と指摘しています。

また、「住宅の多くは鉄筋などで補強されておらず、耐震性が低いことから震度5強程度の揺れでも大きく崩れて人的な被害が発生してしまう」と話していました。

被害が拡大した要因について山崎主幹研究員は地震の発生時刻と建物の構造に注目し「未明の地震だったためにほとんどの人が寝ていたと考えられる。日本の家と違い、土や石でできた家は倒壊すると“生存空間”が失われるので被害が深刻化するし、救助活動も難しくなる」と指摘していました。

さらに今後の注意点について「地震の揺れで壁などに亀裂が入っている可能性があり雨が降ると、そこから浸透して倒壊につながるおそれもある。水が入らないようシートで覆うなどの対策が必要だ」と話していました。

一方、アフガニスタンに限らず発展途上国ではレンガを積み重ねた住宅が多く、地震による被害が拡大しやすい傾向について触れ、「さまざまな国際プロジェクトが動いているが、具体的な防災対策を現地に実装できた例は少ない。今回の地震をきっかけに国際機関で現地の人々に本当に役立つ支援のあり方を考えていく必要がある」と指摘していました。

死者1000人超、けが人1600人超に 救援隊の活動難航

現地の当局者は、NHKの取材に対しこれまでにホスト州と隣のパクティカ州で犠牲者は、合わせて1000人を超え、
けが人は1600人以上になったと明らかにしました。被災した地域では、日干しレンガを積み上げた家屋が多く、今も多くの人が倒壊した家屋の下に閉じ込められているとみられています。

現地では救援隊による捜索活動が続けられていますが、現場に通じる道路が整備されていないことなどから活動は難航しています。

国連や各国の支援始まる 迅速支援が課題に

国連のWFP=世界食糧計画は23日、首都カブールで被災地へ送る小麦粉をトラックに積み込む作業を行いました。
送られるのは日本政府から提供された小麦粉を含む合わせて130トンにのぼるということです。
WFPアフガニスタン事務所のシェリー・タックラール広報官は「重要なことは緊急支援物資を必要としている人のもとへできるだけ早く届けることだ。アフガニスタンの人たちは辛抱強いが、苦しんでいる人たちのことを忘れないでほしい」と支援を訴えました。
また、隣国パキスタン政府も首都イスラマバードから簡易テントや医薬品を積んだトラックを被災地に向けて出発させ、救援活動を本格化させています。
アフガニスタンでは去年8月にイスラム主義勢力タリバンが再び権力を掌握して以降、各国の大使館が閉鎖したり、国際的なNGOなど支援団体が撤退したりしていて、迅速な支援を行うことが課題となっています。

被災した男性 子ども3人含む家族8人亡くす

パクティカ州に住むワリ・マルジャンさん(40歳)は、地震が発生した時に寝室で寝ていて、揺れで目が覚めて飛び起きたということです。
マルジャンさんは自宅の一部が倒壊する中、自力で外に出ましたが、3人の子どもを含む家族8人が建物の下敷きになって亡くなったということです。
マルジャンさんは「この地域では500棟の家屋が倒壊し、子どもたちは屋外に避難したままだ。250人が亡くなった。救援隊やNGOが到着したが、被害が大きすぎて対応できていない」と話していました。

パクティカ州「1000人死亡 1500人けが」 ホスト州「30人死亡 100人けが」

震源のホスト州の隣のパクティカ州の当局者はNHKの取材に対し、これまでに1000人が死亡し、1500人がけがをしたことを明らかにしたほか、ホスト州の当局者も少なくとも30人が死亡、100人以上がけがをしたとしています。

国連「2000棟近くの家屋倒壊か」

UNAMA=国連アフガニスタン支援団の担当者は記者会見で「2000棟近くの家屋が倒壊しているとみられる。アフガニスタンの家族は少なくとも7人から8人で、複数の家族が一緒に住んでいることもある」と述べて被害のさらなる拡大に懸念を示しました。
この地域では日干しレンガを積み上げた家屋が多く、地震は現地時間の午前2時前に発生していることから、多くの人が倒壊した家屋の下に閉じ込められているとみられ、救援隊による捜索活動が行われています。

タリバン最高指導者 支援求める

地震のあと、イスラム主義勢力タリバンの最高指導者アクンザダ師は声明を発表し、国際社会に対し、地震で被害を受けた人たちへの支援を求めました。
アフガニスタンでは2015年にも北部で発生したマグニチュード7.5の地震で、隣国のパキスタンと合わせて300人が死亡しています。

木原官房副長官「必要な支援 提供すべく調整」

木原官房副長官は記者会見で「多くの方が犠牲になったことに心からお見舞いを申し上げるとともに負傷された方々の1日も早い回復をお祈り申し上げる。国際機関と連携しつつ現地のニーズの把握を含めた情報収集を行うとともに、必要な支援を迅速に提供すべく調整している。なお、現時点で邦人被害の情報には接していない」と述べました。

国連防災機関「現場にアクセスしにくいことが課題」

アフガニスタン東部で発生した地震の救助活動について、国連のUNDRR=国連防災機関の担当者は、今回の地震の震源がパキスタンとの国境に近い、遠隔地で発生したことに触れ、「現場の道路は整備されていないため、人道的な活動において、地域へのアクセスがしにくいことが最も大きな課題の一つになるだろう」と述べて、現場にたどりつくことすら容易ではないと説明しました。
国連は22日、現場で大雨と強風が続いたことで救助ヘリコプターの着陸も妨げられたと報告していて、担当者は、「アフガニスタンでは森林が喪失している深刻な問題があり、地震によって地滑りの危険性が高まります。これは特に大雨のあとにあてはまり、この地域の天気予報は大雨となっています」と述べ、地滑りなどの2次災害のおそれがあると指摘しました。

国連 グテーレス事務総長 支援呼びかけ「今こそ連帯の時」

アフガニスタン東部で発生した地震をうけて国連のグテーレス事務総長が声明を発表し、「地震で悲劇的に多くの命が失われたと聞き、悲痛な思いでいっぱいだ。長年にわたる紛争、経済的苦難、飢餓の影響から立ち直りつつあるアフガニスタンの人々に心を寄せている」と犠牲者やその家族に哀悼の意を示しました。
そして「アフガニスタンに駐在する国連のチームはすでに現地で支援にあたっているが、今回の災害で被害にあった数百におよぶ世帯を支援するため、国際社会の協力を仰いでいく。今こそ連帯の時だ」と述べ、アフガニスタンへの支援を呼びかけました。

アメリカ 人道支援検討を関係機関に指示

アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は22日、声明を発表し「少なくとも1000人の命を奪った破壊的な地震を受けてアメリカは深い悲しみに包まれている。バイデン大統領は事態を注視し、どういった支援ができるのか検討するよう関係機関に指示した」と述べて、被災地への人道的な支援を検討する方針を示しました。

現地映像には崩れた住宅も

多くの人が犠牲になったパクティカ州で、22日撮影された映像では、壁に亀裂が入り、一部が崩れてなくなった住宅や、その周りにがれきが散乱している様子が確認できます。
また、救助にきたとみられるヘリコプターが到着すると、住民などが協力してけが人を運び込もうとしている様子もとらえられています。

アフガニスタン国営メディア 死者およそ1000人と伝える

アフガニスタン東部を震源とする地震について、アフガニスタンの国営メディアは「パクティカ州とホスト州でおよそ1000人が死亡し、1500人がケガをした」と伝えています。

地元当局 死者900人超、けが人600人超

日本時間の22日午前6時前に起きたアフガニスタン東部を震源とする地震について、地元当局は、死者が900人を超え、600人以上がけがをしたことを明らかにしました。

アフガニスタン東部でマグニチュード5.9 少なくとも255人死亡か

日本時間の22日朝6時前、アフガニスタン東部を震源とする地震があり、アフガニスタンのメディアは少なくとも255人が死亡したと伝えています。
USGS=アメリカの地質調査所によりますと、震源はアフガニスタン東部のホスト州で深さは10キロ、地震の規模を示すマグニチュードは5.9と推定されています。
この地震についてイスラム主義勢力タリバンに近いアフガニスタンのメディアは、ツイッターを通じてパクティカ州で少なくとも255人が死亡し、155人がケガをしたと伝えています。
一方パクティカ州の警察は、NHKの取材に「地震で家が倒壊している。これまでに少なくとも20人の死亡が確認された。死者の数はさらに増えるものとみられる」と話し、現地へ救援隊を派遣していることを明らかにしました。
また、震源地のホスト州の当局者も多くの被害が出ているとしています。

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