2022年10月28日
アメリカ中間選挙 トランプ前大統領 バイデン大統領 アメリカ

アメリカ中間選挙の争点 インフレ対策は? 中絶は?

アメリカ政治の今後の方向性を左右する中間選挙は11月8日に投票が行われます。
全米各地で行われている選挙戦ではインフレ対策や人工妊娠中絶などをめぐって各候補が激しい論戦を繰り広げています。

今回の選挙では何が争点となっているのか?
おもな5つの争点について解説します。

記録的なインフレ対策は?

中間選挙ではアメリカ国内で続く記録的なインフレが選挙情勢を左右する主要な争点となっています。

アメリカ国内ではウクライナ情勢を受けた原油価格の高止まりや人手不足を背景にした企業間の賃上げ競争などによって記録的な水準のインフレが続いています。

ニューヨークのスーパーで 12個入り5ドル69セント(約800円)で販売されていた卵(2022年10月)

共和党は「インフレはバイデン政権の失策で、いまだに解決策も持ち合わせていない」などと候補者の演説やテレビ広告で繰り返し批判し、攻勢を強めています。そして「政府の支出を抑え、成長を促す税制や規制緩和策を導入し、経済に安定をもたらす」と訴えています。

これに対してバイデン政権はインフレへの対応を最優先事項と位置付け、8月にエネルギー価格の引き下げや医療費の負担軽減につながるとしている、「インフレ抑制法」を成立させました。さらにガソリン価格を抑えるため、バイデン大統領の指示のもと、石油備蓄の放出を実施することを決めるなど、対策を急いでいます。

有力紙ワシントンポストとABCテレビが9月に行った世論調査によりますと、有権者の76%が投票する上で「インフレ」を重視していると回答していて、市民生活を直撃する物価の高騰への対応に、高い関心が集まっています。

人工妊娠中絶の是非は?

今回の中間選挙では人工妊娠中絶の問題が争点のひとつとして注目されています。

保守派の判事が多数派のアメリカの連邦最高裁判所はことし6月、人工妊娠中絶は憲法で認められた権利だとしたおよそ50年前の判断を覆し、中絶を規制するかどうかの権限が各州に委ねられました。

連邦最高裁の判断が知らされ 裁判所の前で歓声をあげる中絶反対派のデモ隊(2022年6月)

これを受けて共和党の知事の州を中心に中絶を規制する動きが相次いでいます。

アメリカでは人工妊娠中絶をめぐって民主党を支持するリベラル層を中心とした「中絶は女性の権利だ」とする考え方と共和党の支持基盤でもある保守派に根強い中絶に否定的な考え方で世論は二分されてきました。

6月の連邦最高裁の判断について直後に行われた世論調査ではおよそ60%が支持しないと答えていて、民主党はこうした声を追い風に、中絶問題を選挙の争点として強く打ち出し共和党側を批判しています。

一方の共和党は中絶をめぐる問題について今回の選挙戦ではほとんど触れておらず、国民の不満が強いインフレやガソリン価格の高騰を争点化することに力を注いでいます。

トランプ前大統領の影響力は?

4年に1度行われる大統領選挙の中間の年に行われる中間選挙は、現職大統領の政権運営に対する評価の場とも位置づけられています。

今回の中間選挙はそれに加えてトランプ前大統領の影響力を測る試金石になるという点で注目されています。

トランプ前大統領

トランプ氏は今回、おととしの(2020年)大統領選挙で大規模な不正が行われたなどとする自身の主張に賛同する多数の候補者への支持を打ち出しています。

これに対してバイデン大統領は選挙結果を受け入れないトランプ氏や一部の支持者らを「民主主義への脅威だ」と批判し、今回の中間選挙はバイデン政権を選ぶのか、トランプ氏を選ぶのかを問う選挙だと訴えています。

演説でトランプ前大統領を非難するバイデン大統領(2022年9月)

トランプ氏としては、自身が支持した候補者が多数、当選すれば、2024年の大統領選挙に向けて大きな弾みになる一方で、選挙の結果次第では求心力が失われる可能性もあります。

党としての候補者を選ぶ共和党の予備選挙ではトランプ氏の支持を受けたいわゆる「刺客候補」がトランプ氏に批判的な候補者に勝利するケースが相次ぎましたが、民主党の候補者と議席を争う11月の選挙で無党派層を含む幅広い有権者の支持を得られるのかにも関心が集まっています。

移民政策をどうするか?

移民政策をめぐって民主党は、正式な手続きを経ずに国境を越えてアメリカに来た人たちが在留できるよう法的な地位を提供することに重点を置いているのに対し、共和党は、より厳格な国境管理を重視しています。

バイデン政権は、政権発足直後、移民や難民を厳しく制限したトランプ前政権からの政策転換を強く打ち出し、「寛容な姿勢」を示しました。移民政策では、在留資格のない人たちに対し永住権や市民権を得るための道筋を示し、難民政策では1年間に受け入れる難民の人数を大幅に拡大するとしました。

こうした政策転換を受け、メキシコから正式な手続きを経ずに国境を越える人の数は急増しました。

アメリカとメキシコの国境に設置されている壁(メキシコ ティファナ)

ことし9月までの1年間に法的な手続きを経ずに入国を試みたなどとして検挙された人の数は237万人あまりと、1年間の数としてはこれまでで最も多くなり、国境警備当局が対応に追われています。

共和党はこうした状況をバイデン政権が引き起こした「国境危機だ」と批判を強めています。

全米で移民問題への関心を高めようとメキシコと国境を接する南部テキサス州の共和党のアボット知事は正式な手続きを経ずに国境を越えた人たちをバスに乗せ、首都ワシントンのハリス副大統領の公邸の近くなどに送りました。

ロイター通信と調査会社イプソスが9月末から10月初めにかけて行った世論調査によりますと、移民問題で、どちらの党がよりよい仕事をすると思うか尋ねたところ、共和党と答えた人の割合は40%で、民主党の32%を上回っています。

犯罪対策は?

アメリカ国内で多数が犠牲となる銃撃事件などが相次ぐ中、中間選挙では犯罪対策に高い関心が集まり、争点の1つになっています。

アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」などが9月下旬から10月上旬にかけて行った世論調査では、候補者の「犯罪」に対する主張が投票先を決める上で大きな影響を与えると答えた人は60%に上っています。

バイデン大統領は各地で銃の乱射事件が相次いでいることを受けて、殺傷能力の高い銃の販売の禁止などが必要だと訴えていて、銃規制の強化に慎重な立場をとる共和党を非難しています。

銃乱射事件の現場付近で犠牲者を追悼する人々(2022年5月・ニューヨーク州)

一方、共和党は民主党の政治家が市長の都市で犯罪が急増していると主張し、「民主党は犯罪に寛容だ」などと批判しているほか、警察官の増員に向けた財政支援を打ち出しています。

「ポリティコ」などの調査では犯罪対策のうち、▼銃規制の法律の厳格化によって暴力犯罪の発生が減少すると答えた人は67%だったのに対し、▼警察への資金の増額で発生が減少すると答えた人は70%とほぼ横並びで、各候補者の間の議論が活発になっています。

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