愛知県知事リコール署名偽造事件 執行猶予付きの有罪判決

愛知県知事のリコール・解職請求をめぐり、アルバイトを使って署名を偽造したとして地方自治法違反の罪に問われた、リコール活動団体の事務局長だった被告に対し、名古屋地方裁判所は「地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行を首謀者として主導した」として執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。

愛知県の大村知事のリコールを求める県民の署名が偽造された事件では署名活動を行った団体の事務局長だった田中孝博被告(62)が、4年前、佐賀市内でアルバイトを使って署名を偽造したとして、地方自治法違反の罪に問われました。
これまでの裁判で、検察が懲役2年を求刑したのに対し、被告の弁護士は、「体面を保つためにリコール運動の惨敗を避けようとしたもので、うそのリコールを成立させようとはしていない」などと無罪を主張していました。
19日の判決で、名古屋地方裁判所の大村陽一裁判長は、「被告は名簿業者から名簿を購入し、必要な数の署名を偽造するよう共犯者に依頼していた。また、犯行が露見しにくように遠方の施設を確保した上でアルバイトを募るなど、組織性、計画性が認められ、地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行だ」などと指摘しました。
その上で、「首謀者として犯行を主導していただけではなく、自身の政界進出への足場をつくろうなどとする動機も誠に利己的で厳しい非難に値する。結果的に解職請求に結びつかなかったことなどを踏まえても刑事責任は軽視できない」として懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡しました。
判決について、愛知県の大村知事は「民主主義の根幹を揺るがす極めて悪質な戦後最大の署名偽造事件に、大変重い判決が下ったと思っています」と述べました。
その上で、「なぜこのような悪質な事案が起きたのか説明する責任は引き続きあり、消えてなくならない」と話していました。
名古屋市の河村市長は報道陣に対し、「私自身は偽造について知らなかったが、真面目に署名活動をやっていた人には申し訳ないと思う。田中被告にはなぜこんなことをしたのかすべて話してほしかった」と述べました。