“医師は指導義務怠る” 1審と逆 市に賠償命令 名古屋高裁

気道を確保するための器具を装着していた生後6か月の赤ちゃんが、愛知県の一宮市立市民病院を退院した後に亡くなったのは、病院側の療養指導が不十分だったからだなどとして両親が市に賠償を求めた裁判で、2審の名古屋高等裁判所は「医師には両親らを指導する義務があったのに怠った」などと指摘し、1審とは逆に、市におよそ7500万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

6年前、のどの組織が弱く、気管が狭くなったりふさがってしまったりする病気で気道を確保するための「カニューレ」という器具を装着していた生後6か月の赤ちゃんが、一宮市立市民病院を退院した翌日に低酸素脳症で意識が戻らなくなり、その後、3歳で死亡しました。
両親は、赤ちゃんが亡くなったのは病院側の自宅での療養指導が不十分だったからだなどと主張し、一宮市におよそ1億1200万円の賠償を求める訴えを起こしました。
18日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の長谷川恭弘裁判長は「赤ちゃんの入院中、『カニューレ』に関する事故が3回起きていて、医師は事故が今後も起こりうることを伝え、予防方法や、事故が起こった場合の対処方法について両親らを指導する義務があったのに怠った」などと指摘し、訴えを退けた1審とは逆に、市におよそ7500万円の支払いを命じました。
判決のあと、両親の代理人を務める森下泰幸弁護士が名古屋市内で会見を開き、「カニューレというのは事故が多い医療器具で、これからは必ず退院するときに救命方法や予防方法を指導していただきたい」と述べました。
また、父親は弁護士を通して「最初は原因が分からなくて、自分たちに原因があると思っていた。自分たちを責める気持ちでいっぱいだった。今回の判決で病院の責任を認めていただいて、娘の無念を晴らせたことでほっとしました」とコメントしました。
一方、一宮市病院事業部は「判決文が届いていないので現時点ではコメントを差し控える」としています。