「表現の不自由」展示めぐり 名古屋市の敗訴確定 最高裁

5年前に行われた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由」をテーマにした展示をめぐり、名古屋市が負担金の一部の支払いを拒否したことの是非が争われた裁判で、最高裁判所は7日までに市の上告を退ける決定をし、市に3380万円余りの支払いを命じた判決が確定しました。
5年前に開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」は「表現の不自由」をテーマに、慰安婦問題を象徴する少女像や、昭和天皇をコラージュした映像作品などを展示するコーナーが設けられ、テロ予告などが相次ぎ、一時、展示が中止されました。
名古屋市は、河村たかし市長が実行委員会の会長代行を務めていましたが、公金を支出するのが著しく不適切だなどとして負担金の一部、3380万円余りを支払いませんでした。
実行委員会は市に支払いを求めて裁判を起こし、1審の名古屋地方裁判所と2審の名古屋高等裁判所は、「負担金の支払いを拒むことはできない」などとして市に3380万円余りの支払いを命じ、市が上告していました。
これについて最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は7日までに市の上告を退ける決定をし、市に負担金を支払うよう命じた判決が確定しました。
名古屋市の河村市長は、記者団に対し「残念を通り越している。市長は税金が公平に使われるための裁量権を持っていて、とてもこの展示内容に税金は使えないと主張してきたが、市長の税金の使い道に対する裁量権について最高裁が判断を下さずに棄却してしまうということは大変な問題だ」と述べました。
一方、名古屋市は、去年1月、負担金を支払わないことで、遅延損害金の増加を避けたいとして、負担金とそれまでの遅延損害金、あわせて3900万円余りをすでに仮払いしています。
愛知県の大村知事は、7日の記者会見で、「もう少し早く結論が出るものと思っていた。私どもの主張がすべて取り入れられたということであり、トータルで見て妥当な判決で当然の判決だと思っている。最高裁の判断までいただいたので、行政としては法令にのっとって粛々と対応していきたい」と述べました。