愛知・みよし市 非正規公務員の待遇改善へ

非正規の公務員である「会計年度任用職員」について、愛知県みよし市は、正規の職員との待遇の差が大きすぎるとして、新年度から、時給を最大で9.5%引き上げるなど、待遇を改善する方針を固めました。
専門家は、非正規の公務員のあり方に一石を投じるものだとしていて、待遇改善の動きが広がるか注目されます。

「会計年度任用職員」は、任期が原則1年以内で昇給がないなど、正規の職員との待遇の差が大きいと指摘されていることから、みよし市では、新年度から、待遇を改善する方針を固めました。
具体的には、全職員のおよそ2割を占める「一般事務職」の時給を、現在の1155円から1265円に、率にして9.5%引き上げるほか、▼作業員や看護補助職で8.1%▼歯科衛生士や栄養士でも8%それぞれ引き上げる方針です。
また、正規の職員の比率を増やしていくことにしていて、年度途中に、正規の一般事務職や保育士の採用を新たに実施する方針です。
このほか、職員全体の負担軽減のため、市役所の開庁時間を、5月の大型連休以降、現在より45分短くし、証明書を発行できる端末を設置するなどのデジタル化によって、市民サービスを確保するとしています。
みよし市の小山祐市長は、NHKの取材に対し、「市の正規の職員と会計年度任用職員はほぼ同数で市の業務の多くを担っていただいている。ただ、非常に不安定な雇用で賃金が低く抑えられている。国が制度として認めているものなので制度上、悪いものではないが、本当に今のあり方でいいのか」と述べました。
そのうえで、「みよし市の取り組みが、ひとつの波紋として全国に広がっていくことになれば、意義のあることにつながるのではないか」と述べほかの自治体にもあり方を考え直すきっかけにしてほしいという考えを示しました。
公務員制度に詳しい立教大学の上林陽治特任教授は、会計年度任用職員制度について「異常な賃金の格差が生じていて同じ仕事をしていても正規職員の賃金の3分の1から半分くらいだ。担っている仕事はかなり基幹的な仕事だが、身分が非正規だということで賃金が安く抑えられてきた」と述べてました。
その上で、賃金については、「今、年収が200万円前後なので、せめて400万円くらいまでもっていくことが必要ではないかと思う」と述べ、報酬の水準を大幅に引き上げる必要があると指摘しています。
また、今後求められる政策として、「非正規で働いている人たちの意見を聞くと処遇の改善もあるが、まずは雇用の安定だという声をよく聞く。雇用が来年あるのか不安を抱えながら仕事に従事させることを続けていっていいのか」と述べ、正規職員への転換を進めていくことが必要だという考えを示しました。
【会計年度任用職員とは】
会計年度任用職員とは、非正規の公務員で、窓口での対応などにあたる一般事務職員のほか、保育士や看護師など住民サービスに欠かせない業務を担っています。
総務省によりますと、2023年4月1日時点で全国でおよそ66万人いて、会計年度任用職員の制度が始まった2020年から、およそ4万人増えています。
愛知県内では、5万7000人余りが会計年度任用職員として働いています。
ボーナスにあたる期末手当や退職手当は支給できる一方、契約は、原則として1年ごとです。
また、公務員のため、5年を超えて働いた場合、希望すれば期間の定めのない雇用に切り替えるよう企業に義務づけた「無期転換ルール」の対象外となっています。
給与水準の低さも課題となっていて、総務省の調査によりますと会計年度任用職員のうち採用が最も多い「事務補助職員」の時給は「900円超えから1000円以下」と定めている自治体や団体が最も多くなっています。
中には、900円以下に設定しているところもあり、平均の時給も1059円となっています。