「恵」社員証言“このままでは施設の運営立ち行かなくなる”

障害者向けのグループホームを各地で運営する「恵」が、利用者から食材費を過大に徴収するなどしていた問題が明らかになって以降、会社側は明確な説明をしていません。
こうした中、現役の社員がNHKの取材に応じ、次々に社員が辞めていて、このままでは人手が足らず、施設の運営が立ち行かなくなると証言しました。

NHKの取材に応じたのは、「恵」が運営する愛知県内の障害者向けのグループホームに勤めている社員の男性です。
男性によりますと、ことし9月に食材費の過大徴収や障害福祉サービスの報酬を不正請求した疑いが明らかになったあと、東京・港区にある本社からは社員に対しても何も説明がない中、利用者の家族からは施設の運営を心配する声が相次いで寄せられているということです。
男性は、「ほかに預かってくれるところを見つけるのが難しいので、入所者の保護者が一番心配していると思う。『この先どうなるのですか』とよく聞かれる」と話していました。
そうした中、男性が勤める施設では、人手不足に拍車がかかってしまっているということです。
もともと入社しても障害のある入所者に接するための研修や指導がほとんどなく、なかば素人同然で現場に出されるため職場に定着せず、常に人手不足の状態だったということですが、今回の問題でさらに辞める人が相次いでいると言います。
残った社員たちだけでは、夕方4時から翌朝9時までのシフト勤務を埋めるのが難しいと本社に訴えても何も改善されないとのことです。
愛知県が令和6年2月をめどに行政処分などを行う方針を示していますが、このままでは、その前に人手不足で施設の運営が立ち行かなくなると言います。
男性は、「本当にギリギリなので、これ以上、社員・スタッフが減ったら、本当に入所者の面倒を見切れない状況になってしまう。そのことを何べんも本社に訴えているが、補充するからと言うだけで、時は流れていくだけだ。とにかく人を早くいれないと来年の1月、2月がもたない。いま施設にいる人にとっては地獄だ」と話していました。

愛知県は名古屋市や県内の中核市などと利用者への支援のあり方などを検討する協議会を立ち上げました。
東京・港区に本社があり、愛知県内など各地で障害者向けのグループホームを展開する「恵」では食材費の過大徴収や障害福祉サービス報酬の不正請求の疑いが明らかになっています。
こうした中、愛知県はグループホームの利用者に対する支援のあり方などを検討する必要があるとして、名古屋市や県内の中核市などと協議会を立ち上げ、きょう初会合が開かれました。
この中では、▼利用者の家族などから「事業所はこれからどうなるのか」とか、「恵以外の施設に移りたい」といった相談が寄せられていることや、▼「恵」には重い障害がある利用者が多く、次の受け入れ先が見つかるまで時間がかかる可能性があることなどが報告されました。
また、支援団体や当事者からは、▼事業所の閉鎖などで利用者の行き場がなくなることのないようにしてほしいとか、▼助けを求めることが難しい利用者も多いので、自治体は障害者の保護などに取り組んでほしいといった意見が出ていました。
愛知県は引き続き、自治体と連携して利用者への対応にあたるとしています。