入管施設で女性死亡 映像が法廷で初めて上映

名古屋市にある入管施設で亡くなったスリランカ人の女性の遺族が国に賠償を求めている裁判で、証拠として提出された収容中の女性の様子が写った映像の一部が法廷で初めて上映されました。

令和3年3月6日、名古屋出入国在留管理局の施設で収容中のスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(33)が体調不良を訴えて亡くなり、遺族は国に賠償を求める訴えを名古屋地方裁判所に起こしています。
裁判には収容中のウィシュマさんの様子を写した監視カメラの映像のうちおよそ5時間分が証拠として提出され、21日、法廷のモニターを使って初めて上映されました。
映像には裁判の争点の1つで、出入国在留管理庁の最終報告で問題と指摘された部分も含まれています。
亡くなる11日前の2月23日午後7時20分ごろの映像ではウィシュマさんがベッドの上で「担当さん」「はやく」と職員を呼び、渡されたバケツを抱えておう吐しています。
その後、身ぶりなどで点滴をしてほしいと求めるウィシュマさんに対し職員は、「ちょっとできないわ、わかんないから」とか、「それは、私たちお医者さんじゃないからそれできないからさ」などと答えていました。
この対応について、最終報告では、「訴えたかった内容が看守勤務者に正確に伝わらないなど意思疎通に問題が生じることがあった」などと指摘されました。
裁判では、遺族側が「点滴だと誰にでもわかるのに聞き入れられなかった」などと主張し、国側は、「意味まで理解できていなかった」などと反論しています。
また2月26日の午前5時すぎの映像では、ベッドから床に転落してしまったウィシュマさんが「担当さん」「床寒い」などと何度も助けを求め、現れた2人の職員がベッドに戻そうとするものの持ち上げることができず、「朝までちょっと我慢してね」、「ごめんね」などと声をかけて部屋を立ち去っていました。
この対応について最終報告では「必要な人員体制を組むべきだった」などと指摘されました。
裁判では遺族側が、「『寒い』と訴えているのに2時間以上も床に放置していた」などと主張し、国側は「毛布をかけるなど配慮した上で退出していて放置していない」などと反論しています。
残りの映像は7月12日に上映されます。
裁判のあと、遺族と弁護団が名古屋市内で記者会見を開きました。
法廷で映像が上映されたことについてウィシュマさんの妹のポールニマさんは、「どれほど残酷な状況に姉がいたか、映像を見た人は分かったと思います。ぜひ見ていただいて、姉が置かれていた残酷な状況を知ってほしい」と話していました。
そのうえで「国側は本当はもっと前に映像を出せるはずでした。真相究明には5時間分だけでなく映像の全体を見る必要があると思います」と話しました。
また、もうひとりの妹のワヨミさんは、「姉の命は終わりましたが、医療体制も含めて入管がどのようにしているか、今後、収容される人のため、再発防止のために映像を見ていただきたい」と話していました。