新たな復元船の設置作業始まる 石巻「サン・ファン館」

展示内容のリニューアルのため、長期間休館している石巻市にある県の施設「サン・ファン館」で、展示の呼び物となる新たな復元船の設置作業が始まりました。

石巻市にある宮城県慶長使節船ミュージアム「サン・ファン館」は、およそ400年前に初代、仙台藩主、伊達政宗の命を受け支倉常長ら使節団を乗せ太平洋を往復した木造の帆船「サン・ファン・バウティスタ号」を原寸大で復元した船を長年展示していましたが、老朽化を理由に解体しました。
その後、新たな復元船の設置作業が17日から始まり、2分割された状態の船がトラックで屋外の展示の広場に運び込まれ、それぞれをクレーンで持ち上げて土台に固定して船体を設置しました。
新たな復元船は、前の船に比べて4分の1ほどで全長は14.2メートル、鉄筋の骨組みで、外側は繊維強化プラスチックでできています。
新しい復元船は、今後、マストや装飾が取り付けられ、来月末までに完成する見込みだということです。
「サン・ファン館」の高橋正法さんは「質感や色は精巧に再現されているので、見応えのある船になっています。国内外の多くの人に見に来てもらいたい」と話していました。
「サン・ファン館」は、ことし秋ごろにリニューアルオープンする予定です。

【「サン・ファン・バウティスタ号」とは】
「サン・ファン・バウティスタ号」は、メキシコやスペインとの貿易交渉のため、初代、仙台藩主の伊達政宗の命を受けた支倉常長ら慶長遣欧使節団を乗せて太平洋を往復した木造帆船です。
使節団は、この船に乗って慶長18年、西暦1613年に石巻を出港しました。
使節の偉業をたたえようと、出港から380年にあたる1993年に、史実をもとに木造の船が復元されました。
復元船は、重さおよそ500トン、全長はおよそ55メートルと国内で20世紀に復元された木造帆船としては最大と言われ、総工事費のおよそ16億7500万円のうち、およそ5億円が市民などからの寄付でまかなわれました。
1996年に開館した宮城県慶長使節船ミュージアム「サン・ファン館」の呼び物として長年親しまれました。
13年前の東日本大震災の際は、高さ8メートルの津波が押し寄せ流失は免れたものの、翌月の暴風で、マストが折れるなどの被害を受けたため修復されました。
しかし、その後の県の調査で老朽化が進んでいることがわかり、7年前に県が保存しないこを決めました。
そして、保存を望む声もあるなか、3年前から解体工事が始まりました。
新しい復元船は、前の復元船のように中に人が乗り込むことはできませんが、AR=拡張現実の最新のデジタル技術を活用して船内の構造を解説付きで学んだり、帆を張った船と一緒に写真撮影したりできる新たな工夫も予定されています。