東北大学の新総長“日本をけん引する研究大学に”

東北大学の新たな総長に就任した冨永悌二氏が会見を開き、「日本をけん引する研究大学として、さらに発展する強い決意を表明したい」と抱負を述べました。

東北大学の新たな総長に就任した冨永悌二氏は福島県矢吹町出身の66歳。
東北大学病院の前の病院長で、県内の新型コロナウイルスの対応で陣頭指揮をとったほか、世界トップレベルの研究水準を目指して国が重点的に支援する「国際卓越研究大学」の認定に向けても、副学長として力を尽くしてきました。
会見で冨永氏は、その「国際卓越研究大学」への認定を見据え、「日本をけん引する研究大学として、さらに発展する強い決意を表明したい。認定されたらわれわれが掲げた目標を実行し、持てる力をすべて尽くすことが私に託された使命だ」と抱負を述べました。
また、大学の運営にあたっては、新型コロナの対応で多くの職員と力を合わせて乗り切った経験を踏まえ、「コミュニケーションを十分に図り、すべての人たちとの共感を大切に組織運営にあたりたい」と述べました。
冨永氏はこのほか、文系と理系の垣根を超えて研究力の向上を目指すとし、福島の被災地の復興と福島第一原子力発電所の廃炉に向けて役割を果たすことや、今月1日に運用を始めた世界最高レベルの放射光施設「ナノテラス」について学術界や産業界と連携し研究の成果をあげていきたいと決意を述べました。
冨永総長の任期は1期6年です。

【国際卓越研究大学と東北大】
国際卓越研究大学は国が設立した10兆円規模の「大学ファンド」の運用益を活用して、世界トップレベルの研究水準を目指し、国が重点的に支援する大学です。
文部科学省は、去年、東京大学や京都大学など申請があった全国の10の大学の中から初の認定に向けた候補として東北大学が選定されたと発表しました。
今後、一定の条件を満たせば、正式に認定されることになります。

【東北大が掲げる目標は】
大学では認定後を見据え、研究力の強化を図るため、さまざまな目標を掲げています。
例えば、研究者から引用される論文の数や、民間企業などから受け入れる研究資金の額、女性や外国人研究者の比率、これまでにないビジネスモデルを構築する大学発のスタートアップ企業を生み出すことなどについて、それぞれ数値目標を掲げています。
また、こうした目標を達成するために、若手研究者を積極的に登用したり、研究者をサポートする人材を大幅に増やしたりするほか、将来的に教員が研究か学生への教育のどちらに専念するか選べるようにするといった組織変革にも取り組むとしています。
【正式認定で想定支給額は年100億円】
国際卓越研究大学の初の認定に向けて、海外の大学の学長経験者らでつくる有識者会議の審査が行われていて、正式に認定されれば、文部科学省からの支給額は年間およそ100億円が想定されています。
大学ではこうした資金も活用し、今月運用を始めた世界最高レベルの放射光施設「ナノテラス」を中心に産学官の連携で半導体や創薬、食品などの分野の研究開発を進めたり、災害科学国際研究所を核に世界の防災・減災をリードする研究を進めたりするなど、世界の研究者を引き付ける研究環境を構築していきたいとしています。