映画館「チネ・ラヴィータ」今月末で20年の歴史に幕

JR仙台駅東口にある映画館「チネ・ラヴィータ」が、今月末で閉館し、20年の歴史に幕を下ろします。
これを前に別れを惜しむ映画ファンなどが多く訪れています。

「チネ・ラヴィータ」は、閉館した映画館を引き継ぐ形で2004年にJR仙台駅東口に開館し、5年後の2009年には商業施設、「BiVi仙台駅東口」の中に移転しました。
名前の由来は「人生に映画を」という意味のイタリア語で、移転後は3つのスクリーンで大手の映画会社が配給するヒット作品を中心に上映し、若者を中心に利用されました。
その後、JR仙台駅西口に大型の映画館がオープンし、競争が激しくなったことから差別化を図るため、大手が扱わない作品を独自に選んで上映する「ミニシアター」に営業形態を変えました。
映画館の運営会社によりますと、ドキュメンタリーなどほかでは見られない作品を中心に上映し、多くの映画ファンに親しまれましたが、新型コロナの影響などもあり、経営は赤字の状態が続いていたということです。
こうしたことから、運営会社ではテナントの賃貸契約の終了を前に今月末で閉館し、20年の歴史に幕を下ろすことを決めたということです。
映画館を訪れた50代の女性は、「最後に作品を見に来ました。映画の楽しさを教えてもらった場所なので、閉館するのはショックです」と話していました。
同じ会社が運営する仙台市青葉区にある映画館「フォーラム仙台」は営業を継続し、今後はチネ・ラヴィータで扱っていたジャンルの作品も上映していくということです。
チネ・ラヴィータのマネージャー、鵜飼優子さんは「長年支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたい。個人的にも愛情を注いできた映画館なので無念な気持ちはあるが、営業を続けるもう1つの映画館でスタッフと一緒に頑張っていきたい」と話していました。

【厳しいミニシアター】
規模は小さいものの、独自の視点で多様な作品を上映する「ミニシアター」。
日本の映画文化を支えてきましたが、設備の老朽化や人件費の負担が重く、厳しい経営が続いています。
映画製作配給大手4社で作る「日本映画製作者連盟」によりますと、去年1年間に国内で上映された映画の興行収入は、2214億8200万円となり、アニメ作品の好調で前の年より3.9%増加しました。
歴代最高は2019年の2611億8000万円で、それには及びませんでしたが、新型コロナの感染拡大で収入が大きく落ち込んだ2020年を底に右肩上がりで収益を回復しています。
ただ、映画業界の回復を支えるのは映画製作配給大手などが運営する大規模な映画館、シネコン=シネマコンプレックスが中心で、ミニシアターに限ると、設備の老朽化や人件費の負担が重いことなどから厳しい経営が依然続いているところが多いとみられています。
全国のミニシアターなどでつくる団体「コミュニティシネマセンター」などが去年、全国78のミニシアターに行った調査では、現在の経営状況について「やや悪い」(35.9%)「悪い」(26.9%)、「とても悪い」(5.1%)と全体の7割近く(67.9%)を占めました。
さらに「1年以内に閉館を検討している」と回答したところが全体の1割余り(11.5%)にのぼりました。
専門家は、同じ映画館でもシネコンとミニシアターでは収益構造に大きな違いがあると指摘しています。
映像文化に詳しいせんだいメディアテークの小川直人学芸員は「シネコンではヒット作品を1日に何本も上映することで、安定した収益を得られるほか、映像・音響技術を駆使した付加価値を提供することができる。一方、ミニシアターはスクリーンの数が少なく、入場料だけで収益を得ているところがほとんどなので、経営的に厳しいことが多い」と話しています。
そのうえで「個性的で多様な映画を上映するミニシアターは、芸術や文化にとって重要な存在だ。フランスのように街の芸術文化の拠点として公的に支援することも必要になってきている」と話しています。

【ミニシアターの模索】
全国のミニシアターの中には経営を維持していくため、新たなビジネスモデルを模索する動きが出ています。
このうち、おととし、東京・墨田区にできたミニシアター「Stranger」では、映画を見終わったあとに観客同士が感想を語りあうことができるカフェを併設しました。
名古屋市にあるミニシアター「ナゴヤキネマ・ノイ」は1度閉館した映画館を元従業員たちがクラウドファンディングで映画ファンなどから募った資金で改装し、今月再びオープンさせました。
チネ・ラヴィータの運営会社が運営するもう1つの映画館「フォーラム仙台」では、映画ファンに定期的に足を運んでもらおうと、去年から鑑賞から10日以内に再び訪れた会員のチケット代金を割り引きしています。
全国のミニシアターの多くは厳しい経営状況が続いていますが、ファンからの人気は根強く、各地で経営を維持するための模索が続いています。