能登半島地震 車を無料で貸し出す支援活動本格化 石巻の団体

東日本大震災をきっかけに設立された石巻市の団体が、能登半島地震の被災者や支援団体向けに車を無料で貸し出す支援活動を本格化させています。

これは東日本大震災のあと石巻市に設立された「日本カーシェアリング協会」が実施しているもので、被災者や活動に車が必要な団体を対象に全国から集めた車を無料で貸し出す支援活動を行っています。
能登半島地震でもすでに無料の貸し出しを進めていて、維持費などの活動資金を確保するため廃車を提供してもらい、部品を換金するなどの取り組みも始めました。
29日は、栗原市の農家、千田加代子さん(60)が廃車する予定の軽トラックを提供しました。
車は団体の担当者が状態を確認したあと、リサイクル業者に引き渡されていました。
提供した千田さんは「遠く離れていても何かできないかと思い声をかけました。とにかく燃料代が高いのでガソリン代などに役立ててほしいです」と話していました。
協会によりますと、今回の地震ではすでに500件の貸し出しの要望が寄せられているということで、さらに250台分の廃車、1000万円を目標に資金を集めたいとしています。
日本カーシェアリング協会の石渡賢大さんは「現地では本当に車が足りないのでどんな状態の車でもまずは私たちに声をかけてほしいです」と話していました。

【団体設立 きっかけは東日本大震災】
石巻市の一般社団法人「日本カーシェアリング協会」は東日本大震災のあと設立されました。
協会ができたきっかけは東日本大震災でした。
震災で石巻市では多くの車が被害を受け、およそ6万台の車が津波で流されたり建物などの下敷きになったりして使用が難しくなったといいます。
そうした中、石巻市の仮設住宅で移動手段がなかった住民に京都府の企業から寄付された車を無料で貸し出したのをきっかけに活動を広げていきました。
協会では個人や企業から提供を受けた車両440台を保有し、石巻市をはじめ、栃木県や静岡県、それに佐賀県の事務所で保管していて災害が発生すると被災者やがれきの撤去や被災者を支援する団体を対象に無料で貸し出しています。
協会によりますと、2016年の熊本地震や2019年の台風19号で被災した石巻市や丸森町、それに去年の夏に記録的な大雨に襲われた秋田市や五城目町などこれまでに22の災害であわせて3000件以上の無料の貸し出し支援を実施したということです。
一方で車のメンテナンスや人件費などに一定の費用がかかることから協会では動かなくなった車両や廃車を提供してもらい部品をリサイクルなどして活動資金を確保しているということです。
車の提供は専用のサイトか電話から申し込むことができるということです。
電話の受け付けは平日の午前9時から午後6時までで、番号は022ー522ー1453です。

【能登半島地震 支援の課題は】
今回の能登半島地震では車の無料貸し出しの支援が始まっていますが、課題も出てきています。
日本カーシェアリング協会によりますと、28日時点で被災地から車の貸し出しを求める要望は500件にのぼっているということです。
協会ではすでに170台を準備するめどが立ち、このうちおよそ65台を現地に送ったということですが、依然として6割の車両を送ることができていないということです。
その理由について、被災地の道路状況がまだ十分に復旧していないため車を積んだ大型の車両の通行が難しいことが挙げられるとしています。
実際に車を宮城県から被災地に送った際には、ボランティアなどが片道8時間ほどかけて1台づつ運んだということです。
また、被災した範囲が広く、車を貸してほしいという要望も多くの自治体にまたがっていることから、十分な支援ができていないとしています。