クマ目撃12月では過去最多 原因はエサ不足か 注意呼びかけ

宮城県内では例年、12月にはクマが冬眠するため目撃情報が減少する傾向にありますが、今月に入ってから目撃情報が相次ぎ、20日時点で55件に上り、統計を取り始めて以来最も多くなっていることが県の調査で分かりました。
県は、エサ不足が原因で冬眠を始めることができないクマがいる可能性があるとして注意を呼びかけています。

ことし東北地方を中心に、全国ではクマが人に襲われる被害が相次ぎ、宮城県でも3人がけがをするなど、国のまとめでは、クマの被害にあった人はことし4月から11月までで212人にのぼり、統計を取り始めて以降、初めて200人を超える過去最悪の被害になりました。
県によりますと、例年、12月に入るとクマが冬眠することなどから、姿を見かけたりフンなどで確認されたりした目撃件数は減少する傾向にあり、去年12月は8件、おととしは5件でした。
しかし県内では、今月に入ってから目撃情報が相次ぎ、今月20日現在で55件と去年12月の6倍以上に増えていました。
21日は仙台市太白区の山林でクマ1頭が目撃されています。
これはこれまで最も多かった平成28年12月の26件を大幅に上回り、記録が残っている平成17年度以降で最も多くなっているということです。
これについて県は、エサ不足が原因で冬眠を始めることができないクマがいる可能性があるとして今月いっぱい「クマ出没警報」を出して警戒を呼びかけています。
また、例年1月はさらに目撃件数が減少する傾向にあり昨年度は3件でしたが、県は状況をみて今月中にも警報を継続するかどうか判断したいとしています。

【専門家「冬眠しないクマ増える」】
クマの生態に詳しい森林総合研究所の大西尚樹動物生態遺伝チーム長は、12月に目撃情報が相次いでいる理由についてクマ自体の個体数が増加していることをあげています。
個体差があるためクマの中にも冬眠の時期が早いクマや遅いクマがいるということで個体数の増加で冬眠時期が遅いクマが一定数増えている可能性があると指摘しています。
その上でことしはエサ不足が要因として考えられると指摘しています。
大西チーム長は「この時期に動いているのは冬眠していないクマだと思う。冬眠中は十分に脂肪を蓄えていないと春まで生存できない状況だ。ことしはエサが少なく、冬眠に耐えられる脂肪の蓄えができていないのではないか。だから冬眠できないクマが増えている」と指摘しました。
さらに1月には例年、目撃情報が大きく減少する傾向にある一方でことしは今月下旬から来月にかけてクマの目撃が相次ぐ可能性はあるとした上で、「気温や積雪は冬眠を促す要因ではあるが、栄養状態や脂肪の蓄積状態に左右されると思う。そのため、クマの出没はまだ続くかもしれない」と話し、今後気温が下がったとしてもクマが出没する可能性があると指摘しています。
その上で「油断しているときに襲われると思うので、山間部の住民や山に出かける人には、クマが出没する可能性もあると思って注意してほしい」と呼びかけています。