子ども被ばく裁判 2審も棄却 仙台高裁

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、子どもの被ばくを避けるための適切な対応が取られなかったなどとして当時、福島県内に住んでいた子どもとその親たちが国と県に賠償を求めた裁判で、2審の仙台高等裁判所は1審に続いて原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
原発事故が起きた当時、福島市や郡山市などに住んでいた子どもと、その親あわせて116人は、事故のあと子どもの被ばくを避けるための適切な対応が取られなかったことで、健康被害への不安を抱くなど精神的な苦痛を受けたとして国と県に1人あたり10万円の賠償を求めていました。
裁判では、▼『SPEEDI』と呼ばれるシステムで算出された放射性物質の拡散予測をただちに住民に公表すべきだったかや▼子どもたちをただちに集団避難させるべきだったかなどが争点となりました。
2審の判決で、仙台高等裁判所の石栗正子裁判長は、「『SPEEDI』の予測計算の結果は正確性が高いとは言いがたく、情報の有効性や今後の変化の可能性などを分析し評価したうえで、公表の時期や内容を判断する必要があり、裁量権の逸脱や乱用があったとは言えない」と指摘しました。
そのうえで、「集団避難を実施すべきだったと原告が主張する根拠とした法律や法令は、今回の事故のような被ばくの大きさや範囲が予測できない状況で、緊急の対策を必要とする場合にも妥当なものとして定められたものではない」などとして1審に続いて原告側の訴えを退けました。
判決のあとの会見で原告の1人、今野寿美雄さんは、「国や県の主張をなぞっただけのあきれ果てる判決だ。受け入れるわけにはいかず、上告して最後まで闘いたい」と話しました。
また、原告側の井戸謙一弁護士は、「大変残念な判決で、苦しい思いで闘ってきた原告のことを考えるとつらいものがある。1審に比べて中身に踏み込んだ判断だったが論理の過程に強引なこじつけや証拠のない認定が多くあった」などと述べました。