旧優生保護法訴訟 2審も国に賠償命じる 仙台高裁

旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして宮城県内の男性2人が国を訴えた裁判で、2審の仙台高等裁判所は憲法に違反するとして1審に続いて国に賠償を命じる判決を言い渡しました。

いずれも宮城県内に住む知的障害のある千葉広和さん(75)と80代の男性の2人は、それぞれ10代の頃に旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、国にそれぞれ3300万円の賠償を求めていました。
ことし3月、1審の仙台地方裁判所は旧優生保護法を憲法違反とした上で、国に対し、それぞれ1650万円の賠償を命じ、国が控訴していました。
25日の2審の判決で、仙台高等裁判所の小林久起裁判長は「旧優生保護法は憲法によって保障されている子どもを産み育てる自由などを侵害し、特定の疾患がある人に差別的な取り扱いをするもので憲法に違反する」などとして1審に続いて、1人あたり1650万円を支払うよう国に命じました。
また、国側が不法行為から20年が過ぎると、賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」が適用されると主張したことについて、裁判所は「国が長期間、優生思想の普及や優生手術の拡大を目的とした政策を継続したことで障害者に対する差別や偏見を正当化・固定化したため、原告らが損害賠償の権利を行使することは著しく困難だった。20年の経過で賠償を求める権利がなくなると主張することは法の正義・公平の観点からも権利の乱用にあたる」と指摘しました。
旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴える一連の裁判は、去年大阪高等裁判所が初めて国に賠償を命じて以降、訴えを認める判決が今回を含めて8件出ています。

【原告“やっと…”】
原告の1人で知的障害のある千葉広和さん(75)は「ここまでやっとたどり着いたという気持ちです。勝訴を心からうれしく思います。国が上告しないで、真の解決を手にしたいと願っています」と話していました。
また、もう1人の原告で80代の男性は「心からうれしかったです。待っていた甲斐があったと思います」と話していました。

【弁護団長“適切で画期的な判断”】
判決のあと、原告側が記者会見を開き、弁護団長を務める新里宏二弁護士は「やっと納得のできる判決で、感無量です。除斥期間が適用されようが、時効が適用されようが、国がひどい被害を与え、それを放置して、差別観念を醸成したことを踏まえて、損賠賠償を求める権利の消滅を国が主張すること自体が権利の乱用だと明確に述べていただいた。極めて適切に見た画期的な判断だ」と述べました。
そのうえで「今回の考え方があれば、この問題全体の解決に大きく踏み出すのではないか。国は上告を止め、現在、訴えを起こしているすべての被害者の救済に乗り出してほしい」と話していました。