新幹線車内で薬品漏れ 成分は硫酸の可能性 “禁止物周知を”

9日、仙台駅近くを走行していた東北新幹線の車内で乗客の手荷物から薬品が漏れて、この乗客を含む6人がやけどをするなどして病院に搬送されたトラブルで、消防が現場で調べたところ、硫酸の可能性がある成分が検出されていたことが消防への取材でわかりました。
薬品は通路にも広がっていて、警察は成分の分析を進めるとともに経緯を詳しく調べています。

9日正午ごろ、仙台駅付近を走行していた東京行きの東北新幹線「はやぶさ52号」の車内で、手荷物から薬品が漏れて、5歳の子どもとその両親、それに、薬品の持ち主で地質調査などを行う会社の社員のあわせて4人がやけどをしたほか、別の乗客など2人が体調不良を訴えて病院に搬送されました。
いずれも命に別状はないということです。
薬品は、会社員が仕事に使うためにペットボトルのような容器に入れて手荷物として持ち込んだもので、消防が現場で調べたところ、硫酸の可能性がある成分が検出されたことが消防への取材でわかりました。
会社員は薬品を座席の足元に置いていて、近くの乗客から漏れていると指摘を受けたあとにデッキに運んだということですが、通路にも広がっていて、けがをした子どもは薬品に足を滑らせて転び、尻にやけどをしたということです。
警察は薬品の成分の分析を進めるとともに、経緯を詳しく調べています。

【専門家“持ち込み禁止 改めて発信を”】
鉄道の安全対策に詳しい関西大学の安部誠治名誉教授は「走行中の新幹線の中で持ち込んでいた薬品が漏れて、複数の乗客が負傷したケースは非常に珍しい。仕事として薬品を運ぶ場合は、多くの人が利用する新幹線ではなく、自社の車や専用車などで運ぶことが適当だ。今回、漏れた原因を調べ、新幹線に持ち込むべきでない危険なものであれば、同じような会社などに対しても持ち込まないことなど、ルールを守るよう改めて呼びかける必要がある」と指摘しています。
また、同様のトラブルを防ぐための安全対策について、新幹線で手荷物検査を行うことはコストや運行の面で現実的ではないとしたうえで「鉄道事業者も持ち込みを禁止している危険物について駅構内にわかりやすく掲示するなど広報を強化するほか、利用する側も安全に利用するため自分の手荷物が持ち込んでいいものかどうかしっかり確認する必要がある」と話しています。

【JR東日本社長“改めて周知 警備犬配置も”】
当時の対応についてJR東日本の深澤祐二社長は、10日の定例会見で「今後、検証したいが、まず現場に駆けつけた車掌からの情報が運転士や指令に共有され、駅に停車したあと速やかに対応できたと思う」と述べました。
JR東日本は、列車内への危険物の持ち込みについて規則を設けていて、硫酸などは密閉した容器に入れ、破損するおそれのないようにした500ミリリットル以内のもの以外は禁止しています。
これについて深澤社長は「飛行機のような全員への手荷物検査は難しい」としたうえで、ポスターや構内放送を通じて改めて周知していくほか、今後、警備犬の配置なども検討する考えを示しました。