東北大学植物園もクラウドファンディング 標本維持へ資金を

資金が厳しくなり国立科学博物館でクラウドファンディングが進められるなか、仙台市にある東北大学の植物園でも、学術的に価値のある植物標本を管理する資金が危機的状況にあるとして、9月11日からクラウドファンディングを始めました。

8月、国立科学博物館が、光熱費の高騰などを受けて国内最大規模の動植物の標本や化石などのコレクションを収集・保管する資金が危機的な状況にあるとして、クラウドファンディングを開始するなど博物館施設での資金問題が明らかになりました。
こうした中、敷地のおよそ3分の2が国の天然記念物に指定され全国的にも珍しい、仙台市青葉区にある東北大学植物園でも、9月11日から同じようにクラウドファンディングを始めました。
この植物園では、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった植物学者・牧野富太郎が採取した植物など70万点ほどの貴重な植物標本を管理していて、こうした標本の保管庫をこれまで大学関係者の寄付金をもとに年間100万円ほどで管理してきました。
しかし、光熱費の高騰などを受けて寄付金による資金が枯渇して危機的状況になり、クラウドファンディングを始めたもので、15日朝までに、およそ630万円が集まり、当初の目標の400万円を突破したということです。
植物園は集まった資金で、標本がカビなどで劣化しないための除湿機の購入や、10万点を超える未整理の標本を台紙に貼るなどの作業を行う費用などに充てたいとしています。
東北大学植物園の牧雅之園長は「先人たちが苦労して集めてきたものを後世に引き渡すことが非常に重要だと考えていて、引き続き寄付をお願いしたい」と話していました。

【なぜクラウドファンディングを】
東北大学植物園は、もともとは江戸時代に仙台藩が防備のために厳重に管理していた山林の一部で、ほとんど人の手が加わらず、自然のままに残されていたことから、敷地のおよそ3分の2が国の天然記念物に指定されている全国的にも珍しい植物園として知られています。
この植物園が管理する植物標本は、およそ70万点にのぼり、歴史的、学術的にも貴重なものが多く、中には、現在放送されているNHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった植物学者・牧野富太郎が採取した植物や、新種と認められた際に、そのもとになった世界に一つしかない「基準標本」と呼ばれるものも保管されています。
これらの標本を管理し、維持するためには、細心の注意が必要で、植物園では標本を保管庫に持ち込む前に冷凍庫に入れて殺虫する防虫対策のほか、劣化の原因になるカビがはえないように除湿機を設置して湿度を下げる対策を行っています。
こうした作業を続けるためには光熱費がかかるほか、保管庫の除湿機は経年劣化で複数台が故障している上に、動いている除湿機もすべて古いもので、新しいものへの交換が急務となっています。
このほかにも、未整理で箱に入ったままの標本が10万点以上あり、こうした標本を整理するための人件費も工面しなければならないということです。
植物園では、40年ほど前に、大学関係者から寄せられた多額の寄付金を活用して、年間100万円ほどの維持費をやりくりしていましたが、早ければ今年度には資金が底をつくことになるということです。
こうした危機的状況になる前から、大学など各方面に支援を求めていたということですが、なかなか資金は集まらず、今回、クラウドファンディングに踏み切りました。
東北大学植物園の牧雅之園長は「こうした状況に陥ることは想定していましたが、やはりこのところの電気代の高騰などの問題で厳しくなってきた。除湿機もかなり古いもので、資金繰りが厳しく現状では交換もできません。クラウドファンディングを通して、植物標本に関心を持ってもらうとともに、永続的・安定的に標本を維持できるよう、多くの支援をいただければと思っています」と話していました。