名取に精神科病院の案で県“年内にも事業者候補を”

宮城県が進める病院の再編計画で名取市に新たに精神科病院を公募する案について、県は、年内にも事業者の候補を決めたいとしています。

宮城県の村井知事は、名取市にある県立精神医療センターを仙台市にある東北労災病院とともに、富谷市に設置する計画に関連し、県南部の医療提供体制を維持するためとして、名取市にある県高等看護学校の用地に新たに精神科病院を公募する考えを示しています。
4日夜、県庁で開かれた審議会で、県の担当者は、精神科医などで作る選定委員会で病床規模や診察内容、事業者の経営状況などを評価した上で、年内にも事業者の候補を決めたいという方針を示しました。
これに対して県精神科病院協会に所属する一部の委員は、県の計画とは逆に、県立精神医療センターを名取市内で建て替えた上で、富谷市で東北労災病院とともに設ける病院を新たに公募すべきだと主張しましたが県は「現実的ではない」として応じませんでした。
県は今後、公募の募集要項を策定し、事業者の決定に向けた手続きを始めることにしています。

【精神医療センターをめぐる経緯】
宮城県は医療機関を適正に配置するとして、おととし9月に示した計画が、名取市の「県立がんセンター」と仙台市の「仙台赤十字病院」を統合して名取市に設置するとともに、名取市の「県立精神医療センター」と仙台市の「東北労災病院」をそれぞれの経営主体を残したまま富谷市に設置するというものです。
このうち名取市の「県立精神医療センター」について、県は老朽化が激しいことや患者の高齢化で精神疾患以外の病気の人が増え、合併症への対応が困難だとして移転する場所を探していました。
そうした中で、ことし2月、富谷市への移転を含む案が専門家でつくる県の審議会で示されましたが委員から反対する意見が出されました。
反対の理由は、仙南地域の患者にとって富谷市は遠く、通院が困難で入院する場合はさらに負担がかかること、精神医療センターを中心に長年かけて築かれてきた訪問看護やグループホーム、それに作業所などの「地域包括ケア」の仕組みが失われかねないという懸念があることが挙げられました。
また、患者の家族や精神科医療の関係者などが計画の撤回を求め、県に要望や署名が出されるなど移転に反対する声が上がっています。
こうしたなか先月31日、専門家でつくる審議会の場に村井知事みずからが出席し、県南部で精神科の医療提供体制を維持するとして、外来や急性期の入院などの機能を持つ新たな民間の精神科病院を公募した上で名取市に設ける新たな案を示しました。
ただ、この案に対しても審議会の委員からは「経営が成り立つはずもなく、現実的ではない」とか「新たな案は認められない」といった反対意見が出ています。