宮城県美術館が改修工事で長期休館へ 休館中はデジタル鑑賞も

仙台市青葉区にある宮城県美術館は施設の老朽化に伴う大規模な改修工事のため、今月19日から長期にわたって休館します。
再開されるのは再来年度、令和7年度になる見込みです。

昭和56年に開館した宮城県美術館は明治以降の近現代美術や県出身の彫刻家、佐藤忠良の作品などおよそ7300点を所蔵し、おととしは年間14万人余りが利用しました。
建設から40年余りが経過し、施設の老朽化が進んだため、一時は移転・新築する計画も検討されましたが、美術関係者などから建物自体に文化的な価値があるなどと反対の声が上がり、現地で改修することになり、今月19日から休館します。
今回の改修で、照明やトイレなどの設備が更新されるほか、タイルがはがれて劣化した中庭などの床も修繕されます。
また、美術館の新たな魅力を生み出そうとふだんは公開していない収蔵庫に保管された美術作品を鑑賞できるようにするほか、子どもが自由に遊んだり、工作したりできるスペースを広げることにしています。
宮城県美術館・管理部の岡部康伸主幹は「新しい美術館は子どもからお年寄りまで幅広い世代の人に楽しんでもらえる施設にしていきたい」と話していました。
県美術館は、今年度中に改修工事が始まり、リニューアルオープンするのは再来年度、令和7年度になる見込みです。

【休館中はデジタル鑑賞】
宮城県美術館では休館中でも美術作品を楽しんでもらえるよう、一部の絵画をデジタル撮影してホームページで公開しているほか県内の図書館などで鑑賞してもらう取り組みを始めます。
対象となるのは、県美術館が所蔵する絵画30点で、美術館では特殊なスキャナーでデジタル撮影してホームページで公開しています。
公開されているのは、日本近代洋画の先駆者、高橋由一が描いた油絵、「宮城県庁門前図」や宮城県出身の彫刻家、佐藤忠良が描いた水彩画で、ロシア民話の絵本にも使われている「おおきなかぶ」の原画など30点です。
このうち10点は「フローティングギガビューワー」と呼ばれるデジタル技術を使って、空中に映し出された画面を指で操作して拡大しながら作品を鑑賞することができます。
作品の中には、強い光を当てることができないものもあり、この技術を活用することで繊細な筆遣いや絵の具の濃淡などを確認することができるということです。
この10点のデジタル画像については来月から仙台市泉区にある宮城県図書館にモニター装置が設置され、訪れた人が自由に鑑賞することができます。
また、デジタル撮影した一部の作品については原寸大のレプリカが県庁1階ロビーに展示され、希望があれば、小中学校などに出向いて子どもたちに鑑賞してもらうことにしています。
県生涯学習課の加藤純一課長補佐は「作品をデジタル化することで、ふだんは見られない細かい部分まで見ることができるので新しい鑑賞方法で作品に触れて欲しい」と話していました。