“風力発電施設の土地使用差し止めを” 加美町住民が提訴

加美町で建設中の風力発電施設をめぐり、町が事業者と交わした土地利用の契約は事故などが起きた際に十分な費用を事業者に請求できず、住民の安全な生活を守ることが困難になるなどとして地元の住民グループが町長に対し、土地使用の差し止めを求める訴えを起こしました。

訴えを起こしたのは、加美町の住民15人です。
加美町では、来年4月の運転開始を目指して10基の風車の建設が進められていますが、訴えのなかで3年前、町が4基分の風車の建設用敷地として事業者に町有地を貸し付けた契約では、施設で災害や事故などが起きた場合でも事業者に十分な費用を請求できないおそれがあり、住民の安心・安全な生活を守ることが困難になるとしています。
また、地方自治法に違反し、議会の議決を通さずに契約が事業者と結ばれているとして猪股洋文町長に対し、土地使用の差し止めを求めています。
記者会見を開いた原告の1人、佐澤史郎さん(77)は「契約書の内容は法律の素人の私が見てもおかしいと思えるもので、将来の町のことを考えて提訴しました」と話していました。
この施設をめぐって、町は住民の不安を払拭するため事故や災害の際に事業者が責任ある対応を行うことを定めた協定書を先月交わしていて、加美町総務課は「訴状の内容は確認中だが、住民の間で施設に不安や疑問があることは承知しており、今後も解消に努めていきたい」としています。

【風力発電施設など 撤退や見直しも】
県内の大規模な風力発電など再生可能エネルギー事業を巡っては、地域住民からの反対を受けて事業者が撤退したり、計画の見直しを余儀なくされたりするケースが相次いでいます。
このうち、丸森町南部の山間部では、東京の事業者が最大15基の風車の建設を目指して環境への影響を評価する手続きを始め、住民への説明を行ってきましたが先月、計画を中止しました。
また、大崎市と栗原市にまたがる「六角牧場」では、札幌市の事業者が17基の風車の建設を目指していましたが、計画の見直しを余儀なくされているほか、加美町でも去年12月、別の事業者が風力発電事業から撤退しています。
いずれも自然環境などへの影響を懸念する住民の反対運動が行われていました。
一方、県は、風車や太陽光パネルなど再生可能エネルギーの発電施設を森林以外の土地で建設するよう促すため、森林を開発して発電施設を新たに設ける事業者に独自の税を課す制度を来年度からの導入を目指していて、今月開かれる県議会に関連する条例案を提出することにしています。