医療的ケア必要な全世代を受け入れ 仙台泉区に新施設

人工呼吸器やたんの吸引など「医療的ケア」が必要で、子どもだけでなく、すべての世代を対象に受け入れる民間の施設が、新たに仙台市に開設されました。

厚生労働省によりますと、人工呼吸器やたんの吸引など「医療的ケア」が必要な子どもたちは、おととし6月時点で全国で2万人を超えると推計され、支援態勢の充実が進められている一方で、18歳を超えたり学校を卒業したりしたあと、支援を受けられる生活介護事業所や通所施設をどう確保していくのか、保護者などから不安の声が出ているということです。
こうしたなか、今月1日、仙台市泉区に医療的ケアが必要な人たちのための施設、「あいの実ストロベリー」が開設され、子どもだけでなく、すべての世代を対象に午前9時から午後6時までの日帰りのほか、短時間の受け入れも始めました。
また、施設では診療所も設置し、週2回、医師が勤務して利用者にカルテを作ったり、緊急時に診察を行ったりするということです。
3日は、16人の利用者が訪れ、施設のスタッフや看護師が利用者のケアを行っていました。
施設を利用した23歳の息子の母親は、「入所施設を利用したくても空きなくてが困ることが多かったので助かります」と話していました。
また、10歳の娘を育てる母親は、「長い時間預けられるので、その間に別の兄弟の世話をしたい。きれいな施設なので、娘も楽しく過ごせると思います」と話していました。
今後は、県や仙台市からの認定を受け、宿泊での受け入れも実現したいとしています。
施設を開設した社会福祉法人「あいの実」の久保潤一郎専務理事は「この施設が利用者と家族の生活の質を向上させるものになればと思いますし、医療的ケアが必要な人のことを社会に知ってもらう機会になってほしい」と話していました。

【環境整備や費用が施設開設のハードルに】
宮城県によりますと、県内で医療的ケアが必要な人を短期間で受け入れる入所施設は11か所ある一方で、県内で医療的ケアが必要な人たちは2016年時点でおよそ2000人いて、その受け皿の確保が課題となっています。
厚生労働省は、民間団体などが福祉施設をつくる際に活用できる補助制度を設けていて、医療的ケアが必要な人を受け入れている施設の開設にもこの制度の活用が可能で、運用方法は各自治体に委ねられています。
このうち、仙台市では、市内の福祉施設の需給状況を調査した上で、補助が必要と判断した年のみ、対象の区を指定して助成する方針を取っています。
今回の施設については、開設を決めた年には補助金の募集が行われていなかったため、この法人では独自に金融機関から借り入れを行ったということです。
「あいの実」の久保潤一郎専務理事は「施設を作りたくても、経済的に大きな決断ができる団体は少ないと思います。重点的に必要だと言われている事業なので、もう少し、国や行政からの支援があれば、全国に同じような施設ができやすくなると思います」と話していました。