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支援が途絶える… コロナ禍に翻弄されるアスリート

2021-02-03 午後 05:50

スポーツ界に驚きのニュースが飛び込んできました。

体操の内村航平選手とスポンサー契約を結んでいた外食チェーンが、契約の継続を断念したのです。企業側も「苦渋の決断」と話すこの決定の理由は「コロナ禍における想定をはるかに上回る業績の悪化」。東京オリンピック・パラリンピックまで半年というタイミングで、選手にとって欠かせない「支援」が途切れる事態が起きています。

二人のフェンシング選手に取材をすると、彼女たちが答えたのは支援を断たれることへの困惑、そして今なお終わりが見えないコロナ禍で、スポーツに打ち込むことへの葛藤でした。

迫る支援打ち切り

フェンシング女子サーブルで東京オリンピック出場を目指す、木村毬乃(まりの)選手・27歳。所属先の企業との契約が、今年3月で終了することが決まっています。これまでは競技にかかる費用を企業に負担してもらってきましたが、4月以降はその支援を続けられないと告げられました。その金額は、年間8回の海外遠征費350万円と道具費50万円。個人で負担するには大きな金額です。

 

 

「どんなに頑張りたい気持ちがあっても、やはり企業に支えていただけないと競技生活を続けられません」

 

3月にはオリンピックの代表選考にも関わる大会が海外で予定されていましたが、その遠征費も自身で集めなければならなくなりました。この費用はなんとしても集め大会に出ると言う木村選手ですが、それ以降の競技生活には率直に不安の言葉を口にしました。

 

 

「4月以降に支援してくれる企業を探せなかったら、正直、選手活動を続けるのは厳しいと思っています」

競技さえ続けられたら

オリンピックを前に、スポンサー探しに奔走するアスリートたち。アスリートにスポンサー企業を紹介する会社には、企業から契約解除された選手などからの相談が月に40件ほど寄せられています。これは去年の2倍の件数です。

コロナ禍が企業の業績に影響し、支援の原資が少なくなっていることに加え、世界中で大会の中止が相次ぎ「宣伝効果」や「企業イメージの向上」といったメリットを、企業も感じづらくなっているのではないか。この紹介会社ではそう考えています。

 

 

木村選手もこの紹介会社に相談に訪れました。

 

「競技が続けさえできれば、本当にこちらから条件はないんです。どんなやり方でも支援していただけたらと思っています」

 

しかし、支援打ち切りという事態を前に、競技を続けられない未来が現実的なものに感じていると言います。

 

 

「アスリートではない方々もリストラされたりしている世の中ですから、仕方がないことですよね。支援企業が見つからなかったら、“それまでだ”という覚悟はできています」

コロナ禍 気になる世間の目

スポンサーとの契約が続いている選手の中にも、支援を受けることへのためらいが生まれています。

 

「オリンピックでメダルを取ります、ということが企業さんにとっても支えるモチベーションになると思うんです。けど…」

 

 

そう話すのは、フェンシング女子フルーレの狩野愛巳(みなみ)選手・23歳。所属先の食品メーカーのほか、5つの中小企業と契約を結んでいます。大会開催へ不安の声も聞かれる中でスポンサー企業が世の中からどのようにみられるのか、その影響を気にしています。

 

NHKが1月に行った世論調査では、東京オリンピック・パラリンピックについて、

「開催すべき」が16%

「中止すべき」は38%

「さらに延期すべき」は39%

という結果が出ました。「開催すべき」という意見は去年12月から11ポイント低下しています。

 

「本当に大会が開催されるのかもわからないですし、世論がスポーツはしない方がいいとネガティブなイメージを持ち始めている中で、スポーツを応援している会社は世の中にどう映ってしまうんだろう。それが心配です」

 

狩野選手にとって、スポンサー企業は資金面だけでなく、精神面でも支えになってきました。

 

 

4年前、狩野選手は右手首を負傷。手術後も感覚が戻らず引退を考えるほどでした。その苦しい時期に支えられたのが、企業の社員からの応援の言葉でした。リハビリを乗り越えて競技へ復帰する後押しになったと言います。

 

「私自身、もうフェンシングをやめた方がいいんじゃないかと思っていました。そんな時、『あなたはこれからなんだから頑張りな』って、すごく応援してくださった。微力ではありますけど、競技を通して恩返しをしたいんです」

支えにどう報いるか 揺らぐ思い

かけがえのない企業からの支援。その期待に応えようと練習を続けてきた狩野選手。しかしその思いは今揺らいでいます。

1月初め。リモートでスポンサー企業の社長に年始の挨拶をした時、社長から今年の抱負を聞かれました。

 

 

「今年は…。オリンピックがまだどうなるかわからない状態で…」

 

アスリートとして、今年の目標をはっきりと答えることができませんでした。

 

「周りの目はもちろんですが、私たちアスリート自身にも気まずい、申し訳ないと言う気持ちがあります。オリンピックに出ることも、“たかが夢でしょ?”と言われたら、それまでだと思うので。今、世の中にスポーツの価値を理解してもらうのはすごく難しい」

 

支えてくれた人たちに報いるために、懸命に続けてきた努力を披露する舞台、オリンピック。開催に対して厳しい声も目立ち始めている中、狩野選手は言葉を選びながら、こう答えました。

 

 

「アスリートとしては、オリンピックはもちろんやりたいです。でも世界のことを考えると、やらない方がいいんじゃないかとか…。複雑な気持ちです」

 

オリンピックを目指してきた選手の努力や思いまで、否定されることはないように。

選手たちが競技を続けること自体が出来なくなることがないように。

そう願わずにはいられないほど、このコロナ禍でアスリートを取り巻く環境は深刻さを増しています。

 

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