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特集 初優勝の大栄翔 突き押しを貫き “自信が確信に”

相撲 2021年1月25日(月) 午後0:10

「自分の相撲を取りきるしかない。悔いの無いように思いきり迷いなくいった」

 

 

初優勝がかかった大一番。大栄翔はその言葉通り、重圧をみじんも感じさせなかった。磨いてきた回転のいい突き押しでどんどん前に出る。四つ相撲の実力者、隠岐の海をあっという間に突き出した。誰もが文句の付けようがない初優勝だったと言える。初日から、朝乃山、貴景勝、正代と三大関を撃破。

 

「前に出ているので迷いなくいける。自信になる」

 

そのまま三役力士全員を破って初日から8連勝。途中2敗を喫したとはいえ、連敗せず、勢いは千秋楽まで止まらなかった。今場所は回転のいい突き押しの威力が際立った大栄翔。実は強豪の埼玉栄高校に在籍していたアマチュア時代までは四つ相撲。左四つが得意な選手だった。

 

しかし、現在の相撲界では決して上背があるとは言えない身長1メートル82センチ。入門後、師匠の追手風親方に言われたという。「そんなに背は高くないんだから四つでは通用しない。突き押しで勝負しろ」

 

 

ここから突き押しに徹するようになった大栄翔。左右のバランスが取れた回転のいい突き押しを求めて鉄砲柱と稽古相手に向き合い続けた。

「どんな相手でも回転良く突いていくこと、この積み重ねがようやく身になって来た」

 

大栄翔の相撲は、八角理事長の現役時代、北勝海の相撲に似ていると評される。今場所の大栄翔について八角理事長は高評価だ。

 

 

「自分より突き放しが強い気がする」一方で「毎場所、この勢いの相撲、同じ立ち合いを続けるのは難しい」とも話した。

微妙な歯車が狂えば、一気に調子を崩すこともある押し相撲の難しさを経験者ならでの言い回しで表現した。さらに「俺は差しても相撲が取れたから」

 

 

現役時代の北勝海は大関昇進までは突き押し一辺倒だったが、上位としての責任を果たすため安定感を求めて四つ相撲も磨いたと言う。北勝海は横綱に昇進、8回の優勝を果たした。

 

 

今は突き押し一辺倒の大栄翔。来場所以降は三役復帰、そして次の大関候補の1人としても期待されるようになる。今後はどんな相撲を目指すのかが気になる。千秋楽のあと大栄翔ははっきりとその答えを語った。

「回転良く攻められたことは自信になりましたし、こういった相撲を続けて行こうという確信になりました」

 

 

”自信が確信に”日米で活躍してきた松坂大輔投手の新人時代と同じ言葉を使い突き押しを貫く覚悟を示した大栄翔。まずは次の場所で、どんな相撲を見せてくれるのか注目したい。

この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者

鎌田 崇央 記者

平成14年NHK入局

さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目

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