ストーリーバスケットボール

スポーツ×ヒューマン編集長後記 vol.2    「キャプテンはいつも」

2021-01-25 午前 10:00

BS1で放送中の「スポーツ×ヒューマン」。

その編集長を務めるプロデューサーが番組作りのウラ話をつづる編集長後記「Some might say..」。

今回は、Bリーグ川崎の「キャプテン」篠山竜青選手の特集回、タイトルを決めるまでの紆余曲折を明かします。

スポーツ×ヒューマン 選「俺がコートを熱くする バスケットボール 篠山竜青」

BS1 1月22日 夜11時

総合 1月26日(25日深夜) 午前1時43分

「生まれついての」キャプテン

キャプテンはいつも悩んでいる。ドキュメンタリー番組の中のキャプテンは特に。 悩みのかたちは様々だ。自分なりのキャプテン像を探すもの、キャプテンとしての役割と選手としてのエゴの狭間で苦しむもの。 自らの成長と集団としての結果の両方を追いかけるのは難しいし、背中を見せるだけでは務まらないときもある。

 

バスケットボール、川崎ブレイブサンダースの篠山竜青もキャプテンだ。それも「生まれついてのと」言っていいほどの。

彼の周りには自然と人が集まり、熱気が生まれる。チームが優勝を争うなかでの大ケガ。苛立って当たり前の苦しいリハビリ。でも篠山は流れてくるHYの歌にハモってみせる。カメラに見切れたチーム関係者が笑顔を見せる。 コロナの苦境でも誰よりも声を出す。天才ではない。でも泥臭く食らいつくディフェンスはチームの温度を上げる。

 

印象的なシーンがある。日本代表で共に戦う富樫勇樹が篠山を語ったインタビュー。

「キャプテンといえば篠山という感じ。その背中を見てプレイしている行動でも言葉でも引っ張ってくれる。」

Bリーグではライバル。日本代表でも同じポジションで競う富樫が、てらいなくリスペクトを口にする。その「当たり前さ」が、篠山の魅力を雄弁に語る。 (リスペクトするライバルへの思いを率直に語るとき、その選手の素敵さも伝わってくる。)

タイトルを決めるのは難しい…

 

そんなキャプテン篠山にも悩みはある。それはチームを頂点に導けないこと。自分には何か足りないものがあるのではないか。自分のスタイルは古いのではないか。 田臥勇太にあって自分に無いものは何か。篠山のスポーツ×ヒューマン、当初タイトルは「俺がコートを支配する」だった。自らのパスで、敵も味方もコート全体を支配するような選手になりたい、そんな事を篠山が語っていたからだ。生かすというよりは、支配する。それくらいの選手に、キャプテンに変わりたい。

 

しかし制作が進む中で、そのタイトルに違和感を覚えるようになる。コートを支配する。 その「感じ」が篠山の個性にはふさわしくないように思えてきた。 ドキュメンタリーは取材対象の「自分探し」を共同で行う作業。この選手は何を目指し、何を大切にして生きているのか。 その「芯」のようなものを、取材やインタビューから探す。(頼まれもしないのに。)

 時にそれは、本人がまだ言語化していない思いを探り、本人の言葉さえも疑っていく過程となる。 そして制作者自身の思いも、物語に共鳴していく。アスリートの悩みのかたち、それは突き詰められた形であればあるほど、普遍性を持つ。キャプテン篠山の悩みを考えていたはずが、プロデューサー自らの管理職としての悩みを考えていた、そんなこともある。

 

 

キャプテンや指導者、管理職を船に例えるならば、そこにはある種の「船速」や「定員」があるように思える。 とても速く進むけれど、あまり多くの人は乗れないモーターボートのような人もいる。 ゆっくり進む帆船のように、様々な人を受け入れて進む人もいる。 短期間のレースに向いた船。遠洋航海のように進む船。人の器、のようなもの。それをすぐに変えることは難しく、持って生まれたものもあり、人生の長い道を歩むなかで形作られていくもの。

だからキャプテンは悩む。 ああ、自分の船がもっと違っていたら、チームメイトと良い場所へたどり着けるのではないかと。

本当に船長は俺でいいのか、と、俺の船でいいのか、と。

ファン、仲間が語る篠山竜青

篠山の船があるとしたら、どんな船だろう。そんなことを想像しながら番組を作った。 ファンや仲間の声を、できるだけ多く取り上げようと考えた。

 

「ファンもチームも全部引っ張ってくれる存在」「みんなを元気にしてくれる」

「茶目っ気もあり、芯も通っているところが、みんながついていくところ、僕らもついていきたい」

「チームを勝たせようっていうそういう気持ちが全面に出ている」     

「チームにとっても個人にとってもあの人の存在っていうのは大きいと思います」

 

みな笑顔で篠山のことを語る。そして篠山も語る。そのポリシーを情熱を込めて。

「下向いたって、何も落ちてない。バスケットのリング上に付いてますし、常にリング見てプレイしないと」

 

番組タイトルは「俺がコートを熱くする」となった。

 

NHKスポーツTwitterでは番組イメージイラストを投稿中。日付は昨年の本放送時のもの。

 

スポーツ×ヒューマン 番組HPはこちら

この記事を書いた人

前田達也 編集長

1971年生まれ。「ミラクルボディ」「土曜スポーツタイム」「サンデースポーツ」などの取材・制作を経て「スポーツ×ヒューマン」編集長。芋焼酎と現代詩とリングスの味方。薄毛の進行が止まらない日々。

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