ストーリー相撲

遅咲きの35歳 返り入幕の明瀬山 発言は控えめも存在感は・・・

2021-01-14 午後 0:30

およそ1分の長い相撲。勝ち名乗りを受けたのは、返り入幕の35歳、明瀬山(前頭16枚目)だった。「とてもうれしいです」取組後は笑顔を見せながら、控えめに4連勝を喜んだ。相手は新入幕の24歳、翠富士(前頭14枚目)だった。体重は明瀬山が183キロ、翠富士が114キロで差は70キロ近く。ベテランと若手。返り入幕と新入幕。巨漢と小兵。正反対の2人が相まみえるのも、体重無差別の大相撲ならではのだいご味だろう。

 

 

「(相手の得意技)肩すかしが来ないようにと」そう取組を振り返った明瀬山。突き放そうとする相手を冷静に見て、右の下手を取ると左の差し手をこじ入れ、相手が何も出来ない万全の態勢を築いた。そこから1歩、また1歩と前に出る。今にも「ズシン、ズシン」と聞こえてきそうな重みのある寄りで、4つ目の白星を手にした。

 

 

3場所続けて両横綱が初日から不在の今場所。「綱とり」の貴景勝と「角番」の正代と朝乃山の大関3人が話題の中心となるはずだった。ところが、ふたを開けてみると貴景勝は初日からまさかの4連敗。角番の2人も序盤から黒星を喫するなど低空飛行だ。そんな混沌とした場所での4連勝。明瀬山の存在感はいやおうなしに高まってくる。

 

ただ、その土俵人生は順風満帆ではなかった。名門・日大から鳴り物入りで角界に入り、巨体を生かした寄りを武器に活躍が期待されたが、腰のケガに苦しみ、新入幕までに要した場所は48場所。さらに、わずか1場所で幕内を陥落、今場所戻るまで実に28場所、5年近くを要した。返り入幕としては歴代4位のスロー記録だった。

 

だからこそか。その発言は常に控えめだ。好調の要因を問われても「特には何もしていないので・・」。優勝争いを意識するかとの問いには「そんなん全然ですよ。けがしないように、だけ」。思わず、近くにいた安治川親方(元関脇・安美錦)が「優勝宣言しろよ」とちゃかしたほどだ。

 

たしかに場所はまだ4日目。優勝争いなど、まだ先の先ではある。しかし、頭をよぎるのは、ちょうど1年前の初場所で優勝をかっさらった「幕尻」の徳勝龍のこと。確か、あのとき、徳勝龍も終盤まで全く欲がなかった。綱とりの大関が初日から4連敗を喫するなど、思いもよらないことが起きるのが大相撲のだいご味。まだまだ序盤といいながらも、遅咲きの35歳が気になってしかたがない。       

 

 

この記事を書いた人

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小野 慎吾 記者

平成28年NHK入局。岐阜局を経て、2019年8月からスポーツニュース部で格闘技(大相撲、ボクシングなど)を担当。前職はスポーツ紙記者。

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