ストーリーラグビー

実況アナは見た 2つの壁を乗り越えてつかんだ大学日本一

2021-01-14 午後 07:20

漆黒のジャージーの選手たちに胴上げされる天理大学の小松監督。就任26年目でつかんだ至福の瞬間でした。

 

小松 監督

(優勝の瞬間は)日本一だと思いました。めちゃくちゃうれしいです。

 

勝っても負けてもいつでも冷静沈着な指揮官の表情が崩れたのを初めて見ました。

 

チャンスは、これまで2回。48回大会は、帝京大学に15対12。おととしの55回大会は、明治大学に22対17。いずれもあと1歩のところまで相手を追い詰めながら、関東の大学の壁を越えられませんでした。そして、去年は、準決勝で早稲田大学に52対14の大敗。

 

「あれだけ、うちを分析してくるとは・・・。自分たちに甘さがあった。」小松監督は、試合後の会見では、こう漏らしていました。

小松 監督

 

今回は、そういうことを前提に戦うということ。甘かったと言ったのは、相手の分析力を含めて関東と関西の差を感じたので、今度は、同じような感想にならないように、しっかり準備して実力を出し切って、結果どうなるかという試合をしたい。

 

例年、春や夏に関東のチームとの手合わせができて、そこで、力関係を把握できたり、チームの課題を見つけることができたりしますが、新型コロナの影響で、今年はそれがかなわず。そして・・・。

 

8月12日、部員1人の新型コロナ感染が発覚。その後、部員62人の集団感染となり、およそ1カ月の活動休止に。想像もしてなかった、もうひとつの壁が立ちはだかりました。

 

松岡 主将

活動休止中、部員全員が我慢してくれて、チーム全体として乗り越えることができた。また、今年は自分たちがこれだけ応援されているんだということをより実感できたのが、ものすごくプラスになった。普段、形にして応援されていることはあまりないが、今年は手紙や応援動画などが、とても多く寄せられた。

 

活動再開して、ラグビーが素晴らしい環境でできる事は自分たちだけの力じゃなくて、監督や周りのスタッフ、他サポートしてくださる方々のおかげだと感じられた。そういう方々に恩返しするのは日本一しかないと。全員が本気で狙っている。勝ちに行く意識が、ものすごくチーム全体から感じられる。

 

コロナ禍で気付かされたことが、結果、チームの結束力を強めることになりました。

 

11日の決勝。試合開始早々から、こだわってきたディフェンスの圧力からのターンオーバーでチャンスを作り、トライを量産。早稲田大学の得意の展開ラグビーを封じ込め、終始、試合のペースを握り、終わってみれば決勝では史上最多の55得点での勝利。

 

見事に、3度目の挑戦で、関東の大学の壁を突き破りました。

 

小松 監督

決勝進出していたのも同志社だけ。関西で2校目になりたい思いだった。天理がそこにたどり着きたい。ハードルが高い思いはあった。今日、同志社に次ぐ2校目になれてうれしい。関西の大学でも優勝できる。関西の仲間にとって励みになる。

 

目標にもなる。関西の学生にも優勝できるとわかってもらって、関西のレベルが上がることを期待したい。

 

来シーズン以降、大学ラグビー界の勢力図がどのように変化していくのかも、今から楽しみでなりません。

 

3連覇した同志社大学以来36シーズンぶりの関西勢の優勝。そして、コロナ禍という予期せぬ事態を乗り越えての優勝、その天理大学の初優勝で幕を閉じた今シーズンの大学ラグビー。

 

コロナ禍で、試合への出場辞退を余儀なくされたチーム、十分な準備ができないまま、試合に臨まざるを得なかったチーム、その他のチームも、感染対策の徹底のために、窮屈な日々を過ごしてきました。

 

最後に、決勝で敗れた早稲田大学の丸尾主将のコメントをご紹介します。

 

丸尾 主将

この一年、苦しいと思ったことはなかった。ラグビーができるだけで幸せと思っていた。対抗戦、選手権と無事、終われてよかった。幸せでした。関係者の方々、全国のラグビー部員の皆さん、医療従事者の人とか、全ての人に感謝してる。いつか、この経験があったから前に進めたと思える人生にしたい。

 

心の底から、そう願うばかりです。

この記事を書いた人

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伊藤 慶太 アナウンサー

平成8年NHK入局。

出身地の秋田には、全国最多15回の優勝を誇る秋田工の存在があり、ラグビーに興味を持つことに。

これまで、大学、日本選手権での実況やW杯では、2015年、2019年大会を担当。

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