特集 大鵬の孫 新十両 王鵬 期待と重圧の中で

大相撲の新十両、王鵬は「納谷」(なや)の名前でご存じの方も多いかと思いますが、昭和の大横綱 大鵬の孫です。おじいさんから1文字もらい、しこ名を「王鵬」に改めました。将来を期待される20歳が、初場所では、関取としての土俵に挑みます。
大鵬の生まれ故郷、北海道弟子屈町。王鵬は祖父の偉業を紹介した「大鵬記念館」を訪れました。
一番最初に相撲が、格好いいなと思ったのはおじいちゃんなので憧れが強いです。
32回の優勝を果たした昭和の大横綱 大鵬。「巨人・大鵬・卵焼き」と言われるほどの人気で社会現象になりました。祖父から恵まれた体を受け継いだ王鵬。身長1メートル91センチ、およそ180キロの体格を生かした押し相撲で将来を期待されています。
しかし、その期待の大きさに苦しんだ時期がありました。3年前、17歳で入門したときでした。記者からの質問は、多くが「大鵬さんの・・・」「大鵬さんは・・・」「大鵬親方と・・・」必ずついてまわる祖父の名前を意識せざるを得ませんでした。
注目されながらも、思うように成績を残せません。同学年のライバルが次々に関取となる中、幕下で足踏みを続けていました。
ちょっと焦りはあったかもしれないですね。周りから見たら(関取に)上がって当たり前って思われていて、なんだたいしたことないなとは、絶対、思われたくなくて。
偉大な祖父の重み。王鵬は自分に何が足りないか悩み続けました。
師匠に指摘されたのは「立ち合い」。立ち後れることが多く突き押しの圧力を伝えきれていなかったのです。立ち合いでどれだけ鋭く踏み込めるか。繰り返し体にしみ込ませました。
幕下筆頭で迎えた先場所。鋭い踏み込みと突き押しで白星を重ねました。自信あふれる相撲で 6勝1敗と勝ち越し。十両昇進を果たしたのです。
あ、これで通用するなっていうか、本当に自信になりましたね。
昇進が決まりしこ名を「王鵬」に改めた日、祖父の墓に報告に来ました。大横綱のひと文字を受け継ぎ、高まる期待をみずからの力に変えていきます。
期待以上のことをしていかないといけないなと思います、王鵬いいな、何かいいなって思ってもらえるようにみんなが楽しめるような相撲を取れたらいいなと思っています。
王鵬の同学年では、同じ高校で幕内上位の琴勝峰や元横綱 朝青龍のおい豊昇龍が活躍しています。王鵬も加わり、新たな世代の台頭から目が離せません。
この記事を書いた人

清水 瑶平 記者
平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。