ストーリー競馬

小説家 早見和真さんが見た 2020年の競馬

2020-12-24 午後 01:10

著書『ザ・ロイヤルファミリー』で競馬界の人間ドラマを描いた小説家 早見和真さん。世紀の一戦と言われた「ジャパンカップ」(11月29日開催)、さらには2020年の競馬について聞きました。

小説では描けない現実 ジャパンカップは『ギフト』

早見 和真 さん

 

アーモンドアイ(1番人気)、コントレイル(2番人気)、デアリングタクト(3番人気)の「三冠馬」3頭が出走し、その3頭が人気順に1着から3着を占めた「ジャパンカップ」。早見さんの感想は?

みんなの「こうあったらいいな」という願望があったとしたら、本当にその通りのレースだったと思います。まさに「出来すぎ」だと。もし僕が小説で書いたら「ちゃんちゃらおかしい」と言われるようなことが東京競馬場で実際に起きて、やはり震えるぐらい感動しました。

 

ジャパンカップは、あえてクサイ言い方をするとしたら「ギフト」だったと思うんです。競馬界はことし歴史を分断させなかった。早い段階で無観客での開催を決めて、一つのレースも中断しなかった。1日でも、1レースでも後回しにしたり、いれこにしたりしていたら、三冠馬は生まれていなかったかもしれない。

 

僕は「やり続けた」ということに大きな意味を感じています。そしてそれに対するご褒美が、競馬界にも僕らファンにも降り注いだ瞬間だったのではないかと思っています。ことしの11月29日は。

競馬が新たなファンも惹きつけた “奇跡の一年”

 

なぜ2020年に競馬でこんなことが起きたと思いますか?

 

本音をいえば偶然なんだと思います。ですが、ファンが逃げなかったことは確かです。競馬がステイホーム中のテレビ観戦と親和性が高い競技だと知りました。予想という行為も含めて、自宅で熱中しやすい競技であると。


インターネットで馬券を買うことにまだ敷居があったなかで、ことしは全競馬ファンが家にいざるを得なかった。

 

さらに、競馬に見向きもしなかった人たちも「何かやっているな」と思う機会が多かったと思うんです。一部の人のモノだった競馬が、平たくみんなのモノになった1年だった、という見え方が僕はしています。ライトなファンの人たちが見て楽しめるレースが本当にたくさんあったんですよね。三冠レースに限らず、ジャパンカップに限らず。本当に奇跡の一年だったんじゃないでしょうか、競馬界にとっては。

競馬の魅力は「継承」 10年後、20年後にも花開く

 

著書「ザ・ロイヤルファミリー」では「次世代への継承」がテーマになっています。2020年の競馬が継承していくものは?

 

僕は20年前に競馬を始めて、20年前のレースが記憶の中に鮮明にあります。ことし競馬を始めた人がいたとしたら、新鮮な喜びをもって(ジャパンカップで引退した)アーモンドアイの子どもたちを迎え入れるのだと思います。たかだか2、3年後には、あの時のジャパンカップで見た名馬の子どもに出会える。それが競馬の大きな魅力だと僕は思うので。


もう一つ、無観客で開催し続けたことも「継承」だったと思います。いろんなスポーツ、エンターテインメントの歴史が分断された2020年において、競馬はやり続けることができた。ファンが会場に駆けつけなくてもやれた「稀有(けう)な競技」。幸運でしたよね、競馬界は。ここで途切れなかったことの意味は、10年後、20年後に花開くんじゃないかと僕は本気で思っています。

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