特集 あの羽生結弦選手も「フラワースケーター」だった!花束を拾う子どもたちの舞台裏

氷上のスケーターが演技を終えた瞬間、大歓声とともに一斉にリンクに投げ込まれる花束。感動の瞬間ですよね。ところで、あの花束を拾い集める子どもたちの姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。
その名は“フラワースケーター(フラワーガール)”。文字通り、花束を拾う子どものスケーターです。でもいったいどんな子たちがどんな仕事をしているんでしょう。
そこで今回、謎に包まれた実態を探るべく、東京都スケート連盟フラワースケーター担当の志尾佳津子さんに緊急取材。「フラワースケーターになる条件は?」「リンク上でやってはいけないNG行動は?」などなど気になるコトを聞いちゃいました!
Q どんな子どもがフラワースケーターに選ばれるの?
A まず、大会が開催される地域のスケート連盟に登録していることが第一条件です。さらに、各都道府県の連盟によってそれぞれ条件が決められています。
東京都スケート連盟の場合は、連盟に選手登録していて、全日本選手権の地方予選のノービス女子のA(11歳以上12歳以下でシングル4級以上)とB(9歳以上10歳以下でシングル3級以上)でそれぞれ1位〜6位に入賞していることが必要です。この12名だけが、フラワースケーターとしてリンクに立つことができるのです。
また、連盟によっては、男子も対象になっているそうです。
Q フラワースケーターは、スケートを習う子どもにとってどんな存在?
A とても人気です。目の前で一流のスケーターを見られますし、トップスケーターを目指す子どもたちにとっては、フラワースケーターになることが一つの目標になっていて、いわば登竜門のような存在になっていますね。フラワースケーターになるには良い成績を残さないといけないので、意識の高い子どもや保護者が多いです。
Q フラワースケーターの仕事とは?
A 選手たちに寄せられた花束やプレゼントを拾い集めることですが、かわいらしく癒しを与えてくれる見た目に反して、実際は結構大変なんです…。花束やプレゼント以外にも、選手の衣装や髪飾りの落下物を拾いに行くときもあるのですが、演技が終ってから大体2~3分しか時間が与えられていません。羽生選手のような人気選手の後は拾う数が膨大で、なおさら急いで回収しなくてはなりません。拾うことに夢中になって、フラワースケーター同士がぶつからないよう、事前に拾うエリアや滑るコースを決めたりしているんですよ。また、次の選手の練習を妨げないように、戻る際にはリンクの真ん中を通らないよう指導しています。
また、拾うだけでなく、大会によっては、旗を持ってリンク上を滑る「フラッグスケーター」を務めたり、エキシビションに選手たちとともに出場したりもします。
Q おそろいの衣装は誰がどうやって用意するの?
A 大会を主催する連盟が用意します。もちろん衣装にかかる費用も負担しますよ。私のような連盟のフラワースケーター担当者がデザインを決めていて、衣装屋さんと相談をしながら、大会の開催時期に合わせて、例えば春なら桜など、季節感を大事にして決めます。
当たり前ですが、選手の衣装より目立たないことが大事ですね。
Q フラワースケーターがやってはいけないNG行動は?
A 競技大会中は選手と一切接触禁止。写真や握手を求めたり声をかけたりすることは、選手の集中の妨げになりますから。ただ、選手側から声をかけられた場合は、もちろん応対して大丈夫ですよ。
あとは待機中に居眠りや会話も必要ではない限り禁止です。
公式に決まっているわけではないですが、目立つような行為は一通りNGですね。
Q フラワースケーターに休憩時間はあるの?
A ありますが、製氷作業が行われるタイミングなど、休憩時間というより隙間時間といった感じです。その間に、連盟が用意したお弁当を食べたりします。競技が始まるとなかなかお手洗いにはいけないので、そういった隙間時間に一斉に行くようにしています(笑)。
Q 浅田真央さん、宇野昌磨選手、紀平梨花選手もフラワースケーターだった!
A フラワースケーターの中には、必ず次の時代にトップ選手になる子どもがいます。実際に浅田真央さん、安藤美姫さん、羽生結弦選手、宇野昌磨選手、紀平梨花選手など有名になった選手も小さな頃にフラワースケーターを経験しています。だから、顔や特徴を見て覚えておくと、将来の大会で活躍したときに「あ!あのときの子だ」とうれしい発見があるかもしれません。
あとは、花やプレゼントを拾うときのスタイルも見てほしいですね。しゃがむように両足を曲げて拾うのではなく、必ず片膝を氷上につけて拾うように指導しています。衣装がスカートスタイルなので、エレガントに、上品な所作になるようにしているんです。上手な子はスマートにさっと拾いますよ。
Q コロナ禍でフラワースケーターの仕事が減少…今後の活動は?
A コロナウイルスの感染対策として、さまざまな大会で「投げ込み禁止」が実施されることもあって、正直今はフラワースケーターの活躍の場がほとんどありません。(NHK杯フィギュアも参加しない。) ただ、緊張が高まった会場で繰り広げられるあの微笑ましい光景を惜しむ声はメディアからも寄せられます。この時期、代わりにマスコットを登場させる大会もあるようですが、やはりフラワースケーターの活躍は、スケートを習う子どもたちの夢でもあるので復活してほしいですね。
知れば知るほどますます応援したくなるフラワースケーターたち。こんなに一生懸命大会を盛り上げてくれていたんですね。今年のNHK杯フィギュアは残念ながらその姿を見ることはできませんが、いつかまた、ひたむきでほほえましいフラワースケーターがリンクに戻ってくる日を待ちたいと思います。