特集 「大輔はシャイな弟キャラ」アイスダンス公式戦に挑む髙橋選手を本田武史さんが語る!

11月27日(金)~29日(火)に開催されるNHK杯。中でも注目は、アイスダンスに転向して初めての公式戦に挑む髙橋大輔選手です。そこで、髙橋選手が中学生の頃からつきあいのある元オリンピアンの本田武史さんに話を聞きました。
髙橋選手の意外な素顔とは?そしてNHK杯では、カップルを組む村元哉中(かな)選手とどんな演技を披露してくれるのでしょうか?
シャイでおっちょこちょい? 髙橋選手の意外な素顔
――髙橋選手って普段はどんなタイプなんですか?
僕は、彼が中学生の頃から知っていますが、昔は目立つタイプではありませんでした。リンク上では自己主張の強い表現力が目立っていましたが、素顔はかなりシャイ。すごく謙虚ですし、どっちかというとおとなしい。合宿で一緒になったり、カナダに来たこともあって、カナダ観光に連れて行ってあげたりもしました。だから、僕らの世代から見ると、弟キャラという側面が強いかもしれません。ちょっとおっちょこちょいなところも意外な一面だと思います(笑)。
2019年全日本選手権。キスアンドクライでは演技中とは異なる笑顔を見せる髙橋選手
髙橋選手の表現力はアイスダンスで生きるはず!
――今回、髙橋選手はアイスダンスに転向してから初めての公式大会出場になります。どんな点に注目していますか?
2020 フィギュア アイスエクスプロージョン
アイスダンスは、表現力をどれだけ出せるかがカギとなる競技です。全身の動きや顔の表情で音を表現する。その完成度が採点を左右します。そういう点は(高橋)大輔の得意分野です。カップルを組む村元哉中選手も表現力の豊かな選手ですし、大輔にはアイスダンスでもそうした強みを発揮してほしいと思っています。
――村元・髙橋組の相性はどう見ていますか?
2020 フィギュア アイスエクスプロージョン 左がカップルを組む村元哉中選手
両選手ともに世界トップクラスで滑ってきた自信もありますし、それだけスキルも優れています。共通しているのは伸びやかなスケーティング。お互いに自己アピール力に優れています。ポイントは2人が短い時間でどこまで息を合わせられるかということ。2人の長所がうまく発揮されれば、見ごたえのある演技になるのではないでしょうか。
シングルとアイスダンスはまったく別の競技!
―― 一方で、シングルとアイスダンスとの違いに髙橋選手が戸惑うことはないのでしょうか?
大きな違いはパートナーがいるという点です。シングルの場合であれば、演技の途中で技の内容を変えたり、少しステップを外して呼吸を整えたりすることもできる。一方、アイスダンスの場合は、最初から最後まで、相手に合わせてスケーティングをしなくてはいけません。リズムダンスは決められたステップを踏まなきゃいけないというルールもあります。それをパートナーとうまく呼吸を合わせて滑らなくてはいけない。つまり、シングルとは違ってアドリブがまったくできないんですね。
アイスダンスでは加点対象もシングルとはまったく違います。たとえば片足を上げるフリーレッグでは、その高さが合っているかも採点のポイントになります。また、パートナーとの距離感が離れすぎていると、減点対象にもなります。
(スケート靴の)ブレードが氷面から離れている足「フリーレッグ」
さらに、アイスダンスは年々アクロバティックになってきていて、男性が女性を持ち上げるリフトという技では女性を倒立させたり、回転させたりすることもあります。
男性が女性を持ち上げる「リフト」。アイスダンスの見どころの一つ
そんなリフトをしながら速い回転で回らなくてはいけない。シングルのバランス感覚では考えられないし、使う筋力も異なります。シングルとアイスダンスは、似ているようでまったく別の競技なんです。
NHK杯への期待 そして気になる北京オリンピックは?
――そんなアイスダンスの公式戦に初めて挑む村元・髙橋組ですが、期待度を教えてください
2人とも実力のある選手ですが、こればかりはどう調整できるかにかかってくると思います。今2人はアメリカで練習していて連絡をとっていないので、どういう演技で、どんなプログラムになるのかさえわかりません。おそらく今は、新しい技術に触れて、吸収している真っ最中なのではないでしょうか。
ただ、まったくの未知数であるからこそ、僕自身、とても楽しみにしています。シングルで世界のトップで戦ってきた2人が、アイスダンスでどんな演技を見せるのか。ファンの皆さんも初めての演技を楽しめるのではないでしょうか。
初の公式戦となるNHK杯はおそらく強いプレッシャーもあるでしょうし、かなり緊張するでしょう。しかも、ライバルのなかには長年カップルを組んできた生粋のアイスダンサーもいます。そのなかで、短期間の練習で臨まなければいけないので、正直言って、どんな展開になるかまったく予想できません。ただ、2人の能力の高さがうまくマッチすれば期待はできるはずです。ファンの皆さんにも、大輔がどんなアイスダンサーになっているのかを注目してほしいですね。
――先の話になってしまいますが、北京オリンピックへの出場の可能性はどう見ていますか?
今の段階で、僕からどうこう言うことはできませんが、カップルとして熟練度を増していけば、ありえない話ではないと思います。その可能性を探る意味でも、NHK杯は重要な一戦になるはずです。
今年のNHK杯、 村元・髙橋組が初披露するアイスダンスはやはり必見です!その新たな門出をしっかりと目に焼きつけましょう!

本田武史
1981年3月23日生まれ。
史上最年少の14歳で全日本選手権初優勝を飾るとともに、長野オリンピックへも史上最年少の16歳で出場を果たす。2002年ソルトレークシティーオリンピックで4位入賞。2002年、2003年の世界選手権では2年連続となる銅メダルを獲得。日本人として初めて競技会で4回転ジャンプを成功させたスケーターでもあり、2003年の四大陸選手権では、フリースケーティングで2種類の4回転ジャンプを3回成功という偉業を成し遂げた。 今年のNHK杯フィギュアの中継で解説を担当する。