ストーリー野球

2000本安打 坂本勇人 ゴジラ松井から授けられた打撃の極意

2020-11-20 午後 0:30

11月8日に史上2番目の若さで通算2000本安打を達成した、巨人の坂本勇人選手。31歳10か月での偉業達成の背景に何があったのか。サンデースポーツ・豊原謙二郎キャスターによる坂本選手インタビューを未放送のトークを入れてほぼ全文公開!偉大な先輩たちから学んできたバッティングの極意、そして期待が高まる3000本安打への意気込みは…。

「本拠地で決める」プレッシャー

11月15日 ヤクルト戦の第1打席 通算2000本目のヒット

 

通算2000本安打まで116本で迎えた今シーズン、坂本選手は榎本喜八さんが持つ31歳7か月の最年少記録の更新が期待され、「そこを目指して頑張りたい」と意気込みを示していました。しかし、新型コロナウイルスの影響でシーズンの開幕がおよそ3か月遅れたため、この記録への挑戦はかなわず。シーズン序盤は打率が2割台前半の不調に陥りますが徐々に調子を取り戻し、キャプテンとして巨人のリーグ2連覇に貢献。

そして、今シーズン残り3試合となった本拠地東京ドームでの最終戦。たくさんのファンやチームメイトに囲まれての偉業達成となりました。

 

坂本選手の偉業に巨人ベンチもガッツポーズ

 

豊原 サンデースポーツの豊原です。よろしくお願いします。あらためて、2000本安打達成おめでとうございます。大記録を達成されて、今どうお感じですか。

 

坂本 本当にホッとしているという気持ちが一番ですね。素晴らしいセレモニーでファンやチームメイトに祝福していただけて、今日決められて本当によかったです。正直言うと、僕としては「今シーズンで決めたい」とか、「本拠地・東京ドームで決めたい」とか、当初は全く思っていなかったんです。ただ昨日の試合で、「本拠地で決めてくれ」というファンの期待感を感じて、プレッシャーに負けそうになりましたね。チームが勝つ・勝たないというプレッシャーは自分の中で「なんとかなる」んですけど、「この試合でヒットを1本出さなければいけない」という状況は選手人生でもなかなかないことなので、かなり緊張しました。

 

豊原 これだけヒットを打ってこられた坂本選手でも、そういう気持ちになるんですね。

 

坂本 いやぁ、昨日の試合で残り1本になってから今日まで、球場の雰囲気がいつもとちょっと違ったので。それは緊張しましたね。

 

ファンも待ちに待った大記録を祝福

 

豊原 2000本安打の記録を達成した選手の中には、例えば阿部慎之助さん(現・巨人二軍監督)や小笠原道大さん(現・日本ハムコーチ)のような、坂本選手が若手時代から共にプレーしていた方々の名前があります。身近ながらすごく大きな存在だったと思いますが、そういう方々と同じ記録を達成したことに達成感はありますか。

 

坂本 期待された中で今日打てたことに対しては達成感を感じているんですが、「2000本」という数字に対しての達成感は、僕はあまりないですかね。もちろん大事な数字ではあるんですけど、達成感とまではいかないかなと。自分はまだまだ阿部さんにも小笠原さんにも及ばないプレーヤーだと思っていますし、これからもそうした気持ちでプレーしていかないといけないと思っています。

負けたくない、もっと野球をうまくなりたい

入団会見での坂本選手(前列右)と原監督(2列目中央)

 

坂本選手の経歴は、まさに華々しいもの。ドラフト1位で巨人に入団し、当時2期目の監督を務めていた原監督のもと高卒2年目でシーズン全試合出場。3年目には打率3割をクリアして、阿部慎之助、小笠原道大、アレックス・ラミレスらと共に日本一に貢献しました。その後も巨人の不動のショートとしてコンスタントにヒットを打ち続け、球界を代表する選手に成長していきました。その中で坂本選手が常に持ち続けていたもの。それは「向上心」と「感謝」の気持ちでした。

 

 

豊原 右バッターでは史上最速、全バッターの中でも史上2位というスピードで2000本に到達した最大の要因は何か、ご自身はどう考えていますか。

 

坂本 まずはやっぱり原監督が、19歳の時から僕を本当に我慢して使ってくれたことだと思います。その中で常に「負けたくない」、「もっとうまくなりたい」という気持ちがすごく強かった。もちろん今も同じ気持ちです。その気持ちを忘れなければ、野球は必ずうまくなっていくと思っています。そして、ここまで大きなけがをすることなくプレーできていること。球団のトレーナーの方や、個人的に診て頂いているトレーナーの方に本当に感謝しています。

 

豊原 今も若手のころと同じ気持ちを保ち続けることができている。その背景にあるのは、どんなことでしょうか。

 

阿部・現二軍監督とは若手時代から長年共にプレー

 

坂本 僕の場合は巨人に入ってから、周りを見ればスーパースターのすごい選手ばかりという環境の中で、若い時からプレーさせていただいています。なので、「自分よりすごい選手がこの世界にはたくさんいる」、「上には上がいる」という気持ちで常にプレーしているんですよね。自分が一番すごいプレーヤーだという数字を出していれば違うのかもしれませんけどね。きっと引退まで同じ気持ちを持ち続けるんだと思います。

松井秀喜さんの言葉

豊原 とにかく野球をうまくなりたい気持ちでプレーしてきて、飛躍やステップアップのきっかけとなった出来事はありましたか。

 

坂本 僕の中では、4年前に松井秀喜さんが臨時コーチでキャンプに来られて話を聞いたことが大きいですね。

 

2012年に最多安打のタイトルを獲得した坂本選手ですが、その後3シーズンは打率が2割6分台から2割7分台にとどまります。そこで指導を仰いだのが松井秀喜さんでした。

 

松井さんに指導を受ける坂本(背番号6)

 

坂本

松井さんは、僕の感覚では想像しないような感覚でバッティングをされていたと聞きました。教えて頂いたのは「軸足」の大事さです。軸足に体重をかける意識を変えてみました。それは今でも僕のバッティングの中ですごく大事なポイントになっています。

 

豊原 その前の年は成績的にも不本意だったのかなと思うのですが、そうしたタイミングで新しい考えを身に着けられたのは大きかったんじゃないですか。

 

坂本 そのころはあまり良くない、というか「中途半端な」成績が続いてたんですよね。だいたい打率は2割7分とかで「たまに3割打てる」くらいの成績が続いていて、「もう一つ上のレベルに行きたい」という気持ちがありました。たまたまそのタイミングで松井さんの話を聞くことができて、これが自分を変える大きなチャンスなのかなと思いました。バッティングの根本を変えるのはすごく怖いことだったんですけど、いいタイミングだったのかなと思いますし変えてよかったと思います。

バッティングに理想像はない

松井さんの指導を受けた後の2016年シーズンは、打率3割4分4厘で首位打者を獲得。松井さんの指導から得た「変化を恐れない姿勢」でヒットを積み重ねてきました。それは2000本安打を達成した打席にも表れています。

 

 

豊原 今日の2000本目のヒットは、グリップの持ち方、足の着き方、前さばきなど、まさに変化を取り入れながら培ってきた技術が詰まった一打だったと思うのですが。

 

坂本 本当にそのとおりですね。例えばあの打席ではグリップの持ち方も、いつもと違って右手と左手の間隔を少しあけていました。昨日までのバッティングの感覚と、今日のピッチャーのボールを見て変えてみました。それも自分の「引き出し」のひとつですね。今日は相手もいいピッチャーでしたし、普通の感覚で打ちに行ったら打てないだろうなと考えていたので、思い切って1打席目から違う打ち方をやってみたら、いい結果になりました。バッティングを変化させる「勇気」を今日の試合で出せたことはよかったなと思います。

 

豊原 変化といえば、私は実況をしていて前々から聞いてみたいことがあったんです。坂本選手は、若手時代は「トップが高い」バッティングフォームで、グリップが高い位置からスイングしていましたが、今は当時より若干トップが下がっていますよね。そのあたりの狙いを教えて頂けますか。

 

坂本 もともと初めて1軍の試合に出た時は、あまりトップは高くなかったんですよ。ただ、当時西武にいた中島宏之さんやソフトバンクにいた多村仁さんというような、球界を代表する右バッターの先輩たちは、みんなトップが高かったんですよね。その理由もわからなかったんですけど、とりあえず僕もトップを高くしてみたらそのシーズン3割打てたんですよね。それで「あー、トップは高い方がいいんだな」くらいの感じでやっていたんです(笑)。でもいろいろ試した結果、今は動きを小さく、できるだけシンプルなスイングを求めるようになりました。人から見たらあまりそう見えないかもしれないですけど、自分の中では「シンプルに」打ちたいなという気持ちが一番です。

 

2001本目のヒットはホームラン

 

豊原 坂本選手が今考えるバッターとしての完成形、理想像はあるんですか。

 

坂本 完成形…、難しいですね。バッティングはたぶん自分の理想通りに完成することはないと思うんです。だから逆に理想像もないのかもしれないですね。理想を目指してそこに近づいていくというよりは、日々変化しながら自分のバッティングを突き詰めていく道のりがずっと続いていくんだと思います。

3000本へ、描く未来像

豊原 今日既に多くの方から、「次は3000本安打」と期待のメッセージが早くも来ていると思いますが、これからの未来像というのはどのように描いていますか。

 

坂本 正直自分の中では、3000本というのは未知の数字です。今までも「試合に出たらヒットを打ちたい」という気持ちだけでプレーしてきて、それはこれからもたぶん変わらない。この先何本ヒットを打てるかはわからないですけど、その気持ちを常に持って打席に立ちたいと思います。

 

豊原 さらなる進化、期待しています。ありがとうございました!

 

 

通算ヒット数を2003本として、レギュラーシーズンは終了。次は悲願の日本一へ、坂本選手は11月21日からの日本シリーズに臨みます。

 インタビューを終えて座席を立った坂本選手は、ふと何かを思い出してわざわざカメラの前に戻ってきました。満面の笑みで話し始めたのは、今はサンデースポーツの解説者として、カメラの向こうにいるかつての先輩へのメッセージでした。

 

坂本 そういえば試合前に上原さんからLINE来てました!「もし今日打ったら褒めたるわ」みたいな。じゃあ上原さんにここでメッセージ送ってもいいですか?

上原さん、ご無沙汰しています。「変な」LINEをちょこちょこくれますが、いつもそこからパワーをもらっています。今日無事に2000本打つことができたので、スタジオでいっぱい僕のこと褒めてくださいね!また連絡お待ちしています!

 

 

サタデースポーツ/サンデースポーツ

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豊原 謙二郎 キャスター

実況アナウンサーとして、野球、ラグビー、アメフト、柔道、アルペンスキー、モータースポーツなどを担当。サンデースポーツではキャスターとして、豊富な実況経験をフルに活かしてお届けする。

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