ストーリー野球

日本ハム 上原健太投手 左のエースへ

2020-10-12 午後 0:42

2015年に ドラフト1位で指名されて 日本ハムに入団した上原健太投手。1メートル90センチの長身から投げ下ろす 左の先発ピッチャーは、 日本選手ではまれな素材です。 それだけに期待されてきましたが、昨シーズンまでの4年間の通算成績は6勝8敗にとどまっています。 しかし、上原投手は今シーズン、大きな変化を遂げつつあります。その裏には「覚悟」と「努力」がありました。 (札幌局 雁田紘司 記者)

初登板 ”別人のような姿”

 

上原投手は今シーズンの開幕前に左肩を痛めていたため出遅れましたが、9月2日に札幌ドームで行われた楽天戦で、初めて先発のマウンドに立ちました。
先頭バッターへの初球は、151キロの速球。いきなり自己最速のボールを投げ込むと、2番と4番バッターへのボールは152キロをマークし、自己最速を更新しました。この試合で上原投手は、腕を力強く振って、コースに速球を次々と投げ込み、堂々とした投球を見せました。初登板だったため、5回でマウンドを降りましたが、ヒット2本で無失点、三振4つの好投。
何より、ファンなどを驚かせたのは、別人のようなマウンドでの振る舞いでした。昨シーズンの球速は、140キロ前後でしたが、この試合では5回に入っても、球速は150キロに達し、気迫を込めて投げこむ姿はこれまでに見せたことがない姿でした。相手をかわすボールは少なく、テンポよくコースをつき、時には高めの速球を使って相手を打ち取るという、エース格を思わせる堂々とした投球術も披露しました。

上原健太投手

 

2軍にいるときよりも、まっすぐにこだわって、思い切って投げることができたと思う。とりあえず、きょうのいいところを次につなげていきたいなと思います。

好投の裏に”覚悟”

 

実はこの試合で、日本ハムの栗山監督は、プロ5年目の上原投手に覚悟を求めて、マウンドに送り出していました。投げ合ったのは楽天の涌井秀章投手。
沢村賞1回、最多勝3回のベテランで、この時までの成績は8勝1敗と絶好調でした。今シーズン初登板となる上原投手にとっては荷が重い相手に見えましたが、栗山監督はあえて上原投手を起用しました。

 

栗山監督

 

(涌井投手が相手では)うちは点を取られたら負けなんだというぐらいのつもりで、追いこんだつもり。そのほうが、力が出るだろう。うちも必死だし、上原も必死になる環境を作ったほうがいいと思って。こんな大事なゲームでいくのだから,本人が覚悟して投げるはずだし、その覚悟がどういうものなのか見たい。

 

試合前に明かした言葉には、上原投手への強いメッセージが込められていました。
その栗山監督の意図を汲み取っていた上原投手。マウンドでは最大の力を発揮することに集中していました。

 

上原健太投手

 

本心でいったら、勝ち負けというよりは、自分も次がないと意味がないので、そういう部分でしっかりアピールできるようにできることをしっかりやりたいという気持ちになれた。

 

ドラフト1位で入団してプロ5年目。もうそろそろ結果を出さないといけない立場だという危機感が好投の背景にありました。

まぐれではなかった好投

 

上原投手は、9月2日の楽天戦のあとも好投を続けました。9月10日のロッテ戦は4回を投げて4安打2失点(自責点1)とまずまずの内容でしたが、9月17日のソフトバンク戦では8回と3分の1イニングで5安打2失点(自責点1)。9月24日の西武戦では、7回を5安打2失点(自責点1)と好投。
4試合で24回と3分の1イニングを投げて、防御率1.11と好成績をマークしました。
特筆すべきは、9月17日の首位ソフトバンクとの対戦で、この試合は持ち味の速球が走らないなかでも、投球に幅を見せて、スライダー、チェンジアップ、フォークボールを効果的に駆使し、8回までヒットはわずか3本と圧倒的なピッチングを見せました。

上原健太投手

 

これまではまっすぐが悪かったら、変化球でしかストライクを取れないとか、そういうことが多々あって、それを狙われて打たれるパターンが多かった。悪いなかでもしっかり投げていかないといけないと考えていた。自分のなかで、そこまで良くないという状態であそこまで投げられたというのは、ひとつ自分のなかで、前進したかなと思います。

急成長には "努力"

 

高い能力が開花したのは、偶然ではありません。上原投手は、新型コロナウイルスの影響で開幕が延期されていた間に、左肩を痛めていたこともあり、上半身、肩周りのストレッチに多くの時間を割いていました。その結果、長い腕を生かして腕を振り切る投球フォームにつながり、速球に自信をつけていったのです。
勝負できる速球が柱になったことで、フォークボールなどの変化球もより効果的に使えるようになりました。さらに、球威とスタミナを強化するため、体を大きくする増量にも取り組み続けた結果、安定感のあるフォームを手にいれて、試合中盤になっても勝負のできるピッチャーへと変貌を遂げました。
上原投手は「本当にまっすぐが良くなってきているので、これを生かしていかないと、もったいないなと思っている」と自らの変化に自信を示すようになっています。
投球術にも工夫を見せています。上原投手は昨シーズンまでは2段モーションとクイックモーションで投げていましたが、今シーズンは通常のモーションも取り入れています。狙いは、バッターのタイミングにズレを生じさせることで、「足をあげて待つバッターには、かなり有効」と手応えを得つつあります。

目指すは 先発完投型のエース

 

左投げの先発で、常時150キロを超えるボールを投げるピッチャーは大リーグでも少なく貴重な存在です。大きな可能性を秘めた上原投手ですが、目指しているのは、まずは先発完投型のピッチャーになることです。意識しているのは、チームメートで昨シーズン、最多勝のタイトルを獲得した有原航平投手や上沢直之投手。いずれも完投する力のあるピッチャーで、チームで目の当たりにしているからこそ、ライバル心を強く持っています。

上原健太投手

 

勝つピッチャーというのは、9回を投げきることができるピッチャーだと思う。上沢投手や有原投手は平気で9回を投げきって、完封もする。どうしてもそこに追いつきたいと思う。

 

潜在能力は高いと言われ続けてきた上原投手。「覚悟」に「努力」を結びつけて
日本ハムに欠かせない左投げの大型エースに開花しようとしています。

 

札幌局 雁田紘司 記者

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!