ストーリー野球

ヤクルト 小川泰弘投手 ノーヒットノーランから得たモノ

2020-09-28 午前 11:41

プロ野球12球団の担当記者がチームを引っ張る役割を担う選手の思いに迫るシリーズ。

 

9回目はヤクルトの小川泰弘投手です。

 

8月にはノーヒットノーランを達成。5年ぶりのふた桁勝利も見えてきた30歳は「分岐点」と位置づけた今シーズンに見事な復活を果たしました。(記録は9月27日現在)

分岐点に込めた思い

原動力は「悔しさ」でした。

ルーキーの年にいきなり16勝をあげて最多勝、最高勝率、新人王に輝き、華々しくデビューした小川投手。

しかし7年目の昨シーズンは12球団ワーストの12敗。防御率4点57も規定投球回に達した15人の中で最も悪い数字でした。30歳の節目を迎える今シーズンを小川投手は「分岐点」と位置づけていました。

 

小川投手

このままではいけない。ことしもだめだったらズルズルいってしまうんじゃないかという危機感もあった。やっぱり去年の悔しさを持って、借りを返すという気持ちを常に持っている。そういう中で自分自身を見つめ直して、トレーニングもフォームも私生活も考え方もグラブもスパイクもいろいろ変えた。

コロナ期間に自分をチェンジ

新型コロナウイルスの影響でシーズン開幕が延期され、思うように練習ができない期間。小川投手は自分の体を見つめ直す時間にあてました。

 

まずは外食から自炊にチェンジ。得意料理は「チキンストロガノフ」と言うほどにまで腕は上達したそうです。

量と栄養バランスを整えることで体重は1、2キロ落ちて、以前よりも「体がすっきりした感覚がある」といいます。

 

そしてトレーニングの内容もチェンジ。筋力アップを目的としたウエイトトレーニングから体の機能やバランスを重視し、より投げる動作に直結するメニューに切り替えました。

小川投手

自分の体をコントロールすることで、しっかりボールもコントロールできる。制球力が上がって大事なところで粘れるようになっていると感じている。

復活を印象づけた快挙達成

開幕後も右腕のテイクバックを変えるなど試行錯誤を続けました。

こうした取り組みが成果としてあらわれたのが8月15日のDeNA戦。伸びのあるストレートがおもしろいように低めのコースいっぱいに決まりました。

 

8/15 DeNA戦で無安打無得点試合を達成した小川投手

小川投手

試合前に決意したことじゃないが、チームが5連敗中という状況もあった。自分の中でも今後につなげる試合にしなきゃいけないという思いがあったので。一歩も引かずに攻めることは決めていた。

 

8回、味方のエラーでノーアウト一塁二塁のピンチを迎えたときも、表情を一切変えず、ミスをした廣岡選手の胸をグラブでポンとたたきました。そして続く3人のバッターを完璧に打ち取ってみせました。

小川投手

気持ち的には、『あれ?ん?何やってるんだよ』っていうのはあった(笑)それでも、本当に集中力が良かったので。そういうプレーが出ても動揺せずに『切り替えていこう』という気持ちで肩をたたくことができた。

 

DeNAの強力打線を相手に135球を投げてヒットを1本も許さず、史上82人目のノーヒットノーランを達成。去年の悔しさから積み重ねてきたことが実を結んだ瞬間でした。

 

小川投手

強気でストレートを投げ込めた。なんとか気持ちで前に出ることは忘れずにマウンドに立てた。今後の自分の投球にいい影響があると思う。これからもまだまだ成長してこういう投球をたくさんしていきたい。

取り戻したストレートの自信

快挙から1か月後。「自分の中でノーヒットノーランから得たものは何か?」という問いに小川投手は「うーん、難しいな・・・」としばらく考えた上でこう答えました。

 

小川投手

そうだな。自信。自信になったことは間違いない。強気で攻めてそういう結果がついてきてくれたので。チェンジアップだったり変化球でかわすピッチングよりも、やはりストレートで押す自分のピッチングスタイルが大事だという思いがあったので。それがノーヒットノーランという形になっていい自信を得られたというのはあると思う。

 

スライダー、カットボール、チェンジアップ、フォークボールなど変化球も多彩な小川投手が取り戻したのはストレートで押す原点といえるピッチングスタイル。それはデータにも現れていました。

 

今シーズン、ノーヒットノーランの前までストレートの割合は34%。2ストライクからの決め球に限ると43点6%。それがノーヒットノーランのあとはストレートの割合は49点4%。ツーストライクからの決め球に限ると62点3%。明らかにストレート勝負の場面が目立つようになっています。それに伴ってストレートの被打率もノーヒットノーラン前は3割6厘、ノーヒットノーラン後は1割8分6厘と上向いています。

 

小川投手

チェンジアップで抑えてもそれは長続きはしない。ストレートを軸に攻めていくスタイルが必要なんだなと思えたし、自分らしくっていうところを求めていかないと今後はないかなって思って方向転換した部分はあった。

 

8月23日は7回2失点でチームの連敗を2でストップ。8月30日も7回2失点で5連敗をストップ。9月6日は8回1失点で3連敗をストップ。安定した投球でチームの連敗をことごとく止める活躍を続けています。

いつまでも変化を求めて

9月20日にはリーグ2位の9勝目をあげ、5年ぶりとなるふた桁勝利も目前です。シーズン中に国内のフリーエージェントの権利を取得した小川投手はオフにはその動向も注目されます。

 

栄光から始まったプロ野球人生。逆境を乗り越えた今こそ、真価を示すときです。

小川投手

いろいろ成長しようと思って変化を求めてそれがうまくいったりうまくいかなかったりというのはあったが、その中でもことしのまっすぐはいいかなと思う。ここ最近ストレートで押すという強気のピッチングができているので、それをいつでもできるように継続していきたいし、チームに流れを引き込めるように、勝利をもってこられるように、頑張っていきたい。

この記事を書いた人

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杉井 浩太 記者

平成20年NHK入局。富山県出身。
新潟、横浜局を経てスポーツニュース部。ヤクルト、日本代表、NPBを取材中。

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