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自転車ロードレース 超過酷な山岳コースに世界のスター選手が挑む

2019-12-18 午前 09:00

郊外のロードでサイクリングを楽しむ愛好者が増えています。そうした愛好家にとって東京オリンピックの自転車のロードレースは、世界最高峰の実力を間近で目撃できる千載一遇のチャンス。世界トップレベルの選手は、史上最も過酷といわれる東京オリンピックの難コースをどう攻略するのか、日本男子ナショナルチームを率いる浅田顕さんに自転車ロードレースの見どころを聞きました。

史上最も過酷といわれる難コース

 

東京オリンピックの自転車ロードコースは、東京都調布市の「武蔵野の森公園」をスタートして、幾つもの山を登り、下りながら静岡県の富士スピードウェイを目指すルートです。男子の総距離は約244㎞。スタートからゴールまでに登る高さの総合計、獲得高低差は4865mと富士山の高さを優に超えます。

 

日本代表チーム監督 浅田顕さん

浅田顕さん

オリンピックのコースは山岳が得意な選手もダウンヒル(下り坂)が好きな選手も、誰もが実力を発揮できるような偏りのない設計になるのが通例です。リオデジャネイロオリンピックのコースは極端な山岳ステージだったので物議を醸しましたが、東京オリンピックのコースはそれを上回る超過酷な山岳コースですね。戦う前からそんな弱気でどうするんだとお叱りを受けるかもしれませんが、残念ながら日本には本格的なクライマータイプの選手はいません。日本選手にとっては不利なコースであるのは事実ですね。

勝負のポイントは道志みち、富士山麓、三国峠

 

世界のトップスターが難コースで繰り広げるレース展開、6時間を超える長丁場のレースの中で見どころとなるのは、どのあたりなのでしょうか。浅田さんが一つ目にあげたのは、神奈川県相模原市と山梨県富士吉田市を結ぶ国道413号、通称「道志みち」です。多摩ニュータウンを東西に貫く南多摩尾根幹線道路を過ぎた選手は、山間の「道志みち」を走って、一路、山中湖を目指します。小さなアップダウンを繰り返しながら、緩やかに登って行く約60㎞の道のりです。

 

浅田顕さん

2019年7月に行われたテストイベントでは外国勢を中心にペースが上がったので、日本人選手にとってはつらいレース展開になった場所です。後半の山岳ポイントに向けて体力を温存するため、ここで体力の消耗をどれだけ減らす走りができるかが重要です。

 

二つ目は、「富士山麓」の須山エリアです。険しい山道が15km 近く続き、傾斜が10%を超えるようなところもあります。コースの最高標高地点となる標高1451mの「富士山麓」を通過して、富士スピードウェイの周回コースを2周します。

 

浅田顕さん

険しい三国峠の前に上る第一関門です。おそらく集団がバラけ、脱落する選手もどんどん出てくるでしょう。一息つける場所がなく、先行する選手がいれば、離されないようひたすら追わなければならないので、激しく体力を消耗します。

 

そして、スタートから200kmを走った後に疲労困ぱいの状態で迎える山登り、「三国峠」です。平均勾配は約10%。20%超の急勾配ポイントもあります。徒歩の登山でもきつい傾斜を自転車で登らなければならないという最大の難所です。この難所を登り切れば富士スピードウェイまで残り約30㎞、下りの籠坂峠の先にゴールが見えてきます。

 

浅田顕さん

三国峠までにかなり選手の数が絞られているはずですが、残った体力の違いで差が出ます。出場選手の多い強豪国は、ペースをコントロールしたり、選手同士で隊列を組んで向かい風による体力の消耗を避けながら、レースを展開するでしょう。その作戦が成功し、有力選手の体力が残っていれば、ゴール前のスプリント勝負に持ち込むために、できるだけ前方の位置を取ろうとします。そこから先は戦略もありません。力の勝負で山岳に強い選手が真価を発揮するはずです。どんな選手が、どの位置にいるかで、勝負の行方が見えてくるでしょう。

順位がガラリ、ガラリと変わるレース展開

 

自転車のロードレースを見る上で、見逃せないが「ドラフティング」という走りのテクニックです。集団の先頭に立つと大きな空気抵抗を受けて体力を消耗するため、チーム単位で時々先頭を入れ替わり、空気抵抗による体力の消耗を分散しながら走るのです。
東京オリンピックで5枠の出場枠を獲得しているベルギー、イタリア、コロンビア、スペイン、フランス、オランダといった強豪国は、チームワークを発揮して効果的なドラフティングを行うとみられます。しかし日本の出場枠は2、不利な状況でのレースを余儀なくされるとみられています。

 

日本代表チーム監督 浅田顕さん

浅田顕さん

日本のように少人数の出場枠しか獲得できていない国の選手は、組織的に動いてレースをコントロールしようとする強豪国に隠れながら、うまく力を貯める走りをする必要があります。勝負どころまで運んでもらって、最後にスパートをかける走りができればいいのですが、簡単なことではありません。自転車のロードレースは、勝負の駆け引きに慣れている選手でなければ、勝てませんからね。

 

浅田さんに東京オリンピックの難コースを制する可能性のある注目選手は?と尋ねると、3人の名前が返ってきました。

 

コロンビアのエガン・ベルナル選手

 

1人目は、2019年のツール・ド・フランスを22歳の若さで制したコロンビアのエガン・ベルナル選手。ボゴタという標高の高い都市で生まれ育ったこともあり、山岳を得意とするクライマーでしたが、いまはオールラウンダーの選手に成長し、オリンピックのようなワンデーレースでも勝負強さを発揮しています。

 

スペインのアレハンドロ・バルベルデ選手

 

2人目は、2018年の世界選手権で優勝し、復活を印象付けたスペインのアレハンドロ・バルベルデ選手。コンディション調整のうまさに定評があり、調子の波が少ない選手と言われています。どんなレースでも上位に顔を出し、暑さが予想される東京オリンピックでも安定した走りに期待が集まります。

 

フランスのジュリアン・アラフィリップ選手

 

そして、2018年のツール・ド・フランスで山岳王に輝いたフランスのエース、ジュリアン・アラフィリップ選手。優勝候補として臨んだ2018年の世界選手権では作戦ミスもあり、得意とするスプリント勝負に持ち込めませんでしたが、もしゴール前のスプリント勝負になれば、右に出るものはいません。

浅田顕さん

長丁場のロードレースは陸上のマラソンと似ていますが、違うのは前半に抜け出した選手が必ずしも最後まで残るとは限らない点です。風の影響もあり、先行が必ずしも優位というわけではありません。有力選手が仕掛けると、選手のポジションがガラリと入れ替わります。中間地点で150番を走っていた選手が優勝するようなこともよく起こります。だから、活躍しそうな選手に注目しながら、その選手がどう動いてくるのか。駆け引きに注目しながら見ると、楽しめると思います。

 

史上最も過酷なコースに世界のトップスターが挑む東京オリンピック。果たして何人がゴールにたどり着けるでしょうか。体力と知力とプライドをかけた熱戦から目が離せません。

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