ストーリーバスケットボール

高校総体は中止でも...今こそ部活で"人間力"を

2020-05-01 午後 03:36

新型コロナウイルスの影響で全国で休校が相次ぐ中、全国高校総体の中止も決まりました。部活に打ち込んできた高校生にとっても夢を奪われかねない事態になっています。


こうした中、大会の中止や延期を見越して、いち早く新たな指導に踏み出した2つの部活を取材しました。

ラガーマンが料理に打ち込む!?東海大大阪仰星高校ラグビー部

 

全国高校ラグビー大会で優勝5回を誇る強豪、東海大大阪仰星高校ラグビー部。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月から部活は活動を休止しています。チームを率いて8年目の湯浅大智監督(38)は、ラグビーができない中でも生徒に成長してほしいと、ある作戦を立てました。


その名も「感謝の気持ちで人間力もラグビーもレベルアップ大作戦!」です。

 

 

テーマの一つが生徒の「自立」。自宅でできるトレーニングメニューを部員自身に考えさせ、そのトレーニング効果を毎日日記につけるよう指示しました。また、プロの試合映像を見てプレーの意図や戦略のねらいを考え、自分たちの試合にどう応用できるか、考えさせました。中でも最も力を入れたのが、料理でした。

 

高校3年生の近藤翔耶選手 テーマ”魚”に沿って料理中

 

週に1度、監督が与えたテーマに沿って、生徒は家族全員分の夕食を作ります。
1回目のテーマは「鶏」2回目は「豚」3回目は「春」4回目「魚」。栄養バランスを考え、メニュー作りから生徒みずから行います。


回を重ねるごとに腕が上がり、取材した高校3年生の近藤翔耶選手は、一汁三菜の和食の定食を作りました。家族からは「どんどん料理のバリエーションが増えて、毎回おいしく食べている」という声が上がっていました。

一見、ラグビーとは全く関係なさそうな料理作りを、監督はなぜ生徒に課したのでしょうか。

 

東海大大阪仰星ラグビー部 湯浅大智監督

料理は、食材を最終的にどう調理して、最後どう盛りつけするのか考えます。ラグビーなどのスポーツも、今自分が持っているスキルをどうかけあわせて、どの戦術を出すか、そして最終的な結果をどう導いていくか、考えます。順序だてて考える思考回路の訓練になり、自分がイメージしたものを実際に表現する力がつきます。

 

夕食完成!

 


毎週家族のために料理を作ることで、生徒たちの心に変化があらわれました。


多くの生徒が、グラウンドでの練習に打ち込んでいた時には感じなかった、周囲への感謝をより強く感じるようになったというのです。

生徒

この企画を通して食事を作ることの大変さを改めて知ることができたので、しっかりと感謝の気持ちを持っていたいです。

生徒

休校期間、家にずっといて私は家族に感謝が足りていないことに気がつきました。学校に行き、部活ができること。帰るとごはんが机に並んでいること。家族と楽しく話せること。
これからは家でできることをしっかりとやりたいと思います。

コロナの時代に何ができる?生徒に問い続ける 近大付属高校バスケットボール部

 

二つ目の部活は大阪、近大付属高校バスケットボール部です。就任18年目の大森健史監督(45)はチームを6回、全国高校総体に導いてきました。大森監督がチームに植えつけてきたある言葉があります。

 

2018年高校総体 ウォーミングアップで着ていたシャツにはこんな文字が…

 

「バスケットボールは大好きだ」
「でもバスケットボールは人生の一部にすぎない」

その言葉どおり、日曜日は完全休養のうえ、都合に応じて各自が休みを自由にとれる「年休」という制度を設け、さらに海外留学も積極的に進めるなど、部活動の枠を越えた意識づけを行ってきました。

活動休止中に行っているのが、オンライン上でのミーティングです。独特なのがそのテーマ。「チームメイトが新型コロナウイルスになったらどう声をかけるか」「新型コロナウイルスによって変化した価値観は何か」といった、バスケットボールとは関係がなさそうなテーマを部員全員に問いかけ、話しあわせるのです。

 

取材したこの日のテーマは、

 

「自分の個性とは何か」
「自分の個性を、社会にどう生かしていくべきか」

 

でした。

生徒が司会を務め、ミーティングが進行

 

難しい問いかけに対しても、自分の経験などをもとに積極的に意見を発表していく生徒たち。「わからない」と口にする生徒は一人もいません。

生徒

個性は一人でずっと生活しててもわからないことがたくさんあると思うので、いろんな人とかかわって、いろんな経験をすることで見えてくると思います。

生徒

個性とは人間一人一人が持つ役割のようなもので、自分の個性が社会に役立つことはないかなと考えたら、「情報発信」がありました。

 

大森監督はなぜいま、こうした難しいテーマについて生徒に考えさせているのでしょうか。

 

近大付属バスケットボール部 大森健史監督

生徒たちに今まで見たことのないような、考えたこともないようなことを考えさせることで、いろんな気づきがあって、それが逆にバスケットにも応用されてバスケットもうまくなるし、人生も豊かになります。

 

こうしたテーマを話し合う中で、生徒たちはみずからの成長を実感できているといいます。

生徒

「死ぬってどういうことだろう」とか「コロナになって今自分たちにできることって何だろう」とか今まで考えもしなかったことを考えるようになって、成長できたと思います。

生徒

たぶんコロナでインターハイ(全国高校総体)とかウィンター(全国高校選抜優勝大会)もなくなる中で、将来の夢について考えられる期間が増えて、将来は国連(国際連合)に行ってもいいなとか、そういう考えを持ちました。

 

運動ができない間でも、生徒たちはみずからの置かれた状況を理解し、前進しようとしていました。高校生にとって大きな目標の一つ、全国高校総体も中止が決まり、夢を奪われかねない苦しい状況が続いていますが、前を向ける環境をみんなで作っていけたらいいと思います。

この記事を書いた人

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田島 薫 ディレクター

平成31年にNHK入局。スポーツ情報番組部ディレクター。
小学・中学・高校とテニス部に所属するも、全国高校総体はほど遠い夢舞台だった。

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